第16話

「「かわいい」」


 言って、レミリアと顔を見合わせる。


「なんというか、甘やかしたくなります」

「撫でてやりたい」


 だよね!と同意し合う俺とレミリア。

 父性がすっごいくすぐられる!


「まじっすか?ドラゴンっすよ?」


 ドン引きした様子のロットが言った。

 おいおい…あれがただのドラゴンけものに見えるのか?障壁をガリガリしながら首を傾げてるあの可愛い生き物が。


「魔力の質がふたりとおんなじ」

「親と子の間でよくみるかんじ」


 エラとエリが《探知サーチ》の魔法を使った結果を報告する。

 《探知サーチ》ってのは、弱点や何の属性魔法を使うかなんかの、相手のあれこれを暴く魔法。体調不良の原因とか呪いの種類の特定なんかもできる優れもんだ。


「ロイ様とレミリア様は、魔法が得意だからね…魔力の質から子供って感じるのかも…」

「ふむ…拍子抜け、とまでは行かないが」

「これは簡単に解決できそうだ!」


 全員、武器を下ろしていく。なんだかんだ言ってたロットも。


「よし!障壁を消そう!」


「それが良さそう…」


 ヘルが同意しながら、障壁を消した。障壁がなくなった瞬間、蒼いドラゴンが目を輝かせ始めた。

 あ、これやb…


『グァアアアアアア!!!』

「《肉体強化:10倍》!!」


 物凄い衝撃と、爆発音が響いた。

 打つかる寸での所で肉体強化の10倍を掛けることができて良かったぁ〜…レミリアはヘルの《転移》のお陰で無事のよう。


『ぐるる』

「おぉよしよし、落ち着けな〜」


 10メートルほどのドラゴンが顔を擦り付けて、甘えてくる。愛やつめ…

 ちらりとドラゴン越しに前を見ると、30メートルくらい後ろに下がっていた。

 レミリアが走ってやって来て、俺に抱きつく。


「ロイ様!大丈夫ですか!?」

「大丈夫だよレミリア」


 心配してくれるレミリアは女神かな?それに比べて他のやつは…護るどころか避けやがったぞ??






 俺とレミリアがドラゴンに甘えられて動けない(動かない)でいると、他の奴らが歩いてやって来た。


「いやぁ、ロイ様バケモンっすねぇ〜」

「ふぅ!ロイ様漢〜!!」

「さすがロイさま」

「すごいねロイさま」


 ロットとランス、エラにエリが舐め腐ってやがる…エラとエリに至っては半笑いだぞ。ガキがよぉ…


「聞くまでも無いですが、大丈夫ですかな?ロイ様」

「良い判断でしたぞ!!ロイ様!!」

「やりますねー。何で止められてるんですかー?」


 確かな信頼のもと心配なんてものをしていない団長ズとテッド。いい奴だよ、コイツらは。


「流石に引きますよロイ様〜」

「ぐぬぬ!負けたような気分!」


 言葉とは裏腹にクッソおもしろそうに笑ってるメルトと、謎の敗北感を勝手に感じてるテラ。いや心配しろよ。敗北感の前に心配を感じろよテラ。メルトはそう言うもんだから仕方がないとして。


「へぇ…懐かしいねぇ…」

「あ、ヘラ、ありがとう。レミリアのこと」

「ありがとうございます、ヘラ様」

「どういたしまして〜…」


 ヘラだけだよね。仕事したの。

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