第22話 便利魔道具
僕の選択に、ロジャーとアンディーが応えてくれた。
「「了解」」
「今まで向かっていた方向、前方には、異常はないと考えていいと思うわ。魔物の気配や現れた魔物の動き方から考えて何かにおびえているような風もないし、何かを目指しているような様子も見られなかった。」
「そうだね。僕もミラ姉の言う通りだと思う。もし、何か異常があるなら森の奥の方じゃないかな。」
僕は、そう答えた。根拠は、ミラ姉が言ったことしかないけど…。
「じゃあ、レイ。僕たちが森の深部へ向かっていく今回の探索の最良の成果って何だと思う?」
アンディからの質問。
「最良?」
「最良だよ。今の僕たちにとって最良。」
「アンディが言いたいのは、偶然得られる結果ではなく、何を目指して森の奥に行くのかということ…。今回の探索の目標。依頼内容のこと。分かっているでしょう?」
「異常の原因を見つけるなんて荷が重すぎるよ。今回は、森の奥での探索の仕方と少し強い魔物の狩り方を身に着けること。できるだけ安全に森の奥を探索して、野営することが目標だよ。それに素材採集だね。」
「忘れてなかったね。流石、レイ。そういうことね。ロジャー、アンディ、出発しまょう。膨らみながら森の奥に向かうわよ。」
「了解。そういえば、素材って一番欲しいのって何?」
とロジャーが聞いてきた。
「今、一番役に立つのは魔石。くず魔石も含めてとっても欲しい。」
「くず魔石で良いのか?」
「そう。」
「何に使うの?くず魔石は、使いようがないからくず魔石なのよ。」
「ポーション瓶の材料なんだ。高級ポーション瓶の材料にもくず魔石が必要なんだよ。だから、宜しくお願いします。」
「それも了解。魔石が取れそうな魔物は問答無用な!」
「ロジャー、索敵宜しく。容赦なく狩るぞ」
「了解、アンディ。容赦なくだな。」
それから僕たちは、大きく膨らみながら森の奥に向かった。途中ポイズンスネークやフォレストシープも出てきた。
フォレストシープを初めて狩った時には血抜きや解体で少し時間がかかったが概ね順調に森の奥に向かって進んでいった。
少しずつ右に曲がるような進路で進んでいったのだけど、右奥の方から魔物が近づいてくることはなかった。
「レイ、日没まではまだ時間があると思うけどこの辺りに野営場所を作らない?」
「そうだね。防具屋で買った折りたたみ式のコテージって設置までどのくらい時間がかかるかわからないからね。」
「魔石に魔力を補充するときに組み立てなかったの?」
ミラ姉は、呆れ顔で聞いた来た。
「だって組み立てる場所がなかったんだ。魔力の充填は直ぐに終わったし。」
「説明書は、読んだの?」
「読んだよ。でも、いまいちイメージできないようなことも書いてあってさ。簡単に言うと、地面を掘れば避難用地下室を作れることと、魔石の魔力を使って結界を張った時に、コテージを見失ってしまわないように一人はコテージに残って入り口を案内できるようにしておくこと。」
「そこにあるって分かってるコテージを見失うのってあり得る?」
「説明書に書いてあったことを言っただけだからね。とにかく、組み立ててみよう…、ってその前に設置場所を整えて穴を掘らないと。大きさは、ええっと、7.5m×7.5mだそうだ。その大きさの深さ1.5mの穴を掘れば良いらしい。できる?」
「そのくらいの大きさに草や木を刈り取ってよ。」とアンディ。
僕は、エアカッターを少し強めにして木や草を根元から切断して、コテージを立てることができるくらいのスペースを作った。
森の中は湿っていて土埃は殆ど立たなかった。
アンディは、すぐに穴を作ってくれた。圧縮された土は、僕が収納した。
説明書を見ながら穴の横に折りたたまれた状態のコテージを置いて、操作版に手をかざして魔力を流した。
コテージの魔道具は、まるで目があるかのように掘られた穴にすっぽりとはまってパタパタと組みあがっていった。
(さすが金貨5枚の魔道具だ。)
四方の壁には、監視用の窓がついている。野営用のコテージなのだから手放しで全員眠ることはできない。
見張りの当番は絶えず音に気を使い窓から森を見張らないといけない。
今日は、警備は、3人で回して僕はしなくて良いということにしてくれた。寝たら起きないし、深夜に起きていることができないという理由だ。申し訳ないがその通りなんだよね。
コテージの結界を起動すると光、臭い、音を遮断してくれると書いてある。魔石に魔力を満タンにすると二晩くらいは効果が継続するそうだ。
僕たちは、コテージの中に入ってみた。4か所の窓から森を見ると十分な視界があった。ほとんど死角がない。
窓が少し飛び出しているのだろうか?
「外から、コテージを見てみる!」
僕は、ドアを開け外に出た。振り向くと森があった。コテージのある辺りには不自然でないくらい木々が密集して通り抜けることができない場所に見えていた。
(これが光結界?どっちか言うと幻影みたいだ)
さっき出てきた方に手を伸ばした。木に手が当たった気がした。ドアなんてない。不思議だ。
「ロジャー、ドアを開けて。どこか分からない。」
僕は、小さめの声でロジャーに頼んでみた。
「ん?どうした?」
ロジャーがドアを開けて僕の方を見ていた。僕は、慌ててドアの中に入っていった。
「凄いよ。これ!外に出たらどこにコテージがあるのか分からない。」
「本当?まあ、レイは、索敵スキルが低いからな…。ロジャー、外に出て本気で索敵してみてよ。」
アンディが言ってきた。
「分かった。どのくらいの結界なのかは確認しておく必要があるからな。」
そう言うとロジャーは、外に出て行った。
「アンディ。どこにいる。みんなで息をひそめているだろう。さっき出てきたばかりなのに入り口が分からない。」
「ここだぞ!ロジャーっ!」
アンディが割と大きめの声で応えた。
「気配を消してないで、返事してくれ!」
アンディは、ドアを開けて応えた。
「気配なんか消してないって。こっちだよ。」
「ほっ、本当かい。外からは全く気配がつかめなかった。」
「ロジャー、とにかく入っておいで。」
僕は、ロジャーにコテージに入るように言った。
「凄い。このコテージは凄いよ。魔物にどれだけ通用するかはまだ分からないけど本当に何処にコテージがあるか分からなかった。」
「だろう。で、さあ。臭いも外に出さないのなら普通に食事しても良いっていうことだよね。勿論、今日は、臭いのするような料理はしないし食べないけどいつか試してみたいよね。」
僕たちは、パンと干し肉を野菜スープにいれて柔らかくしたものを魔力コンロで温めて食べた。初めての野営にしては満足な食事だった。
今日の警備順は、アンディが一番、真ん中がロジャー、ミラ姉は、最後の警備を担当することになった。
僕は、夜警免除で早めに寝るように言われている。
食事がすんですぐ、明かりは暗くした。夜の闇に慣れてくると部屋の中からも森の様子が見えた。
僕も暗い部屋の中からしばらく外の様子を見ていたが、眠気に負けてベッドに横になるとすぐに意識が薄くなっていった。
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