第36話 裏技
帰ると金属音が鼓膜を揺らした。
疲れたと言っていたのに何かを打っている様子である。
こっそりとアオさんと一緒に覗くとそこではスズちゃんと玲奈さんが鍛造をしていた。
二人とも真剣にやってるし、やっている事が刀製作じゃない。
「これは邪魔しちゃ悪いね」
モンスターが近寄って来ても大丈夫なように見張りをしておこう。
寧ろこれでモンスターが寄ってくるなら全員経験値に変えるだけだ。
そろそろレベルが上がると思うので来て欲しいところである。
もっと黒蛇達も使いたいしね。
◆
一つ一つの部品を丁寧に仕上げてそれを組み立てる。
組み立てはアタシにか出来ない事だ。
「はぁはぁ」
玲奈さんの技術があったからこそ出来る一から作り上げるハンドガン。
同じ見た目でも何もかもが違う様な武器。
完成だ。しかも想像以上に完成度が高い。
精密な作業で集中力を上げまくった玲奈さんは疲れ果てた様で仰向けの状態で乗っ転がる。
疲れた顔の中にはやりきった様な清々しい顔がある。
「ありがとうございます」
「あと一個残ってるでしょ? でも少し休憩。ああ、もう最高だよ。こんな気持ち、本当に何年振りなのかな。こっちもありがとうよ、君達と出会えて良かった」
そう言ってくれると嬉しい。
「アタシもユリナを使ってみたいところだけど、君のパートナーを生まれ変わらせてからじゃないと嫌だよね」
《名付けが完了しました》
「⋯⋯へ?」
《妖刀へと自我を持ち変わります》
え、なに?
何が起こっているの?
妖刀って、これ刀じゃなくて銃なんだけど?
きちんと部品も揃ってるし弾も装填したんだけど?
世界の声のアナウンスはアタシの疑問に答える事がなく、そのまま言葉を続ける。
これ程【詮索】のスキルが欲しいと思ったことはない。
言葉が続けば当然疑問も広がる。
《妖刀ユリナは貴女に対して絶対的な信頼と忠誠、愛情を持っています》
《ユリナと最大の絆、理解度、愛があります》
《ユリナは貴女の為に全力を尽くす気持ちがあります。魂が共鳴します》
《水川鈴菜おめでとう。カオス・ヴェルトで初めて武器と『使用者』と『武器』の間柄を超えて『家族』としての絆を芽生えさせました》
《その事を表彰して固有スキル【家族武器】を与えます》
な、なんだろう。
怒涛の展開すぎて頭がついて行かないんだけど。
取り敢えず一つ一つ整理しておくべきか。
「⋯⋯なんかユリナの見た目が少しだけ変わった? 玲奈さん。なんか銃なのに『妖刀』判定を受けたんですが?」
「あー。多分、途中から『これは刀をこれは刀、鍛え方が違う刀!』って思いながら打った影響なんじゃないかな?」
え、そんな事で銃が刀判定になるの?
スキル的にまずは『宝刀』としての格付けが行われ、今ので名前を与えて『妖刀』としての格付けがされたんだよね?
しかも自我があるって事はきちんと気持ちは通じているだろうし⋯⋯アナウンス的に今までの生活も含まれている感じがする。
確かにアタシは相棒達を寝る間でも傍に置いていた。
「はは。凄いよ。凄すぎるよ」
「え?」
「玲奈さん。これはシステムを利用した言わば裏技だよ! 本来の用途を外れた扱い方、裏技! 凄い。すごいよ!」
そうか。そうなのか。
スキルには他の使い方があるのかもしれない。
考えてみれば、『術』の名前が付くスキルは技術を向上させるモノが多い。
対して『生成』や『変換』は魔石を使ってのシステムとのトレード。
ならば『改造』はどうだ?
魔石を使って様々な効果を付与したり火力などを上げたり出来る。
でも、それは必ずしも魔石を必要とするのだろうか?
いやしない。
それを今、ここで証明したでは無いか。
玲奈さんのスキルで変換した鉱物を使ってユリナを改造した。
これはスキルの力を使わずに行っている。
「もしかしたら、魔石を使わなくても素材があればいくらでも改造が出来るんじゃ?」
スキルとかの付与はどうしようもないかもしれない。
でも、火力などの強化改造はスキルを使わなくても行える。
それが分かったからと言って何が出来るって言われたら難しい。
でも、この仮説が正しいなら『熟練度』は上がる。
ポイントの消費がどんどんと激しくなり、スキルのレベル上げが困難となる。
お姉ちゃんのようなスキルがあれば別だが、そうはいかない。
だからなるべく『熟練度』を上げてスキルのレベルを上げないといけない。
でも、そのように魔石を必要とするスキルは使う以外に熟練度の上げようはないし、それも乏しいと聞いた。
しかし、もしも今回の『改造』がシステム的にスキルの『改造』に入るなら、熟練度は大幅に上がる筈だ。
何故ならスキルを使用しないで改造したのだから。
しかも新たな武器として生まれ変わらせているので『生成』と言っても過言では無い。
これはアタシの認識で変わると思う。それは玲奈さんで証明されている。
「今回はただ生まれ変わらせる事だけに、強くさせる事だけに意識を向けていた。でも、次は違う。今度は『改造』と『生成』に意識を強く向けて行う。そうすれば熟練度が上がる筈だ」
「ん? どうしたの鈴菜ちゃん」
「スズって呼んでください玲奈さん。早く次をやりましょう!」
「ちょいちょい。結構神経使うんだよ? 鬼かな?」
「やらないんですか?」
「やらないって言った? もちろんやるに決まってるじゃん」
「そうじゃないとですよね!」
そして二丁の銃をアタシは作り替えた。
アタシの仮説を証明するように【銃生成】と【銃改造】のレベルは一気に六まで上がった。
これはまだ上がる予定だ。
二丁目の銃を完成させた時に流れたアナウンスで【家族武器】の補正が入ったと流れた。
きっと性能を上げてくれる効果があるのだろう。具体的な事はお姉ちゃんに聞くしかない。
「なんか、すごい事が起こってるね?」
「はい。【宝刀化】と【妖刀化】は玲奈さんの意識次第でいくらでも発動する。そしてアタシのスキルで銃の作製に関してはきっと補正が入ってます」
「楽しくなると疲れを忘れちゃうね」
「ですね!」
アタシ達はそれからもまた続ける。
そして一風変わった方法も試す事にする。
ついでに弾も作る。
ユリナ達を強化出来る様なスタイルでアタシの武器達は造り出す。
ユリノアも応援してくれている。頑張らないと。
ユリナ
レベル:1
スキル:【鈴菜家族】【忠誠心】【オートリロード】【拡張マガジン】【射速向上】【射程上昇】【貫通力上昇】【銃性変更】
ユリカ
レベル1
スキル: 【鈴菜家族】【忠誠心】【オートリロード】【拡張マガジン】【射速向上】【射程上昇】【貫通力上昇】【銃性変更】
名前:水川鈴菜
レベル:14
職P:1
能P:0
HP36/36
MP62/62
筋力:95
敏捷:105
防御:84
知力:53
器用:54
職業:軍人Lv5
第二:精霊召喚士Lv2
固有スキル:【家族武器】
技能スキル:【CQCLv7】【銃術Lv6】【格闘技Lv6】【精霊召喚Lv1】【精霊使役Lv1】【精霊魔法Lv1】【銃生成Lv6】【爆弾生成Lv1】【弾丸生成Lv2】【銃改造Lv6】【観察Lv1】【予測Lv1】【危機感知Lv1】【気配感知Lv1】【ヘッドショットLv1】【狙い撃ちLv1】【以心伝心Lv1】
耐性スキル:【精神苦痛耐性Lv6】【反動耐性Lv2】【空腹耐性Lv1】
魔法スキル:無し
強化スキル:【思考加速Lv2】【HP強化Lv1】【MP強化Lv3】【筋力強化Lv3】【敏捷強化Lv3】【防御強化Lv1】【知力強化Lv1】【器用強化Lv1】【銃攻撃強化Lv1】
【あとがき】
だああああぁあああああぁああああああああああああああああああぁぁぁ!!!!
長いぞ! 長すぎるぞ!
個人的には重要な強化パートだから頑張ってるけど、長いしくどいぞ! 流石に飽きて来たぞ!
だからPVが減るんだぞ作者! このPーーーーだからお前はPーーーでPーーーでPーーーにPーーしたんだぞ!
クッソおもんない事するなら勉強しとけや!
ここまでお付き合いしてくれている奇特な読者様方。誠に感謝しております。
それと次にスズちゃんのステータスが載る時は激的な変化をしております。
これを機に彼女は『熟練度上げ主義者』の効率厨になるので。
特別な弾丸や他の武器は決戦の時にお披露目です(Q.まだ続くの? A.はい)
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