第32話 集落殲滅
「いい加減目を覚ましなさい!」
「はい。」
パッチリと目を覚ました。
「いくら魔力切れで気を失ったと言ったってどれだけ熟睡しているのよ。」
「みんな朝食は済ませいるわ。あんたも何か食べて。すぐにここを撤収するわよ。」
僕は、アイテムボックスの名に残っていた食べ物をいくつか取り出して食べた。
ロジャーたちがとっても欲しそうだったから
「食べていいよ。」
と言うとテーブルの上に出していた食べ物はあっと言う間になくなった。
ミラ姉もちゃっかり食べていた。
食事を終えた僕は、結界用の魔石を外しコテージの外に出ると収納した。残った大きな穴は、アンディに埋めてもらった。
直ぐに草が生い茂るように昨日作った初級回復ポーションをほんの少し振りまいておく。効果があるかは分からないけど何もしないよりましだろう。
まあ、唯の気休めだ。
それから僕たちは大テント前に集まっている冒険者と合流した。ミラ姉が僕の火魔術強化魔術についてギルドマスターに話をして作戦に組み込んでもらっていた。
まず、ゴブリンの集落の風上側に陣を取る。陣取りができたら僕が火魔法の強化魔術を発動して手前、風上側のゴブリンの小屋から火を放っていく。逃げてきたゴブリンを冒険者で討伐と言って流れだ。
作戦概略が説明され直ぐに出発になった。
僕は歩きながらオキシゲン・カッターを100万個・リキロゲンボールを1万個ほど錬成しておいた。魔力は十分余裕があった。
予定通り正午前には、ゴブリンの集落に着いた。都合が良いことに入り口側が風上になっていた。僕たちは気配を殺して集落の入り口側に陣を取った。
風上に立つと臭いで気付かれてしまうのだが、ギルマスの魔道具で結界が張られ、気付かれていないようだ。
「レイ君、始めてくれ。」
ギルドマスターが作戦開始を支持した。
手前から奥へなるべく奥に厚く手前は若干薄くなるようにオキシゲンカッターを撃ち込んでいった。
攻撃強度が強くないことと大量に撃ちこまれている為か、ゴブリンたちに動きがない。弾幕が薄くなって攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。
10万発く来うち終わった頃にギルマスに伝えた。
「強化魔法の効果はあるはずです。手前からファイヤーボールで焼き尽くして下さい。」
火魔法使いの冒険者が一番手前のゴブリンの小屋に向かってファイヤーボールを撃ち込んだ。酸素濃度が上がっている村に入った途端ファイヤボールの色は白い炎になりゴブリン小屋に着火すると目を焼きそうなくらい白く眩い炎を放ちながら延焼していった。
「炎を見ないで!目をつぶってください。」
僕は大きな声で叫んだが少し遅かったようだ。
「目が~。」
目を押さえて転げまわる冒険者たち。
「みんな大丈夫?」
「炎の方を見ないであんたの方を見てたから大丈夫だったみたい。」
僕は初級回復ポーションを入れた水袋を取り出して手渡しながらお願いした。
「みんなの手当てをお願い。」
風上側の僕たちの陣地の方にもすごい熱気が襲ってきていた。
「リキロゲンボール、リキロゲンボール…」
僕は、陣地から30m程の場所にリキロゲンボールを撃ち込んで熱気と延焼が陣地側に向かってくるのを防いだ。
20分ほどで白い炎は収まり、ゴブリンの村だった場所は白い平原になっていた。全て白い灰だった。
「ギルドマスター、この白い灰、貰っていいですか?」
「一体何に使うつもりのだ?いや、持って行ってもらうのは一向にかまわないが…。」
「魔力をたっぷり含んだ良い肥料になると思いませんか?」
「そうか?肥料になるのか…。良いぞ。持って行けるだけ拾っていけ」
僕は、アイテムボックスの口を薄く広げる積もっている灰を全て収納した。
真っ白だった集落跡は灰色のすべすべした岩肌になった。地面だったところが一度溶けて固まったのだろう。
ギルドマスターも冒険者も白一色だった集落跡が急にすべすべした岩肌になったものだから驚いて目を見開いたままである。
収納した灰を調べていて驚いた。くず魔石が山のように含まれている。
「ギルドマスター、大変です。さっきの灰の中にくず魔石が山のように含まれていました。」
黙っていてもばれたりはしないのだろうがくず魔石の数は討伐したゴブリンの数の推測に役立つ。討伐数は、ランク昇格のポイントにつながるのだから報告しておいた方が良い。
それにくず魔石と言ってもかなり大きいくず魔石とは言えない魔石も含まれている。今、回収した物を全部売り払えば金貨30枚は下らないと思う。
今回参加した冒険者全員に分配したとしても一人頭金貨1枚は見逃せない金額である。
「そうか…。黙っていても別にかまわなかったんだが…。で、何個くらいあったんだ?」
「1万個ほどです。正確ではないですがおよそそのくらいです。」
「一万個?たった20分ほどで1万体以上のゴブリンを討伐したということなのか?」
僕たちがそんな話をしているとゴブリンの集落跡を見張っていた冒険者が大きな声を出した。
「集落跡の奥に洞窟があります。中にゴブリンがまだ生きている模様です。」
「おいおい、1万体以上を討伐したのにまだ残っているって…、もはやスタンピード事案じゃないか。」
「索敵チーム、洞窟の中を探ってきてくれ。」
「ギルマス、無茶言わないでください。洞窟に近づくだけでこんがり焼かれちまいやすぜ。」
「そうか。そうだよな。さっきまで地面が溶けるほどの熱にさらされていたのだから、まだ相当熱いわな…。レイ君、何か良い手はないか?」
ギルドマスターからのキラーパスだ…。いわゆる丸投げである。
「洞窟の入り口に繋がっているのはこの集落跡地だけ、両側は切り立って崖になっている。洞窟への出入り口はあそこに見える物だけでしょうか?」
「それは、どうだか分らないな…。自然洞窟なら出入り口になる裂け目がいくつもあるのは普通だからな。だが、そうなると警備がしにくくなる。ゴブリンにしてもそれは同じだろうから警備しにくい場所は潰している可能性もあるな…。」
「と言うことは、この駄々広い集落跡地になるべく見つからないように洞窟につながる道を作らないといけないということですか?無理でしょうね。どうせなら派手に攻撃して洞窟の奥にゴブリンを撤退させた後、攻略するのはどうでしょうか?」
「派手に攻撃して後、攻略か…。そうだな。それで良い。」
「僕がリキロゲンボールで地面の温度を下げます。温度が下がった場所は酸欠状態になっていますからすぐに入ってはいけません。意識を失って命も失います。温度が下がった場所があることを敵が知れば偵察に来ると思います。ですからしばらくは酸欠状態を維持しておきます。罠です。自分たちをおびき寄せる罠だとゴブリンが考えてくれたら儲けものです。罠は、今晩用に作ります。本当の洞窟攻略は明日の朝からです。」
「そのリキロゲンボールと言うのと酸欠と言うのは良く分からないが、私たちがそこを通るときの対処は大丈夫なんだろうな。」
「大丈夫です。オキシゲンカッターを何発かぶち込めば酸欠状態は解消します。」
「つまり、今晩温度を下げた罠の道を仕掛けゴブリンに温度が下がった場所は罠だと思わせる。その後私たちが通る道を作って洞窟へ侵攻するという訳だな。」
「そうです。私たちが通ることになる道も罠として今のうちに作っておきましょう。夜になる前に別ルートの罠道を作るということでどうでしょうか?」
「洞窟の入り口からこちら側へ続く道を今のうちに作っておくのだな。罠と思わせて実は、本ルート、迂回ルートが本当の罠か…。本当に嫌らしいことを考えるな。」
「本ルートをここまで繋ぐのは、明日ですよ。安全性は担保しておかないといけませんから。」
それから僕たちは、侵攻ルートになる道づくりを始めた。洞窟入り口からこちら側に向かって0.5m間隔でリキロゲンボールを撃ち込んでいく。幅が2m程になるように横に4発0.5m進めて4発。
急激に冷やされた地面には、細かいヒビが入り、冷やされる前よりも白っぽくなった。
そんな白い道を集落の半ばまで繋ぎそこから先は、洞窟側から見たら道が続いているかもしれないと思われるくらいポツンぽつんと白い場所を作っておいた。
迂回ルートの罠づくりについてギルドマスターと打ち合わせをした後、それぞれの拠点づくりを始めた。
僕たちは穴掘りをした後コテージの設置である。設置作業は直ぐに終わり、中に入って結界を張る。安心できる拠点の完成である。
「ねえ、みんないくつか相談があるんだけどさ、聞いてくれる?」
「どうしたの改まって。」
「「なんだ?」」
ロジャーとアンディは、同時に同じことを言ってくる。息の合った二人だ。
「一つ目は拾ったくず魔石について、1万個以上のくず魔石を拾ったんだけど討伐証明にもなるだろうから一旦全部ギルドに預けていいか?」
「「「勿論!」」」
「金額的には軽く金貨30枚にはなると思う。それを今回の参加者全員で均等割りにしてもらおうと思ってるんだけど大丈夫だと思う?」
「ギルマス采配ということにしておけば大丈夫じゃない?みんな喜ぶと思うわよ。」
「二つ目、こっちの方がどうしたら良いのか分からないのだけど、明日の朝からの洞窟攻略なんだけど、僕たちもついて行っていいのかな?」
「私も迷っていたわ。私たちじゃ、まだ実力不足の気がする。後方支援と言っても私たちの護衛に何人もの冒険者が付いていたら何のための後方支援かわからなくなるし、多分ついてもらえない。危険なのよね。洞窟での後方支援って…。挟み撃ちになったら後方も最前線になるからね。」
「洞窟攻略について行くなら、俺たちもフル装備で行くから大丈夫じゃねぇ?」
「進化種だからといってもゴブリンなんだからさ。」
ロジャーとアンディは、参加に積極的なようだ。
「じゃあ、ギルドマスターの判断に従うというのでどう?ギルマスが着いて来いと言えば行く。外で待機しろと言えば待機ということで…。」
「了解」
僕たちはミラ姉の意見に同意した。
それから食事の準備をしたり体を拭いたりして過ごしていたが外が薄暗くなってきたころギルマスの声がした。
「アンデフィーテッド・ビレッジャー の拠点はこの辺か?私の声が聞こえたら出てきてくれ。」
僕は、ミラ姉と一緒に出て行った。ロジャーとアンディは中で待機だ。
くれぐれも何があっても二人一緒に出てこないように言い含めておいた。
「はい。ここです。」
突然現れた僕たちにギルマスは少し驚いていたが、その声に答えるように要件を話し出した。
「今から、昼間言っていた罠づくりを行って欲しい。明るさが全くなくなってしまっては作業もしにくいだろうからな。頼めるかな。」
「はい。ミラ姉は、コテージに戻って食事の準備をお願い。」
僕は、ギルマスと一緒に集落跡地の入り口に来ていた。ここから1km以上離れた場所にある洞窟の入り口からこちら側に向かってリキロゲンボールで罠の道をつくらないといけない。
僕は洞窟の入り口近くに一発二発とリキロゲンボールを撃ち込んでいく。撃ち込まれた液体窒素は地面の熱を奪いあっと言う間に気化してしまう。
0.5m間隔でリキロゲンボールを撃ち込み酸欠の道を洞窟入り口から右に折れ、崖に沿って300m程作って止めた。
明日の朝、何匹ぐらいのゴブリンが罠にかかっているか楽しみだ。
罠を仕掛け終わるとコテージに戻り早めの夕食を取って眠ることにした。今晩は夜中に起こされることないよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます