第20話 キャンプ計画

 今日は、図書館に行くことにしよう。


 午後にキャンプ道具を売っている店に行くことは昨日決まった。


 図書館が開くのは、10時だから少しだけ時間がある。パルプ確保の為に庭の草刈りをするのはどうだろう。


 草刈りと言っても普通にしてもつまらないからエアーカッターでやってみよう。強さを調節したらできる気がする。



 僕は、弱め(空気の量少なめ)のエアカッターを何種類か精錬し、庭に出た。


 軒下の日陰に立って雑草が生えている地面に向かって一番弱いエアカッターを飛ばしてみた。


 少し土埃が舞い上がって一緒に雑草も舞い上がった。庭にある雑草くらいなら一番小さいエアカッターでも十分なようだ。


 でも、このまま草取りをすると土埃が舞い上がって家の中まで砂埃だらけになってしまいそうだ。もしかしたら、ご近所から苦情が来るかもしれない。


 どうしたら良いか考えている時、お母さんが居間から顔を覗かせた。


「玲、どうしたの?」


「んん〜っ?草取りしようかなと思ったら砂埃がたっちゃって。どうしたら良いか考えていた所。」


「まず、水撒きしたらいいんじゃない。」


「そ〜うだね〜。そんなに難しいことじゃないよね。」


「ホース持ってきてあげようか?」


「ん~っ。お風呂の残り湯貰っていい?」


「何するのかわからないけど良いわよ。」


「水道の水も少し。」


 僕は、お風呂場に行ってアイテムボックスを開き、蛇口をひねって出した水に、手をかざして収納した。


 次に残り湯に手をかざして収納。台所に行って浄水器の水をコップ一杯ほど収納、冷蔵庫の中の氷を収納。


 さて、実験開始。


 まずは、アイテムボックスの中に水滴を精錬する。精錬した水滴を庭中にスプレー(散布)するイメージで、


「アイテムボックス・オープン・スプレーイング・ウォーター。」


 細かい水滴が庭を濡らした。


「すごく、便利!ねえ、玲。超便利!!」


「草狩りするから見ててね。前に出ないで、ここからだよ。」


 僕は、草が生えている方に手の平を向けた。


「エアカッター。」


 程よい具合に土が湿っていて土埃は抑えることができた。


「うまくいったね。」


 次からは、声は出さずに


(エアカッター、エアカッター、エアカッター、エアカッター…。)


 雑草は、根元から切れ土と一緒にぴょんびょん飛び上がっていく。


 軒下から見える雑草は、ほどほど刈り終わった。庭の方に手をかざし、抜いた雑草を収納する。


(アイテムボックス)


 雑草は、全て収納された。思ったようにアイテムボックスを使うことができた。このくらいだったら魔力が減った感じさえしない。


「早いわ!庭の草取りっていつも夕方30分くらいやっても全然終わらなかったのよ。玲、ありがとう。」


「紙の材料にならないかなと思ってさ。これから、図書館に行くでしょう。沢山コピーしたいからさ。」


「本をコピーするのよね。」


「違法コピーかもしれないけど…。アイテムボックスから出さないことを誓うよ。」


「玲のコピーは、一般的に言うコピーと違って、どちらかというと借りた本を書き写したみたいなものなんでしょう。それって、公開しない時、著作権法違反と言えると思う?そんなんじゃ、読んで覚えることも、読んだフレーズを会話に流用することも著作権法違反になっちゃうじゃい。まあ、講演なんかでは本の内容を講演内容に入れる時は、著作名を紹介したりするのはマナーでしょうけどね…。あっ、ごめん。少し熱くなっちゃった。最近、著作権については、職場で色々あったからさ…。結論から言うと気にしないで良いと思うわよってこと。」


「わ…、分かった。」


 僕は、その迫力にそう言うしかなかった。


 そんな話をしてると父が起きて来て、朝食を食べたら、図書館に行く時間になった。


(しまった。飲み水の精錬実験をしていない。いいか、車の中でも。紙コップ持って行こう。)


(紙コップって紙で形を作って、ラップでも貼り付ければ何とかなるかな…。薄く張り付けるって一言で言ったら何だろう。web先生に聞いてみようかな。何か、精錬の呪文って英語っぽいんだよね。)


 僕たちは、図書館に向かった。今日コピーした本は30冊。


 機械工学や材料工学を中心にコピーしてみたが読みでもさっぱりわからなかった。基礎ができていない中学生には、分からないものは分からない。


 やっぱり、知識を積み上げて、理解をしていく必要があるんだ。理解できるようになるかな…。


 5冊目からは入門書を中心に一般図書のエリアからコピーしようとしたんだけど、人が多くてなかなか進まなかった。


 だから、2時間で30冊。内容を少し確認して周りを気にしながらコピーしたからだ。他には、父さんと母さんが見つけては薦めてきた本もコピーした。


 悔しいけど、すすめられた本の方が分かりやすかった。


 そんなことをしているうちに昼ご飯の時間になって、僕たちは一度家に帰って食事をすることにした。


 昼ご飯を食べてキャンプ道具の店に行った。


 そもそも中3にもなって親子3人でキャンプだなんて気持ち悪くないか?


 でも、両親に押し切られた。僕が小さい時から一緒にキャンプに行きたかったんだと。


 でも、今までできる状態じゃなかった。いつも死にそうだったから。それが、できそうなくらい元気になってキャンプに行って実験したいと言ったら一緒に行かないという選択はないと言い切って、押し切られた。


 そんな訳で、決して僕は気持ち悪くない。くっ…、って誰に言い訳してるんだ!!!


「キャンプギアはロマンだ。」


「キャンプ道具なんて使いやすさと合理性よ。」


「精錬しやすさだよ。」


「「ん?」」


「あんまり複雑な材料でできているギアは、精錬が難しいと思う。それは、もったいないと思わない?」


「ん~?それは、良く分からない理由だと思う。でも、参考にはするよ。」


「で、必要なのはテントだろ。バーベキューセットは、必須だ。車に積める冷蔵庫もあったら便利だと思わないか?」


「冷蔵庫は多分いらないよ。試してみないと確実じゃないけど」


「試すってどうやって?」


「冷たい水を出せるか試してみる。」


「精錬で氷を作ることができたら冷蔵庫はいらないでしょう。」


「でも、玲が寝たら氷が手に入らなくなる。それは、困る。」


「じゃあ、大型のクーラーボックスにしよう。玲が寝る前に飲み物や氷をそっちに移しておけば大丈夫だ。」


「父さんは、キャンプに行って何しようと思っているの。」


「「夜は、お酒とバーベキューに決まっているでしょう。」」両親が声をそろえて答えた。


 結局、その日に買ったのは、テントとバーベキューセット、大型クーラーボックスだった。


「それとな、行先なんだけど、木や草、石なんかの素材集めをしたいんだろう?それと、実験だな。」


「うん。だけど、木や草を採集するのって難しいんだろう。どこも誰かの土地だし、所有物だから。」


「そう!だから考えたんだが、夏休みの草刈りボランティアなんか利用してみないか?」


「草刈りボランティアって、何?」


「冬場のスキー場やキャンプ場予定地、国定公園の整備等、色々あるみたいだ。うまく交渉して家族での思い出作りだからとか言ってさ。その辺は、私や母さんに任せてくれ。いざとなったら…。」


「そうよ、玲。いざとなったら、私も…。安心しておきなさい。」


「いざって何?怖いんだけど…。」


「大丈夫、怖いことなんて何もないわ。安心できる・い・ざ、よ。」


「わかった…。楽しくて、美味しいキャンプになることを確信したよ。宜しくね。」


 僕は、二人に任せることにした。僕には何の伝手もないから。


 夕方には、〇〇市のキャンプ予定地の草刈りボランティアが決定していた。


 海のキャンプはまだ決まっていない。



 




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