第5話

 『青とも』でのレミリアのシナリオの評価は高かった。ロイ君をスカッと撃退し、優しく孤独なゆるゆるのふわふわ美少女を少しずつ、少しずつ攻略していくものだ。シナリオを進める上でレベル上げは必須。敵の強さが程よいのだ。

 レミリアのキャラデザも、高評価されてるものの一つだ。透き通るような水色の髪に、雪のように白い肌、握れば折れてしまいそうな華奢な体、そして、優しげな顔つき。さらに、そんな彼女が、怒る、悲しむ、喜ぶ、楽しむ、そして頬を赤らめるというような、表情豊かな様子が人気を博したのだ。


「初めまして、ロイ・ロッシュです」


「は、はじめまして…レミリア、ブルーローズです…」


 そして俺は今、そんな人気な女の子と1V1ワンブイワンで対面していた。


(何でこうなってんだよ………肉体強化0.25倍に掛け直そ)


 少し遠くを見つめながら、どうしてこうなったのか、振り返りはじめた。


————————————————————


「ロイ様、当主様がお呼びです」


「わかった」


 相手側が来るまで自室で待てって言われたから待っていると、アリアが呼びに来た。


「こちらです」


 アリアについていくと、庭に案内された。入り口の所に父様が居る。


「やあ、ロイ。庭で待ってなさい。あとで、レミリア嬢が来るからね」


「え、父様は?」


「ブルーローズ家の当主さんと婦人さんとお話ししてくるよ」


 じゃ、頑張って。そう言って父様は走ってさっていった。


「えぇ?と、とりあえず庭に出るかぁ…」


 扉の前に立っていても何にもならないから、庭に出た。すると、そこにはさっきまでなかったオシャレな机と椅子が置いてあった。


「はぁ、座って待ってよ」


 まつ間暇だし、最近気づいた高倍率の肉体強化を掛けた時の、維持の魔力量が倍率に合わせて増えるのを、どんどん少なくしていこう。と言っても、掛けて1秒維持して解除してまた掛けて1秒維持して、の繰り返しなんだけど。

 さーて、がんばるぞー。






 1時間くらい肉体強化の練習をしてたら、扉が開く気配がした。急いで解除して、0.25倍をかけた。


「え?お父様?」


「また後でな。大丈夫だ、心配はいらん」


 あ、あちらもこっちと同じなんだ。

 扉から現れたのは、画面の向こう側で何度も見た、正直にいうと最推しの姿だった。


「えっと…」


「こちらです」


 さっと立ってスッと近づいて手を差し出す。

 つまりはエスコートだ。


「は、い」


 おずおずと、困惑が抜けきらぬままに俺の手を取った。

 は?可愛いすぎかよ。


「どうぞ」

「あ、ありがとう、ございます…」


 椅子を引いて促すと、お礼を言ってゆっくり座った。そして、俺も反対側へ行って座った。

 自然な笑みを浮かべているが、内心は大パニック中です。


(やっべぇぇぇぇぇぇ!本物かわよぉぉぉぉぉぉぉぉ!え?俺大丈夫?今キモキモフェイスなってない?は?なってるわけないだろいい加減にしろ)


 よし、落ち着け。まずは一旦落ち着くんだ…深呼吸だ深呼吸。バレないように、すってぇぇぇえ………あ、いい匂い………はいてぇぇぇぇぇ……よし落ち着いた。

 このままずっと眺めるでもいいのだが、肉体強化で遊びたいし、何より話したいので、こちらから切り出そう。多分、レミリアさんからは無理だろうから。


 で、初めに戻るってわけ。

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