第6話
「すみません……突然で…」
「いえ、大丈夫ですよ。確かに驚きましたが、それだけです」
「あ、ありがとうございます」
いい子すぎる。見た目最高性格最高の娘と対面で話し合う、かつあちらからの婚約のお願いが来てるって、もしかして今日俺死ぬ?運使い果たして。
「え、えと…」
「少し、散歩しませんか?」
「わ、わかりました」
なにか話そうにも、うまい言葉なんて出ない。だから、散歩に誘ってみた。庭には話のネタがごろごろ転がっているイメージあるし。
「わぁ…綺麗なお花…」
「母様が趣味で整えてるんです。僕も、たまに手伝うんですよ」
「そう、なんですね…」
花を愛でる様子はとても絵になっていて、まるで絵画のようだった。
「どんなお花が好きですか?」
「えっと…あまり、詳しくなくって…」
「ふむ…なら、教えられえる範囲で、お教えしましょうか?」
「あ、ありがとうございます…!」
それから、花についてで話が弾み、気が付いたら庭を周って戻ってきていた。そのころには、もうすっかり打ち解けていて、話に困ることはなかった。
それから少しして。父親ズが庭に入ってきた。
「お、私の息子はたらしの才能があるのかもしれないねぇ」
「む…悲しいものだな、娘がまるで遠くに行ったかのようだ…」
沈んでるブルーローズ公爵と、楽しそうな父様。めちゃ仲良さそうですね?
「さて、お二人が仲良くお話ししてるところ悪いけど」
「少し話をさせてもらおう」
ちょっと長く説明されたが、ようやくするとブルーローズ家と
「じゃあ、レミリアさんの案内とか、頼んだよ?ロイ」
「了解です」
婚約する予定だから、今のうちから良い仲になれよってことですね?!マカセトケ!
「何かされたらいうのだぞ?父様が懲らしめるからな」
「お父様…!」
頭を撫でられて顔を赤くして恥ずかしそうに怒ってる。
う~むかわいい。
翌日。朝早くに訓練場で今日の肉体強化の調子を確認してると、誰かが訓練場に入ってきた。
「おはようございます、レミリア様」
「あ、お、おはよう、ございます」
おずおずといった感じで近づいてくる。
「えっと、どうしました?」
「その…な、何を、しているのかな、と…」
「魔法の調子の確認をしてます。と言っても、不調も何もないんですが」
少し笑いながら答えた。
「日課のようなものです」
「そう、なんですか…凄いですね」
「そうですかね。なんだか、恥ずかしいですね」
照れて、頭をかきながら答える。
すると、レミリアは目を伏せながら、少し辛そうにした。
「その…ロイ様は、肉体強化しか、できないから…」
言いたいことが分かった。肉体強化しかできないっていうのは、落ちこぼれだ。冷遇もされるし、いじめの標的にもされる。やってて派手でもないからやる気も起きないし、どれだけやっても何をするにも不利なんだ。
それなのに、いつもやってるのは、周りから見たら変だし、すごいんだろう。でも、そんな、努力とかではないんだ。
「肉体強化が、ただただ好きなだけですよ。なにも凄くはありません。好きだから、毎朝しているし、好きだから、ずっとやれるんです。上等な理由なんてないので、そんなに褒められるものでは」
「でも!それでも…周りの方からの視線とか、評価とか、変わりないじゃないですか…!私には、とても…」
そう言って、スカートをぎゅっと握って、苦しそうに下を向いた。
なにか、気の利いた言葉なんて、俺なんかが言えるわけもない。それに、相手が思いのままを言ったんだから。
「結局、他人は他人です。たとえ、どこで何を言おうが、目の前で暴言を吐かれようが、結局『だからなんだ』ということです。価値観や考え方が同じ人なんて、普通いませんから。そんなことで悩むより、好きなことを好きなだけやったほうが、絶対楽しいじゃないですか!それに、もし、頑張りを誰にも褒めてもらえなかったら、代わりに僕が褒めしょう。僕がその頑張りを認めましょう」
笑いながらついつい、頭を撫でてしまった。
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