第13話「それはレーザー」
「
……こ、これは幻か??
もしかすると、
激痛と、失血と魔力欠乏で、朦朧とする意識の中でみる妄想なのか?
だけど……。
(妄想でも、いい)
ただの幻覚であっても、一度でもいいから、俺に攻撃力を───。
ぐ、
ぐぐ、
「ぐぅぉぉぉおおおお…………!」
目の前に浮かんだ黄金色に輝くステータス画面に、伸ばしたままの右手で触れる。
ちょん……。
ふ、
「ふふふふ、ふふふふふふふふふ」
届いた。
届いたぞ……!
チカッ♪ チカッ♪
『光
【光】属性から【光線】属性に、
進化しますか............Y/N』
ふ、
ふははははははははははははははははははは!!
「進化
そんなもん──────
そんなもん…………
そんなの、
「──
カチャ................Y
迷わず「Y」を選択したライト!!
刹那、ガカッ────!!
と、ステータス画面が猛烈に輝き、黄金色の光を放し、痛烈に回転を始めた!!
「ぐううわっぁぁああああああああああああ!」
な、なんだ?!
ぐッ…………────目、目が……!
もはや、目も開けられないほど強烈な光がステータス画面からあふれ出る!
光魔法なんて比じゃないほどの眩い光ッ!!
──ぶわぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!
「……め、目が、目がぁっぁあぁぁあああああああああああああああっ!」
…………しゅぅぅう───。
そして、それが収まった時、
ようやく視界の安定したライトの目の前には、黄金のステータス画面が。
チカッ♪ チカッ♪ チカッ♪
と、チラツキながらも、
緩やかに回転しつつ、動きを……………止めた。
そして──。
───ポ~ン♪
『
「………………は?」
ブゥゥン……。
※ ※ ※
L v:15
名 前:ライト
職 業:冒険者(下級)
系 統:魔法使い
属 性:光 ⇒ 光線(NEW!)
所得魔法:Lv1
※ ※ ※
「……こ、」
こ、光線、属性……?
「なんっだ、これ……」
光線属性って、
「なんなんだよこれはぁぁっぁああああああ!!」
また光?!
光に線がついただけ?!
光線って、それが、
それが、
──それがなんだっつーーーーん、だよぉ!!!
リッチに腹を抉られながらも、かろうじて意識を保っていたライトの目の間に現れたステータス画面。
そこには、
はっきりと【属性進化】と【光線】属性の文字が躍っていた!
しかも、
光ではなく、
光線……。
「光線……」
光線────。
光線んんんッッ────?!
「ふ、ふざけやがって、………って、これは?!」
しゅ、取得魔法がある……。
しかも、これ──。
「……レ、レーザーぁぁぁああ…………?!」
ウィィィイイン!
そう詠唱するや否や、ライトの突き出した右手に魔力が集まる。
「うわ!
そして、脳が、本能が、属性が告げる!!
指を織り込み、
親指を照準器に見立てて、
人差し指と中指を突き出せと───!!
出せ!と
出せ、と!!
出せ!! 狙え!! そして───
そして、
そして
そして、
──ポーン♪
……システムが告げる。
すぅぅぅ……、
『──撃てぇぇぇっぇぇぇぇええええええええええええええええ!』
う、う、う、う──────……
「うらぁっぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!」
じゃきんっ!!
指鉄砲の先に、リッチの顔面を捉えるライト。
そしてぇぇぇぇえ、
発射ッ。
ブワッ!!
放射状に集まった光が一気に収束し──。
──カッ!!
「……死ね。ミイラ野郎」
『ロァ──?』
……──ズキューーーーーーーーーーーーン♪
直後、指先から猛烈なエネルギーが迸り、射線上にいたリッチにゼロ距離射撃!
………………ぼんっッ!!
『ォァァ──???』
そして、そして、そして、
------------ン…………♪
そしてぇっええええ!
あ、あのリッチが、あのリッチがぁああ──…!
ジュぅぅぅううう……。
と、
「溶け、た……?」
う、嘘だろ……。
嘘だろ……。
「うっそだろ、おいぃぃい……?!」
ドサッ!
倒れ伏すリッチの体。
頭部は、ない。
そして、そのままチリチリと灰になって消えていく……!
マ、マジかよ、
「マジかよー、おぃぃい!!……い、一撃で
そう。
まさか、まさかの一撃。
ライトの驚愕の通り、リッチの頭部がぼんっ!! と弾け飛び──いや、蒸発し……あろうことか、その先の壁をも貫き、ドロドロと溶かして赤熱させたうえ、ガラス化していく様までもがありありと!!
「ぅぅ、嘘だろぉぉぉおおおおおおおおおお!!」
おい!?
こ、これが、
光線属性
これが、
Lv1の……
ぶぅぅん……。
※ ※ ※
【光線】属性
Lv1『レーザー』
備考:科学の力で、全てを貫くレーザーを発射。
魔力の量により、出力の調整可能──。
攻撃力100000~∞
※ ※ ※
レ、
レ、
レ──
「…………レーザーだとぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!」
レーザー。
レーザー!
まさかのレーザー!!
しかも、最低攻撃力が100000?!
攻撃力0の光属性から……じゅうまんんんん?!
「ぶぶぶ、いきなり、ぶ、ぶっ飛び過ぎだろうがよぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」
だが、その叫びを合図にしたかのように、突如、リッチの統制を失ったアンデッドが一斉にライトに群がってくる!
『『『『『ゴルァァァァ嗚呼!!』』』』』
まさに解き放たれた獣!
まさに狂乱!!
まさに一気呵成!!!
その数──変わらずの1000!!
1000体のアンデッド────!!
トリプルA級ダンジョンのアンデッド軍団!!
それが、
しかるのちにぃぃぃぃいい、
死ぃねぇぇぇええ!
これが、
「念願の攻撃力だぁぁっぁぁぁあああああああああああああああ!!」
──ウィィィィイイイン!!
ライトの右手に宿る魔力!!
そして、赤青白い光が玉となって指先に集中し────……あとは!!
「──────撃てぇぇぇぇええええええええええええええええええええ!」
──ズキューーーーーーーーーーーーーン♪
『『『ゴァァァ──』』』
ぼんっ!!
と、射線上のアンデッドがすべて貫かれて、直撃した上半身が消し飛んだ。
さらには実態にないはずのファントムですら、ジュワァ……♪ と消滅。
あまりに威力に、さすがにアンデッドもぴたりと動きを止めたが、それが命とりだ!!
そう、命取りなのだ!!
「撃てぇぇぇっぇぇぇええええええええ!」
──ズキューーーーーーーーーーーーン♪
「撃てぇぇぇっぇぇぇええええええええ!」
──ズキューーーーーーーーーーーーン♪
「撃てぇぇぇっぇぇぇええええええええ!」
──ズキューーーーーーーーーーーーン♪
「撃てぇぇぇっぇぇぇええええええええ!」
──ズキューーーーーーーーーーーーン♪
ボォォォオオオオン!!
『『『グルァァァアア────???』』』
……まるで、まな板。
まな板の上で、ジャキジャキと刻まれる野菜!!
そう、野菜のごとく、包丁で細かく直線で刻むがごとくアンデッドが消し飛んでいく!!
あれほど恐ろしいアンデッド軍団が!!
ランクAAA級ダンジョン、『死霊王の寝所』のアンデッドの軍勢が!!
1000体のアンデッドがぁぁっぁああああああああ!!
もはや、
「──残り、半分ッ!」
そして、ライトは、使用を重ねるたびにレーザーの使い方に習熟していく。
そして、いくらでも撃てる。
そして、いくらでも殺せる。
そして、いくらでもレーザー!!
レーザーレーザーレーザー!
そして、そして、そしてぇぇっぇええええ!!
「そして、レェェッェェェェエエイザァァァッァアアアアア!!」
ウィィィィイイン!!
指に集まるエネルギーを感じつつも、照準をアンデッド軍団の左端にピタリと向けると、
「……発射ぁぁっぁあああああああああああ!」
──ズキューーーーーーーーーーーーーン♪
「かーーーーらーーーーーのぉぉぉぉおおおお」
──ジジジジジッッッ♪
そして、そのまま維持!!
維持!! 維持!! 維持──しかるのちに、
「──薙ぎ払えぇぇえ!」
──……ビュワンッ♪
赤光を放つレーザーの刃が、ダンジョン最奥のBOSS部屋を横に薙いだ!!
次の瞬間ッッ!
『『『グル──』』』
ボシュゥゥゥゥゥッーーーーーーーーーゥン!!
と、一瞬にしてすべてのアンデッドを焼き放ってしまう!!
まるでギロチン!!
横に薙ぐようなギロチン!!
その威力たるや……! たるや!!
たるやぁぁぁぁぁあああああああ!!
ポーン♪
ライト・ハミルトンの
ライト・ハミルトンの
ライト・ハミルトンの
ライト・ハミルトンの
「──おぁぁっぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
まさしく全てのアンデッドを、
まさしく一瞬にして消滅させるほどのぶっ飛んだ威力!! 威力!!
まさしく、威力!!
威力ぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううううあああああああああああああ!!
「ああああああああああああああああああああああグニーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーール!」
そして、ライトは止まらない!
止まってなるものか──────……。
腹から溢れる血をものともせず、
左手が動かなくとも、
自分の魔力がとっくに空になっていても、
じゃきんっッ!!
──ウィィィィイイイイイイイイン!!
魔力を垂れ流すほどに垂れ流し、自らの器に収まる魔力をすべてその一撃に叩き込む!!
少女の魔力の底知れなさに、
ライトは────……。
斜め上、天井に向けてぇぇぇええええ!
レィザァァ────
「そこにいるんだろ?」
……アグニール!!
だったらよぉ!!
「────発射ぁぁぁぁっぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
──ズッッッギューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン♪
バゥ!!
恐ろしいほどのエネルギー量!!
恐ろしい! 恐ろしいまでのエネルギー量!!
エネルギー、エネルギー、エネルギーがぁぁあ!
──ゴォォァァァアァアアンンン!!!
周囲の壁がドロドロと溶けてガラス化するほどの熱量で、すっさまじく太ッッッッッッい赤光が天井に向けて発射!!
それは、強固なはずのダンジョンの壁をあっさりと貫いて、貫いて、貫いて──外へ!!
カッ!!
──ドゴゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
そして、ダンジョンを貫通し、
地上の陽の光をこの地の底へと導いた。
「…………ぁ、ひ、かり──?」
その時には、ライトはすべての魔力を使いつくし、意識を失っていた。
正真正銘、最後の力を振り絞った復讐の一撃。
届く届かないなんて考えていない。
命中するとも思っていない。
だけど、アグニールに対する宣戦布告を高らかに宣言し──……意識を手放した。
……あの少女が、
眩しそうに、その光を眺めていることにも気が付かず────。
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