第4話

 早いことで、ロイに転生してから1ヶ月が経過した。


「肉体強化0.5………よし、今日もいい感じだ。じゃあ始めるか」


 肉体強化でのデバフ、名付けて肉体弱化の状態でのトレーニングをすると、普通の状態より良い物になるんだ。だって、効率2倍だからね!


「ふぅ……はぁ……ふぅ……はぁ……いよっし、やるかぁ」


「よろしいですか?ロイ様」


「いいよ、遠慮せずに来てねルドルフ」


「では、参る!」


 一週間前からルドルフ騎士団長と手合わせをしてる。良い筋肉は実戦の時に付くものだからね。


「フッ!!」


「ぐっ!」


 ルドルフが上から木剣を思い切り振り下ろす。それを避けず、というか肉体弱化をしたままトレーニング直後にやってるから避けられず、受け止める。


「ぬあ!」


「おぉ!やりますなぁ!」


 拮抗状態のままだとこっちが確実に不利だから気合ではじいた。


「涼しい顔だ、なぁ!」


「今の状態のロイ様に負けていては騎士団長は務まりませんからな!」


 上から下へ、右下から左上へ、左から右へ、と何度も打ち込むが、すべてを軽く弾かれる。


「あ!しまっ…」


「隙ありですぞ!!!」


「ぐあ!」


 疲れで足がもたれて大きな隙ができた。もちろん見逃される筈もなく、強烈な一撃がやってきた。辛うじてガードできたけど、そのまま吹っ飛ばされた。


「あぁー、むり!もう立てない!!」


「ははは!ロイ様、強くなられましたなぁ!」


 この人、70歳くらいなのになんであんなに動けるんだろ?滅茶苦茶疑問なんだよなぁ。


「肉体強化、解除…ふぅ……よっこいしょ」


 肉体弱化を解除して、起き上がる。


「はぁ、ルドルフ強すぎるよ」


「ロイ様も充分お強いですぞ!デバフを掛け、疲労した状態でここまで私と打ち合えるのですから!」


「ははは、ありがとう」


 最近は、肉体強化にハマった副産物として、強くなることにもハマってる。


「お疲れ様です、ロイ様」

「お疲れ様です!!」


「ありがとう、アリア、マリ」


 気がついたら俺の専属メイドになってたアリアと、この前拾った6歳の少女マリにお礼を言いながら、出されたタオルを受け取った。


「ロイ様、当主様がお呼びです」

「です!」


 マリを撫でていると、アリアが伝言を伝えてくれた。


「父様が?わかった、すぐ行こうか」


 時短の為に、魔法を使って綺麗にする。と言っても、俺は使えないからアリアにしてもらったんだけどね。


 扉をノックし、声をかけようとしたら先に父様から返事が来た。


「入っていいよ」


 扉を開けると、ニコニコした爽やかイケメンな父様が座っていた。


「失礼します。父様、どうしましたか?」


「あぁ、実はね、ロイに婚約のお願いが来ていてね」


「なるほど?」


 ロイ君に婚約っていうと、思い浮かぶのはあの人だよな。ヒロインのうちの一人の、『レミリア・ブルーローズ』。ブルーローズ公爵家きっての天才と言われていて、生まれながらに氷属性魔法を扱え、父親譲りの青髪と、母親譲りの優しい顔の、ふわふわしたキャラだ。


「なんと、その相手が今日来るらしいよ」


「今日!?え、もう昼ですよ!?」


 いやいやいや!何でそんなに冷静なの!?ロッシュ家は伯爵なんだぞ?普通にやばいって!


「ね。私もかなり焦ってたけど、さっき来た手紙からは『いきなりだから準備できないだろうけど良いよ、こっちが悪いしね』って書いてあったから、諦めたよ」


 だからそんなに冷静なの?この感じ、多分どストレートにそう書いてたんだろうな。ていうか、もう諦めるしかないって感じか。


「わかりました、俺は何をしましょうか」


「多分もうすぐでいらっしゃるだろうから、急いで準備をしなさい」


「はい!」


 失礼しました、と言って部屋を出て、急いでブルーローズ家と会う準備を終わらせた。まあ訓練用の服から私服に変わっただけだけども。


 はぁ、面倒だなぁ。肉体強化しながらの面会は流石にダメかな?ダメだよねぇ…いや、肉体強化0.5倍なら、流石にいいでしょ。今のうちにかけとこ。

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