第3話「ハズレ属性の日常」
ギャーギャー!
ホーホー!!
夜行性の鳥やら獣が泣くなか、ライトは真っ暗な森の中を進んでいく。
街郊外の森は、日中はキコリや猟師、薬草採取などでそこそこ人通りもあるが夜ともなれば、人っ子一人見当たらない。
たま~に小型モンスターで出るくらいで、基本的には安全な森なのだが、なにせこの暗さのなか好んで夜に出歩く者はいないのだ。
しかし、ライトは違う。
「『
自分の周りを真昼のように照らしながら、さらに進行方向を明るくするべく、木や地面に光の玉を撃ち込んで照明とする。
もちろん、明るいだけで『
それでも、多少は魔力は消費する。もっとも、光魔法の熟練度が高く魔力量だけならギルドでもトップクラスのライトなら、無駄撃ちしても全然へっちゃらだ。
しかも、光魔法Lv1程度の『
「お、あった、あった」
そうして、明るくなった森の中で、淡く輝いている薬草を探すのだ。
この薬草。数は多くはないが、夜にしか光らない「月光草」というモノで、結構なお値段で取引されている。
そのワケは、
夜にしか探せないので、いくら買い取りが高くても、照明代なんかを考えると実入りがいいとはいえない代物なのだ。
つまり、普通の冒険者は受けないクエスト。
……まさにライトのためにあるようなクエストというわけ。
ぶち、プチ!
……うむ。
「さーて、こんなもんかな~」
東の空に陽がうっすらと昇る頃になって、ようやく袋を半分ほどに貯まった。
……まぁまぁの収穫だろう。
その月光草を手に、意気揚々とギルドに戻るライトであったが、朝の街と冒険者ギルドはまだまだ動き出したばかり。
まばらに町の人や冒険者が見える程度だった。
「早起きがいるもんだな?」
夜更かしした自分を棚に上げるライト。
ちなみに、ギルドは終日営業。
早朝だろうが、夜中だろうが関係なしだ。
おそらく、ライトみたいな冒険者がいるから、時間帯がどうのと言ってられないのだろう。
なにより、宿と酒場も併設しているしね──。
カランカラーん♪
「おはようございます、メリザさん」
いつもの窓口に立つと、馴染みに受付嬢メリザさんが寝起きっぽい顔であいさつ。
「あ、お、おはようございます! ライトさん待ってましたよ!」
「…………へ?」
待つ?
なんか約束してたっけ──??
それよりもまずは換金を。
「とりあえず、クエスト完了の報告を先にしますね。えーっと、これの鑑定お願いし──」
「それどころじゃないですよ!! ニュースです、ビッグニュース!!」
いや、それどころじゃないって……失礼すぎん??
「み、みみ、見てください、聞いてください!! な、な、な、ななな、なんとー! あのライトさんに
いや、だから失礼すぎ!!
あのライトって、どのライトだよ!!
……って、
「え? い、いま、『
「だから、そう言ってますからぁ!」
…………へ??
お、俺に?
わ、わざわざ、Aランクが指名依頼?!
思わず、顔を指さすライトに、メリザもコクコクと興奮して首を振る。
そりゃそうだろう。
Aランクパーティという存在自体が珍しいものが、こんな田舎の街くんだりまでに来ただけでなく、ライトを指名依頼。
しかも、最近の冒険者なら誰でも名前を知っているほど超有名パーティからだ。
「い、いや~、何かのまちがいじゃ? だって、『銀の意志』っていえば、あの『属性』を超越した大賢者のいるところでしょう?」
ライトはDランク。
一方相手はAランクだ。
どう考えても間違いとしか思えない──。
「いえいえ、間違いじゃないですよ!! 私も間違いかと思って確認しましたもん!!」
いや。それはそれで失礼すぎん?!
「驚きましたよ、なにせあの超ビックネームからですよ?! じ、実は先日ライトさんのランク昇任を王都に送ったところでして……その実績を見たことで『銀の意志』が声をかけてきたらしんですよ」
ええ?! 昇任?!
……ダ、ダブルショック。しかも、嬉しいほうにだ。
「なんでも、高い魔力を持った冒険者のサポート要員を探していたらしいんですよ」
高い魔力…………。
「……あ、あぁー。そういうことか」
高ランクパーティなら、ギルドメンバーの名簿なんかが見れるらしい。
これはら昇任の監督もするための処置だとかなんとか。
そして、ステータスをみれるなら、おそらく、ライトの持つ潜在的な魔力と、属性カンスト間近ということに気づいたのだろう。
熟練度をあげるとこで、魔力も増大するのだ。
つまり、この指名依頼は、魔力タンクとしての役割を求められているのだろう。
噂の大賢者なら、魔力がいくらあっても足りないに違いないしな。
しかし、そのへんの魔法使いの事情を知ってか知らずか、
「ライトさんの努力が認められてきているんですよ!」
「う、うう~ん」
メリザさんの期待が重い。
だけど、ギルド経由なら冷やかしでないのは間違いないだろう。
だが、ライトはDランクなのだ。
たしかに、鍛錬は欠かさないし、
クエストがないときでも、熟練度を上げるために魔法の練習として使いまくっている。
光魔法だけでいえば、トップクラスの実力があると自負している。……光魔法だけね?
しかし、それでは魔物を倒すことができない。
だから、これまでは臨時に雇ってくれるパーティ頼りだったのだ。
……それを
「──ライトさんの実績は素晴らしいですよ。クエスト達成率、生還率ともに当ギルドトップクラスです。それに採取依頼が主ですが、ギルドへの貢献度も高いので、昇任申請は当然のことです。それをうけての、パーティ募集なんですよ。どうです? 依頼人が届き次第受けられますか?」
え、えぇー……。どうしようかな。
本来なら一も二もなく飛びつくのだろうけど、いくらなんでもAランクパーティに釣り合うとは思えない。
足手まといになるのは目に見えているし、なにより理由がちょっと怪しい気がする──。
ライトだって、初心者ではない。
「うーん…………。メリザさん、やっぱりこの依頼はキャンセ──」
「久しぶり、ライト」
悩んでいるライトのもとに、懐かしい声。
顔を上げればそこには、
「…………え? サ、サーヤ?」
そう。サーヤがいたのだ。
美しく成長した……。
あの──……幼馴染のサーヤが。
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