第11話 ポーション販売って

 僕は、そのまま村の外に出て鍛錬をしようかと思ったんだけど、神父様が声をかけてきた。


「レイ。一緒に町まで行かないか。お前が作ったポーションを調剤ギルドか道具屋に売ろうと思うのだ。顔つなぎをしておけば、お前もポーションの販売をしやすくなるだろう。」


「今から町ですか。」


(急いで歩いて往復で4時間程、町に1時間いたとしてギリギリ暗くなる前に戻ることができるか…。遅くなった時でも神父様と一緒なら何とかなるかな。宿代は、回復ポーションか毒消しポーションを売ればなんとかなる。)


「分かりました。家に戻って書置きをしてきます。直ぐに戻ってくるので待っていてくださいね。」


「うむ。今日中に戻れないかもしれないからな。私と一緒だということと、町に泊まるかもしれないことを書き置いて来るんだぞ。」


「はい。分かりました。」


 僕は、急いで家に戻り、台所のテーブルに書置きをすると教会に戻って来た。


 神父様と二人、黙々と歩いて町に向かった。思った通り2時間ほどで町に着いたが、かなりの修練になったと思う。神父様は、元冒険者だけあってかなりの健脚だ。


 僕は、ヘトヘトになりながらも遅れることなく町にたどり着いた感じだった。



 神父様と初めに向かったのは調剤ギルドだ。僕が作った回復ポーションと毒消しポーション。魔力病薬を鑑定してもらうためだ。鑑定次第では、ギルドに直接販売した方が良い。そのように神父様に言われて訪れた。


 受付で用向きを問われ神父様は回復ポーション、毒消しポーション、魔力病薬を1本ずつ出した。


「これを鑑定して欲しい。条件次第で買い取ってもらおうと思っている。」


「はい。少々お待ちください。鑑定に回しますのでお預かりしてもよろしいですか?」


受付係の女性が対応してくれた。


「大丈夫だ。」


「では、預け状の必要事項の記入とサインをお願いします。」


 神父様は、預け状を読み、品の欄に上級ポーション、上級毒消しポーション、魔力病薬と書いた。僕は隣で記入の仕方を覚えようと瞬きもせず見ていた。


「上級ポーションが二種類と魔力病薬ですね。上級となると鑑定に少し時間がかかりますが、大丈夫ですか?」


「今日の用事は、薬の鑑定だけだ。村に戻るのに時間がかかるから急いでは欲しいが、時間的には問題ない。正確な鑑定を頼む。」


 僕たちは、調剤ギルドのロビーで時間をつぶしていた。


「レイ。鑑定次第では、今日持ってきた10本の回復ポーションのうち5本と魔力病薬一つ、毒消しポーションは3本まで売っておこうと思う。状態異常解消ポーションの上級瓶をまずは、1本購入してみよう。」


「上級瓶っていくらくらいするのですか?」


「私もよく知らないが、銀貨5枚から金貨1枚くらいはするだろうな。」


「状態異常解消ポーションは、あまり出回らないのだ。レイが作ったのがそうなのかも確定はしていないのだが、多分、間違いないだろうと思う。まあ、金貨1枚くらいだったら鑑定次第では、はした金になるかもしれないしな。」


 しばらく待っていた。30分くらいだろうか。


「ベンジャミン様。開拓村からいらしたベンジャミン様。鑑定結果が出ましたので受付にいらっしゃいませ。」


 受付のお姉さんの声が聞こえた。僕たちが受付に行くとお姉さんが恭しくお辞儀をしてきた。


「ベンジャミン様、ギルドマスターがお話ししたいと申しておりますので、奥の応接室においで下さい。」


「レイ、行くぞ。」


「えっ?」


「製作者が来なくちゃ、話にならないだろう。」


「ベンジャミン様、こちらです。」


 僕に目を向けた受付のお姉さんに向かって


「身内だ。」


 神父様は短く答えた。


 応接室では、ギルドマスターの後ろに二人の男が立っていた。


「ベンジャミン様、お掛け下さい。」


 ギルドマスターは、神父様に椅子に座るように勧めてきた。


「うむ。レイも座れ。」


神父様は鷹揚に応え、ソファーに体を預けた。


「ベンジャミン様、鑑定の結果を伝えさせていただきます。私は、このギルドのギルドマスターをしております。ジェイソン・チャップマンと申します。ジェイとお呼びください。こちらが、上級鑑定師のジョナサンです。では、ジョナサン。鑑定結果を。」


 後ろに立っていたジョナサンと言う鑑定士が鑑定結果を伝えるようだ。


「回復ポーションは、上級、ポーション瓶は上級の性能を持っていますが、デザインが中級ポーション用の瓶になっています。できれば、入れ替えるかデザインを変えることが望ましいかと思います。毒消しポーションも上級、ポーション瓶は上級の性能は持っていますが、初級ポーション瓶のデザインです。同様に入れ替えるかデザインを変更することをお勧めします。魔力病薬は、最上級。これは、当ギルドに販売していただければ最高額でお引き取りできると存じます。」


「ぶっちゃけた話を聞いていいか?」


 神父様…、冒険者みたいな口調になってる。


 「はい。何でございましょう。」とギルドマスター。


「今のポーション瓶で引き取ってもらい、上級回復ポーション瓶と上級毒消しポーション瓶を一つずつ貰うとして差し引きいくら出してくれる?全部込みでだ。」


「今後のことを考えまして、ポーション瓶は二つで金貨1枚いただいたとして差し引き、金貨99枚と言いたいところですが、金貨100枚でお引き取りさせていただきましょう。あくまでも今後のお付き合いを考えてということですが、どうでしょうか。」


「内訳を教えてくれないか。」


「回復ポーションは、中身だけの値段で金貨30枚。毒消しポーションは中身だけで金貨20枚魔力病薬が金貨50枚です。」


「では、今後は?品質が変わらないという条件でどうなる。」


「そうおっしゃると思っていました。回復ポーションが金貨9枚、毒消しポーションは金貨5枚。上級瓶に入れられた状態なら回復ポーション金貨11枚毒消しポーションは金貨6枚でどうでしょうか?」


「一回何本まで取引できる?」


「何本でも。しかし本数が多い時は、しばらくの間は、鑑定に時間をいただかないといけません。次の日の代金払いにしていただけるなら何本でも結構です。」


「金貨100枚で材料をそろえて、沢山のポーションを卸せということですね。」


「そうしていただければ助かるというだけで、卸せだなどと偉そうなこと思ってもいません。悪い話ではないと思うのですが、如何でしょう。」


「ギルドカードを作っていただければ、代金を預けることもできるようになります。また、材料の魔石や薬草も融通できるようになりますが如何でしょうか。」


「分かった。その話受けよう。代金と上級瓶はここでいただけるのか?それと、この話受けるにあたって一つだけ条件がある。」


「条件というのは?」


ギルドマスターは難しい顔をして聞き返してきた。


「大したものじゃない。ここにいるレイ。彼が今後取引を行うということだけだ。私は、教会の仕事があって村を頻繁に離れるわけにはいかないからな。」


「レイ様が取引を行うということであれば、ギルドカードはレイ様の名義でおつくりした方が良いのですか?」


「そう言うことだ。宜しく頼む。」


 神父様はトントンと話を進め、僕が調剤ギルドのカードを作り今後取引を行うことになった。それから、カード登録の手続きや代金の金貨100枚と上級瓶の受け取りを行った。全て終わった頃には、日が暮れだしていた。


「神父様、今からじゃ村に戻ることはできませんね。」


「そうだな。懐もあったかくなったことだし、酒と食い物を調達して教会にでも顔を出すか。」


 神父様はニヤリと笑って言ってきた。僕たちは、食べ物とお酒を調達して町の教会へ向かったのだった。



「今晩は。」


「レイ兄ちゃん。もう来てくれたのか?」


 ケインが、一番に僕を見つけて声をかけてきた。


「おう。来たぞ。今日は、少しだけだけど差し入れを持ってきた。」


「よっ!ニコ。酒持ってきたぞ。臨時収入があったからな…。信心深い奴がいてな。沢山のお布施をしてくれたんだ。」


 ニヤニヤしながらベン神父様がニコライ神父に話しかけていた。二人は、久しぶりに飲み明かそうと息巻いている。酒は、樽で買ってきていた。料理や酒は、手に持てる量ではなかったのでアイテムボックスの中に入れてきた。お金もアイテムボックスの中だ。


 神父様は身軽でいたいと何もかもアイテムボックスの中に入れさせた。そこまで信用してくれるのは嬉しいけど、僕に何かあったらアイテムボックスの中身はどうなるのかと思うと少し心配になった。


 教会で晩御飯を食べて神父様たちと一緒に話をした。盛り上がって酒をがぶ飲みする二人に付き合っていたらどのくらいの時間になるかわからなかったから、先に寝室に案内してもらって眠ることにした。


「今日はいろいろあったなぁ。本当に…。ポーション販売って意外に簡単にできた。それにしても、残りのポーションを売ってしまったらいくらになるかな…。」


 すぐに意識は薄れていった。

 

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