第31話 殲滅戦準備

 撃退は終了した。僕たちは、さっきコテージを立てていた穴のところまで戻っていた。


 「コテージ出すからちょっと待ってて。」


 僕は、アイムボックスからコテージを取り出し、備え付けた。


 中に入って魔石に魔力を通すと結界が張られる。寝る前のような安心できる空間になった。


 「討伐に出発するまで、まだ時間があるから、少し休憩していいんだけど、これからのこと確認してから休むことにしましょう。さっき、ギルドマスターと打ち合わせしたことの確認ね。」


 ミラ姉が、僕たち全員に伝えた。


 「「「は~い。」」」


 素直に返事する僕らにミラ姉は少し歪んだ笑顔を見せる。


 「討伐戦への出発は、夜が明けて2時間ほどしてから、食事を済ませて大テント前に集合。討伐戦が始まるのは正午過ぎ、ゴブリンの集落についてこちらの配置かすんでからになるということよ。私たちは後衛支援。簡単に言えば回復薬を配ってこちら側の被害を最小にとどめることを依頼されたわ。」


 「ミラ姉、ゴブリンの集落はすべて焼き払うの?」


 「多分そうなると思うけど、どうして?」


 「僕、火魔法の強化魔法を覚えたみたいなんだよね。でね、その魔法を使うには少し準備が必要なんだ。使っていいなら、寝る前に準備しようかなと思って…。」


 「また…、常識はずれなことするんじゃないでしょうね。」


 「大丈夫?」


 「なんで疑問形なのよ。」


 「いや…、何せ使ったことないからねえ。火の魔術が物を燃やすときの働きを助ける気体-酸素と言うのを振りまくんだけどどのくらい効果があるかは今回試してみて確認することになるよ。」


 「火の勢いが強すぎたら私たちが火に巻かれてしまうのよ。」


 「そうだね。じゃあ、僕たちとゴブリンの集落の間に細い冷気の道を作ろう。これも準備が必要だけど間にあうと思う。」

 何しろ初級ポーションはさっき山のように作っている。水袋を回収して、中にポーションを詰め込めば準備は終了する。


 だから、まずは、液体窒素の精錬から

 (アルケミー・リキッド・ニトロゲン)


 アイテムボックスの中に取り込んでいた空気を全部精錬した。アイテムボックスの中に残された気体は、向こうの世界では、酸素と少量のアルゴン、更に少量の二酸化炭素そしてごく少量の希ガスと言うものらしい。


 こっちの空気の似たようなものみたい。かなりたくさんの空気を取り組んでいたんで10㎥ほどの液体窒素が出来ていた。


 次に、酸素を作る。アイテムボックスの中に残っている気体から酸素を精錬する。


 ゴブリンの集落を焼き尽くすために必要な酸素の量がどのくらいなのかは分からないからできるだけたくさん作っておかないといけない。


 まず、水を精錬する。池や川のかなからくみ上げてきた水だから塵なんかも含まれてる。


(アルケミー・ウォーター)


(ウォーター・ディーコムポジション。)


 ググッと魔力が持って行かれるのが分かった。100万㎥-1㎢の広さを1mの高さで埋め尽くすことができる量の酸素ができた。


 (もうちょっといるかな?)


 心配になった僕は、心許なくなった魔力にかまうことなくもう200万㎥のウォーター・ディーコムポジションを行い、意識が途切れた。


 「アラアラ、今頃目が覚めたの。お昼寝にしては熟睡していたけど。何か食べる?」


 「父さんは、まだ戻っていないの?」


 「溶剤系の試薬が揃ってなくてね。戻るのは明日になりそうだって。電話で泣きそうなくらい残念がっていたわ。」


 「あっ、御飯だったね。昨日のカレーがアイテムボックスの中にあるから、それでいいかな。ご飯を炊けばすぐに食べられるから。なんとなくたけど、またすぐに眠りに引きずり込まれる気がするんだ。」 


 「わかったわ。じゃあすぐに御飯仕掛けるわね。吸水が足りなくて少し硬くなるかもしれないけど我慢してね。」


 「吸水って米に水を吸収させることだよね。精錬でやってみるよ。できるかも」


 母さんが研いだ米を受け取ってアイテムボックスに入れる。


 「アルケミー・給水」


 イメージしたように水が米に浸透していくのがわかる。


 「母さん、うまくいったみたいだよ。」


 飯盒の蓋を開けて給水具合を確認するとさっそくカセットコンロにのっけて火を入れた。


 「蒸らしの時間を入れても30分もかからないと思うから待っててね。頑張って起きておくのよ。」


 「うん…。頑張るよ。でも、向こうの世界の様子が分からないと色々と不便だね。何かいい方法ないかな…。」


 「向こうで作ったり使ったりした魔法って共有できるのよね。じゃあ、あんたがコピーした本の内容は?」


 「向こうの僕が検索を使えば、利用できるんじゃないかな…。知識として身に着けることも…。」


 「じゃあさあ、共有のスケジューラーとTODOリストを作ってみたら?向こうのあんたがゆっくり休む日と忙しい日が分かるだけでもずいぶんこっちの生活の計画を立てやすくなると思うわ。」


 「それ以上に手っ取り早いのは、向こうに意識が言っているときに眠らないといけないっていう現状が変わることなんでしょうけど…。昔は、そんなに変な時間に寝たり起きたりはしていなかったと思うけどねぇ…。」


 (スケジューラーとTODOリストか…。父さんにそんな機能が付いたメモ帳買ってきてもらおう。)


 僕は、父さんへの伝言を母さんに頼んで、御飯が炊き上がると直ぐにカレーを食べ始めた。


 アイテムボックスに入れていたカレーは出来立てで次の日に持ち越したコクや風味は出ていなかったが熱々のままだった。大皿に注がれたカレーを食べ終わり、歯磨きをしてることに眠気が襲ってきた。もう夜だし寝ても大丈夫だろう。

 

 



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