【短編】ずっと見ていたい~人気者の君と陰キャの隅っこ男子~
奏流こころ
人気者の君と陰キャの隅っこ男子
僕の前の席に座る女の子・
誰にでも別け隔てなく接し、優しい鈴の音のような柔らかい声が魅力的。
太陽と青空が似合う。
活発な見た目だが、話してみると物腰が柔らかい。
雰囲気はぽわんとしている。
笑顔は格別で、ほとんどの男子達はノックアウトするほどだ。
そのノックアウトした中に、僕はいる。
※
「消しゴム忘れたの?」
「えっ」
1学期の時。数学の授業でのこと。
僕が消しゴムを忘れてしまい険しい表情をしていた時のことだった。
右隣に座っていた佐藤さんが気が付いて、声をかけてくれたのだ。
小声でも透き通る声にドキッとした。
「まあ、うん…」
この時の僕は『こんな陰キャで隅っこにいる僕に構わないでくれ』と思っていた。
悪い何かを彼女に付けてしまう、なんて縁起の悪いことを思っていた。
でも彼女はサッと消しゴムを1つ、僕の机に置いた。
「終わったら返してね」
ニッコリと笑って彼女は前を向いて授業の世界に戻っていった。
僕は呆然とした。
たった1つの消しゴムでー…。
コロッと、心が落ちてしまうなんて…。
それからの僕は佐藤さんから目が離せなくなってしまった。
※
2学期に入ってからのこと。
今日も可愛い佐藤さん。
友達と話している彼女は楽しそうだ。
もちろん誰かが困っていると直ぐ助けるのも良い。
気配り出来る、素敵だよな。
アホ面なんだろうな、今の僕。
キモいよなー…ごめんなさい。
じっと見ていたら、その視線に気付いたのか偶然か。
佐藤さんは僕の方に視線を合わせた。
見つめ合うこと数秒。
僕にとって数分数十分の体感になった。
そして佐藤さんはふふっと微笑んで、友達とどこかへ行ってしまった。
幸せだな、もっと見つめたいー…。
そう想った今日この頃であった。
※
あの消しゴムがきっかけで、よく見てくる後ろの席の
彼は覚えてはいないだろうけれど、高校受験の時に、消しゴムを忘れてしまった私は困っていた所に、隣にいた彼は助けてくれた。
冴えない顔で前髪が長くて表情は暗かったけど、雰囲気は優しそうな感じを受けたことを覚えている。
今は同じクラスで、私はこっそり嬉しかった。
あの時の私は彼に負けず劣らずの暗い陰キャ側だった。
でも陽キャの友達が出来たことによりプロデュースじゃないけれど、どんどん変化して、今ではいろんな人と交流するようになっていた。
そんな中、消しゴムを忘れた影森君。
私はキタッ!と思ってすかさず声をかけた。
そして貸した。授業が終わると返ってきた。
その後、彼は私を見てくるようになっていた。
キモいなんて思わない。
逆に見られているから可愛くいたい!と思うようになった。
今では努力を怠ることはない。
だから、感謝している。
もっと影森君とお話したい、私をもっと見て欲しいー…。
そう願う私はおかしいのかな?
なーんてね。
【短編】ずっと見ていたい~人気者の君と陰キャの隅っこ男子~ 奏流こころ @anmitu725
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