第2章 指名依頼編 初めての冒険

第18話 完全記憶

 僕の部屋だ。夏休み中…。


 宿題も出ていたはずだけど、1学期はずっと入院していたからな…。宿題には、手つかず。もう、しなくても良いかな…。夏休みは残り…、3週間程度。


 中学校の勉強も向こうの世界では十分最先端科学だ。生活を豊かにするのに役に立つはずだけど、宿題が役に立つかどうかと言われれば役に立たない気がする。


 受験には役に立つだろうけど。こんなこと考えていてもしようがない。朝ご飯に行こう。


 食卓には、目玉焼きと生野菜がお皿に入ったものが置いてあった。ラップはかけてある。


 コップを出して冷蔵庫の中にある牛乳を注ぐ。パンをオーブントースターに入れて、トースト

(2~3分とイラストと文字で記してある。)を焼く。


 こんなのしたことなかったな。朝は、食べたくなかったし。


 牛乳の横に冷たいスープがカップに入っていれてあった。もちろん収納し、メニュー化する。


 牛乳、スープ、目玉焼き、トーストが朝食のメニュー。美味しそう。あっと言う間に平らげてしまった。もう少しボリュームが欲しい。


 もう一度冷蔵を探してみる。カップゼリーを見つけた。メニュー化して食べる。美味しかった。


 まだ、足りない気がするけどこのくらいでやめておく。


 今日は、両親とも仕事だ。母は、休んでいいと言っていたのだけど断った。父も休むと言っていたけど仕事をしてほしいと頼み込んだ。


 夏休み中に何をしたらいいのか、突然できた自由な時間の使い方をどうしたらいいのかまだ決め切れていなかった。


 昨日図書館から借りてきた本は読んで、コピーしたい。


 どのくらい内容を理解しないとコピーできないのか試してみたい。そうだった。昨日は、そう思ったんだった。だから休みを断ったんだった。


 さあ、本を読んでコピーしよう。有機化学の本と火薬の本。中世の武器と防具ことについて書いてある本。凸版印刷の本もあるか。


 どれから読んでみようかな。写真が多くて分かりやすい本からだな。やっぱり中世の武器と防具の本かな…。


 僕は、リビングでゆっくりと本を読んでいる。流し読み、三分の一まで読み進めて収納してみた。


 パルプのもとになる木材もアイテムボックス入っている。インクも買ったから少なくとも白黒コピーはできるはずだ。


「アルケミー・防具の本」


 アイテムボックスの中には防具の本が二つになっていた。二つとも出して比べてみる。見ていないところも大丈夫。紙の質とインクの色みは微妙に違うけど十分読むことができる。


 次は、全く読まないでコピーしてみよう。有機化学の本だ。難しいし、読んでもまだ理解できない。まずは、収納。そして精錬。


「アルケミー・有機化学の本」


 できた。取り出してみ比べてみる。


(やった!できた。)


 思わずガッツポーズ。それから、図書館で借りてきた本は全部コピーした。あっと言う間に終わってしまった。


 アイテムボックスの中を見てみると材料のつもりで準備していたコピー用紙が全部なくなっていて、薪も半分になっていた。


 古新聞や段ボールをアイテムボックスの入れておこう。


(そうだ。アイテムボックスオープンは唱えなくてもアイテムボックスは、開けるようになったんだった。)


(それなら…、頭の中でフルプレートのページをサーチしてみた。)


「良し!」


 思わず声が出てしまった。


(アイテムボックスが目の前に開き、思い浮かべたページを見ることができた。)

 

(これって他の人からは見えないんだよな。アイテムボックスでコピーした物っていつでも見放題、調べ放題ってことだよね。サーチといってもアイムボックスに対してそのページを見たいと考えただけ。一瞬で表示されたよ。)


(これって使い方によっては完全記憶だよね。カンニングってことになるのかな?お母さんに聞いてみよう。)


 まず、紙の収納だ。


(古新聞はありませんか~?古段ボールはありませんか~?)


 僕は、古新聞と古段ボールの場所を探して家の中をさまよった。


 なかなかないんだよね。いったいどこに片づけてあるのかな?


(そうだ、庭だ。庭に倉庫があった気がする。庭に行ってみよう。)


 庭に出てみた。壁際にプレハブの倉庫が立っていた。このまま一回収納したら作れるようになるはず。


 材料は、鉄、塗料、プラスチック部分もあるけど木やほかの金属で代用できるかもしれない。中身は、入ったままよりも空にしてからの方が良いな。


 扉を開けようとしたら鍵がかかっていた。


(カギはどこだ?)


(もう~、やりたいことは増えるのに自分の家のこと知らな過ぎて進まない。もどかしい…。)


「ただいま~。」


(あれ?まだ2時なのに帰って来た。)


 僕がリビングに行くと母親が着替えを済ませて入って来た。


「どうしてこんな時間に帰って来たの?」


「うちの学校も夏休み中だからね。午後から休みを取って帰って来たのよ。明日から一週間の連続休暇よ。いろいろ実験してみましょう。」


 うちの母は、この市の中学校の理科の先生だ。実験大好き。


「じゃあさあ、古新聞と古段ボールが欲しいんだけど…。捜したけど見つからなくてさ。どこに置いているの?」


「古新聞はね、ないの。家は今新聞は取っていないのよね。タブレットで読むことができるように契約はしてるけど…。でも、古紙は、庭の倉庫に入れてるわ。まとめて古紙回収に出すから、段ボールも一緒にあるはずよ。行ってみる?」


「やっぱり倉庫なんだね。鍵がどこにあるかわからなくて、扉を開けられなかったんだ。」


 僕たちは、庭の倉庫の前に来ていた。


「じゃあ、開けるわね。」


 ガチャと鍵を回してガラガラと音を立てて扉を開けた。ほとんどスチールでできているようだ。


 中には、いくつもの荷物紐でまとめられた古紙があった。段ボールも紐でくくられている。


 (良し。)


「この古紙を全部もらっていい?」


「大丈夫だけど、何に使うの?」


「うん?昨日借りてきた本をコピーしようと思って。その材料にするんだ。」


「へーっ、そんなことができるの。すごいわねぇ。」


「うん。アイテムボックス」


 僕は、倉庫の中の古紙と段ボールも全部収納した。


「この中にあるもの一旦全部収納していい?」


「今すぐ必要な物はないけど、いるかもしれないものは入っているから壊さないでよ。」


「分かってるって。」


「扇風機や昔のゲーム機、僕のおもちゃもあるみたいだった全部収納。アイテムボックス」


(空っぽになったプレハブ倉庫を収納して作れるようになりたい。)


「このプレハブも収納してみたいから、扉に鍵を刺してくれない。」


「了解よ。」


「アイテムボックス。」


「えっ?消えた。この大きさの物も消せるのね。」


「うん。あっ、下に置いてあるブロックも収納するね。」


 庭に、プレハブ倉庫の基礎の形をした穴が残っていた。流石にびっくりしたのか目をぱちくりしている母に


「元に戻すね。」

 と言い


「アイテムボックス・オープン、オープン」で基礎とプレハブを戻した。


「扇風機は、一度精錬してみるね。アルケミー・扇風機」


 扇風機は、2台にはならなかったが、ほこりや汚れはなくなっていた。


「やっぱりプラスチックや導線なんかがアイテムボックスの中にはないからコピーはできないね。」


「壊れていない?きれいになっているけど、何かしたのでしょう。」


「扇風機は壊れていないと思うけど、ゲーム機なんかは壊れるかもしれないな。僕が仕組みを全く分からないから。」


「でも、今どきの扇風機は、半導体を使っているのよ。」


「それは、心配かも…。」


「じゃあ、残りの物は精錬しないで取り出すね。」


 倉庫の道具を全部元に戻し終えて僕たちはリビングルームに戻って来た。


「じやあ、本のコピーやってみるね。ちょっと待って」


 僕は部屋に戻って中1~3の5教科の教科書と資料集を抱えてきた。


(アイテムボックスの中に入れて持ってくれば楽だったんだけど、収納してコピーする所見せたかったんだよね。)


 全部の教科書と資料集、ワークブックと解答を収納した。目の前にあった本がふっと消えていった。全部が2冊になるようにコピーしていく。


「できたよ。」


 10分もしないうちにコピーが終わって、


「教科書、資料集、ワークブック、解答」そして、もう一度「教科書、資料集、ワークブック、解答」


 少しだけ色合いが違う教科書が2セット出てきた。それから、コピーした分を収納。


 手をかざしてコピーした教科書をアイテムボックスの中に収納する。


「お母さん、中学一年から三年の範囲で理科の問題出してみてくれない?」


「えっ?どこからでもいいの?」


「うん。いいけど、何年生の内容かは教えてくれない?まだ、十分に勉強していないから。」


 「じゃあ、聞くわよ。中学2年生の学習内容ね。整流子の役割を応えなさい。」


 (アイテムボックス・検索・整流子)


「モーターに流れる電流の流れを一定にする。」


「正解」


「炭酸水素ナトリウムの化学式は?」


(検索・炭酸水素ナトリウム)


「NaHCO3」


「じゃあ、歴史から、西暦1185年源頼朝に源義経の討伐を認めたのはだれ?」


(検索・源義経・討伐)


「後白河上皇」


「どうして、受験勉強なんてしていないでしょう。」


「アイテムボックスの中の本をコピーしたら検索して読むことができるようになった。カンニングになる?」


「それって、玲の能力でしょう。道具を使っているわけではないなら完全記憶と同じような力と思っていいのかもしれないね。ちょっとずるいかもしれないけどね。」


「玲、あれだけ苦しんで苦しみを乗り越えて手に入れた能力なのよ。誇っていい。生きることをあきらめなかったあなたが自分で手に入れた力なの。使っていい。胸を張って使いなさい。」


「じゃあ、受験勉強終わっちゃったね。」


「う~ん。半分はね。どこの高校に行きたいかにもよるけど、計算練習やリスニングなんかは教科書の内容を覚えてもできないわよ。」


「そうか…。計算練習は、毎日少しずつやればできる。公式は完璧だから、ドリルを繰り返して解き方の手がかりを見つけることができるようになればいい。」


「リスニングは、どうしたら良いの?」


「高校入試のリスニングはそんなに難しいものじゃないけどね。だから、心配する必要はないよ。」


「じゃあ、次の実験を考えよう。」


 僕たちが、次の実験を考えたり、どんな本の内容をコピーした方が良いかなんかを話していると父さんが帰って来た。


 夕食をしながら、実験内容で盛り上がって、父親も明日から休暇を取ったことを聞かされてからベッドに向かった。楽しかった。










【後書き】

第2章の始まりです。

これからも、宜しくお願いします。

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