第12話「属性進化」

「うぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」


 ───おおおおおおおおおおおおホぉぉぉおーーリィィライトーーーーーー!!」


 ライトの最大魔力量を遥かに超え、過剰に供給される少女の魔力がライトを通して光魔法に変換されて放たれる!


 バチッ!

  バチッパリリッ……!


 その威力たるや、紫電が走るほどに強烈で、直撃を食らったアンデッドの一体が目を回して闇の奥へと逃げていく!


 少女の持つ魔力の総量は一体いくらなのだろうか?


 ライトのそれで常人の数倍はあると言われていたが、彼女のそれは数倍、数十倍では収まらない!!


 それをライトの熟練度に載せて放つのだ!!

 並の魔法のそれであろうはずがない!!

 そう。ないのは攻撃力だけッ!!


 だけッ!!



   ──ガカッ!!



 明らかに今までの比ではないくらいの出力で放たれるホーリーライト。


『ルロォォォオオオオオオオオオオオオオ!!』


 もはや目も開けられないほどの光の量!

 さすがのリッチもたまらない!!


 そして、ザコどもならいわんや!!


 ダンジョンの最奥は真昼を通り越して天国のごとく明かりと清浄の光に満たされる!!


『『『グワッァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!』』』


 BOSS部屋に集結しているほぼすべてアンデッドが顔を覆ってのたうち回る!


 実体のないファントム系は、その光かき消されそうなほど!!


 ──そうとも!

 ダメージ0でも、これは清浄なる光!


 闇の住人のアンデッドにとっては不快な光なのだ!


 だーかーらぁぁっぁぁあああああああああああああああ!!

「死ぃぃぃぃぃぃいいいねぇぇぇえええええええええええええええええええええ!」


 ──カッ!!


「死ね! 死ね!!」

 さっさと死ね!!

 清浄なる光を浴びてアンデッドは死ね!!


「死ねぇぇえーーーーーーーーー!!」


   カッ───!


 ダンジョン中を覆いつくさんばかりのホーリーライト!


 普通ならば、一瞬で熟練度が上がりそうなほどの強烈な一撃の連続だ!


 おかげで、

 さっきから小ウィンドウが、ガンガン! と熟練度の上昇限界を伝えている!


  ポーン♪

 

 『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』


   ポーン♪

 

  『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』


    ポーン♪

 

   『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』


     ポーン♪


「それでも……!」


 ポーン♪ ポーン♪


「それでも、」


 ポーン♪ ポーン♪ ポーン♪ ポーン♪


 それでもぉぉぉぉおおおおお!


『ルロォォぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!』

『『『ゴガぁぁぁぁああああああああああ!!』』』


「それでもぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」

 アンデッドが呻こうとも、いくら苦しんもうとも、今にもかき消えそうでも、

 何度やっても、何度やっても、何度やってもぉぉおお!

「倒せねぇぇぇぇぇっぇえええええええええええええええ!!」


 ポーンポーンポーンポーンポーン♪


「やかましぃぃわああ!!」


 実際、さっきから小ウィンドウが、ガンガン! と熟練度の上昇限界を伝えている!


 熟練度がカンストしても、マスクデータとして魔力の消費が下がったり、威力が上がっていくらしい。


 それは肌感覚でわかる。

 わかるのだが──。



  ポーン♪

 

 『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』


   ポーン♪

 

  『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』


    ポーン♪

 

   『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』



 たとえいくら魔力や魔法の威力が上がろうとも!!!

 ──そもそも、攻撃力がない!!

 光属性には攻撃力が全くないので、全く意味がない!!


 全く!!

 全く!!

 全くッッッッ!!


 全くの、意味がないのだッッ!!


「……それでも──」


 それでも────!!


 ポーン♪

 

  『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』

   『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』

    『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』

     『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』

      『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』



「それでもぉぉぉぉおおおお────!」


 ポーン♪ ポーン♪ ポーン♪


 『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』


 ──それでも、諦めねぇぇっぇえええぞぉぉぉぉぉおおおおおお!

「ぉぉぉぉおぁぁぁぁぁぁあああ──カンストはもういい!! もうわかってる!!」


 そんなクソの役にも立たない熟練度UPの情報はいらねぇっぇええええええ!!


 今欲しいのは攻撃力!!

 威力のある魔法だ!!


 だけど、そんなもんねーーーーーーーーよぉぉぉおぉおおおおおお!!



 だからって、

「むざむざと、ここでやられてたまるかぁぁぁあああああああああああ!!」


 ぁぁぁあアーーーーーグニーーーーーーール!!



「野郎に思い知らせてやるんだ!!」

 ホーーーーーーリーーーーーライトぉぉぉおおお!!


 ホーリーライト、ライトライトライトぉぉぉおおおお!!


「俺も!」

 この子も!

「テメェの肥やしじゃねーーーーーてなぁぁああ!」

 

  ピカッ─────────!!


『ロォァァァアアアアアア?!』


 超至近距離でリッチに絞って、指向性を最大にしたホーリライトをガンガンと叩き込む!!


 他の雑魚アンデッドは、範囲型のホーリライトで遠ざけて、リッチだけを集中攻撃!!


 攻撃、攻撃、攻撃、攻撃、攻撃、攻撃!

 攻撃ぃぃぃぃいいい!!!


 ポポポポポポポポポーーーーーン♪♪


『─最大値に到達カンストしました!』『─最大値に到達カンストしました!』『─最大値に到達カンストしました!』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』


「……うるッせぇぇぇぇぇええええええ!!!! もういいっつってんだろ!! その情報が何の役に立つっていうんだよぉぉぉおお」


 カンストだぁ?!


 ───知るか!!


 最大値だぁる!


 ───知るか!!


 知るか、知るか、知るか、知るか、知るか

「知るかぁぁぁぁぉぁぁぉあああああ!!!」


 もはや、ステータス画面の小ウィンドウはうっとうしいだけ!!


 あり得ないほどの高威力の魔法の連射に、属性の熟練度がガンガンとUPしていくのだ。


 もっとも、ライトにとってはクソの役にも立たない情報。


 そんなことよりも、リッチを叩き続けるほうが建設的だ!!


 たとえ威力はなくとも、アンデッドが嫌う光をこれだけ浴びせていればいずれ──。


 いずれ……。

 いずれ────!

 いず


「…………いずれどうなるってんだよぉぉぉぉぉっぉぉおおおおおおおおおおおお!」



     カッ!!



   ポーン♪

  『【光】属性の熟練度が最大値に到達カンスト──』


「やッかましぃぃぃぃぃぃいいいいい!! っつてんだろ!! カンストしたのはわかってるよぉぉぉお、【光】は黙って、ピカついてろぉぉぉぉぉぉぉおおおおお」


 どーーーーーーーーーーーーーーせ、攻撃力なんかないんだからよぉぉぉぉおおお──

「──おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおリィィライトぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおー!!」



  ズカァァァァァアア──────!!



 すさまじい光を放つライトの光魔法!!

 もはや魔法詠唱の要すらないほど、熟練度が上昇し、

 さらに少女からの魔力供給を受けて、まるで、ライトの体はただの魔力伝導体とかしたかのように、光属性の魔法をただ流すだけ!

 

 それは、ライトが人生の中で使い続けた魔力の総量を上回るほどで、

 両手をかざした先から、まるで波動のように光魔法を出し続ける────!!


 これほどの魔力の熟練度があろうか?!

 光属性をこれほど使い続けるものがあろうか!!


    ポーン♪

  『【光】属性の熟練度ががっがががカンス──カンストトトト』


 うるせぇっぇええ!

 すっこんでろぉっぉぉおおおおおお!!


  『ロォぉぉぉおおおおおおおおおおお!!?』

  「光だけでも焼き尽くしてやるぁぁっぁあ!」



 もはや、ホーリーライトはホーリライトにあらず!

 ただの、光属性という魔力そのものに、なってリッチを叩き続けるライトの魔力!


 ライトと少女の魔力そのもの!!


「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

『ロォォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 だが、リッチに与えるダメージはいまだ無きに等しい!

 それでもぉぉぉおお──────!!



 ポーンポーン♪


『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』『──【光】属性の熟練度が最大値に到達カンストしました!』



 だーーーまーーーーーーーれーーーーーーー!!



 ポポポポポポポポポーーーーーン♪♪

  

『─最大値に到達カンストしました!』『─最大値に到達カンストしました!』『─最大値に到達カンストしました!』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』



「カンストとか、そんなこと、聞いてんじゃねぇぇぇぇぇぇよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ポポポポポポポポーン♪

 ポーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンんんんん!!♪♪


 そんなことは、いいから!!


「────1ダメージでもいいから、攻撃力よこしやがれぇぇぇえええええええ!」




 うがぁぁぁっぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!



『──カンスト』『──カンスト』『──カンスト』『カンッカンカンカンカンカンkンッカカッカアケウカヮ──




『……カンストしてるっつってんだろー---がーしつけぇぇっぇええええ!!』


 

 うるッッせぇっぇぇええええええ!!

 いいから攻撃力をぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお────!!



「────よこせぇっぇぇぇえええええええええええええええええええええ!」



   ガカッ──────────!!



 その瞬間、

 誰かがステータス画面の中で誰かが叫んだ気がしたが、ライトは無我夢中のままにその声を叩き伏せて、最後の最後まで魔力を絞りつくした!!


 刹那、

『ロォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 ポーン♪♪

『─────カンス──…………ッッ……カンスカンスカンンンン────』



   ───バリィィィィィィイインン……!



「うわぁぁっ!!」


 突如、響き渡る破砕音!

 まるでステータス画面が怒り狂ったかのよう。


 だがそうではない。


 ステータス画面を突き破るようにしてあらわれたのは、

『ロォォォオオオオオオオオオオオオ!!』


 ずんっ……!


「カハッ」


 もちろん、リッチの反撃だ!!

「ば、かな……」


 ぐりり……。


 一際ライトの光魔法が輝いたその瞬間を見切ったのか、

 リッチが持ち前の膂力と魔力とで、それらを粉々に打ち破ったのだ!


 そして、勢いのまま、狙いたがわず、

 ライトの急所をとらえようと、その爪が腹に深々とめりこんで──……。


「が、ぁ……ぁ」


 かろうじて致命傷を避けるべく、左手を犠牲にして心臓への一撃をそらしたライト。


 だが、どす黒い血があふれて──徐々に、

 意識が…………。


「ちく、しょう……」


 同時に、強固にリッチを壁に叩きつけていたホーリライトの清浄の光が、空間から剥離するようにパラパラとほぐれて消えていく──……。

 そして、カンストをしつこいくらいに表示していたステータス画面も、なぜかバラバラにと砕けて落ちていく。


 それを呆然と見ながらも、


 しだいに、

  ライトの、

   意識が……。


「ま、まだだ……」


 まだ────。

 この子に、陽の光を見せてやれていない……。


 だから、



「ほ、ほーりー



 まるでスローモーションの世界。

 リッチの爪が、左手を貫き、ライトの腹に突き刺さり、徐々に徐々に内臓に達しようと動くなか。


 残る右手を突き出し、

  ゼロ距離でリッチを狙い────

   ……もはや効かないのは百も承知で、それを。


 それを────……。



 ……らい、と」



   ブブー♪


  『──【光】属性、ERROR、ERROR

   …………実績アーカイブメント解除コンセレーション



「…………ッ?!」


 そん、な……?!

 そんな……。


 そ────



  ポーン♪



  『光属性進化ランクアップ

   【光】属性から【光線】属性に、

   進化しますか............Y/N』




「…………………………は?」


 ヴァ属性ヴァージョン……進、化アップ


「──…………だとぉ??」


 薄れゆく意識の中、

 バラバラになったステータス画面が、パラパラと逆回しのように戻っていき……。





 チカチカと点滅し、ライトに選択を促していた……──。

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