第35話 試し斬り
『ぎがああ?』
『ぎがあ』
ゴブリン達が会話している様に徘徊していた。
その上から私は降りる。
そして黒い斬撃と白い斬撃を繰り出してゴブリン二体の首を落とした。
「凄い切れ味」
黒蛇と白蛇は良い武器だと分かる。
ゴブリンを切る時の感覚が豆腐を切るのと全く変わらない。
逆に言えばここまで簡単に倒してしまうと経験値が入手しにくくなると言う事である。
アイツとの戦いに向けて慣らしておく必要があるのでまだ扱うが。
「今ならどうだ?」
イメージするけど、アイツの鱗を斬れるビジョンが見えてこない。
「スキルも試さないとな」
そしてモンスターを探していたら気配を感知出来た。
ステ振りはもう一レベル上がったら行う予定である。
レベルマックスから進化を延期にするのは個人的に嫌だからだ。
狼のようなモンスターを発見した。
正直危機感と言うかそのようなモノは感じないので攻める。
相手の出方を伺い情報収集などのアサシン的な戦い方は私に似合わない。
私は戦士だ。
「行くよ! 【幻影刃】!」
黒蛇が黒い光を放つ。
それを狼のモンスターに向けて振るうと、黒色の斬撃が飛ばされた。
相手はその攻撃に気づき声を漏らすが、同時に斬撃が深々と相手の体を抉る。
致命傷には至らなかったが、それでもかなりのダメージを与えられた筈だ。
相手は三体。
問題ない。
「む?」
狼が吠えると周囲から影が伸びた。
なんだあれ?
《回答。おそらくシャドーウルフと言う影を操るモンスターです》
「なるほど」
一応試しに影に向かって黒蛇を振るったけど、通過するだけだった。
取り敢えず影に当たる訳にもいかないのでバックステップで距離を取りながら白蛇を掲げる。
「【幻影刀】!」
虚空に純白の光の塊で刀が出現して、それが私の思い通りに動く。
先程【幻影刃】を命中させたシャドーウルフに向かって放った。
シャドーウルフ達はそれを影で防ぐ。
「適当な瓦礫!」
足場としてアイテムボックスから瓦礫を取り出して影に沈める。
それを足場にしてシャドーウルフ達に接近する。
この辺も【立体移動】の効果範囲だ。
「【黒蛇】【白蛇】」
右手に持つ黒蛇を振るって【黒蛇】を放ち、左手に持つ白蛇を振るって【白蛇】を放つ。
黒と白の蛇はシャドーウルフの首に絡み付いて、締め付ける。
当然抵抗するが蛇達の方が少しだけ強い様子。
一体はその二体で十分。刀からは蛇の模様が消えてた。
深手を負っているシャドーウルフに向かって黒蛇を投擲した。
投げナイフのように放った刀の速度はプロが投げる野球ボール並。
手負いの奴に躱せる訳もなく頭を貫いて魔石へと変える。
同時に脳内アナウンスが流れ、最後の一体が私を襲う。
切れ味は良好だし、いまさっきから握っているにも関わらず、昔から使ってたかのようにしっくりと来る。
これが妖刀か。
「シャー!」
アオさんがシャドーウルフに絡み付いて拘束する。
糸を繋げていたので、黒蛇を引っ張って回収し、クロス斬りでトドメを刺した。
同タイミングでスキルの蛇達も倒したようだ。せっせと魔石を運んで来てくれる。
「シャー」「シャー」
「おうおう。二人ともありがとうね〜」
撫でると目を細めて舌をシュルシュルと出した。
「シャー!」
すると嫉妬したのか、アオさんが私の耳に噛み付いて来る。
当然本気ではないだろう。ま、本気で噛んでも痛みは感じないだろうけどね。
「はいはい。アオさんも守ってくれてありがとうね〜」
「どやぁ」と言わんばかりに胸を張り目を細める。
きっとその顔はドヤ顔なのだろう。アオさんの表情が最近増えた。
進化の影響かもしれない。
スキルの蛇を刀に戻す。
「にしてもサイズがアオさんよりも小さかったな」
《返答。妖刀のレベルを上げれば蛇の性能も上がる。サイズもレベル依存になっていると思います》
「なるほど。だから一メートルくらいの長さだったのか⋯⋯って事はアオさんの最大長さを超えるのは当分先かな?」
《返答。太さはすぐに超えるかもしれません》
「お、確かにそうかもね⋯⋯って詮索さん普通に会話してない?」
《否定。思念を受け取っての受け答えとなっております》
「いやいや。今までは人間に近い受け答えはしなかったでしょ。ま、なんかその方が仲間感あるし嬉しいけどさ」
《嬉しい⋯⋯》
「そうそう。嬉しい」
私達と連携出来る人は多分少ない。
ステータスとかそんなんじゃなくて、純粋な仲間意識の問題だと思う。
詮索さんは実質私のもう一つの意識なので気にする必要はないだろうけど。
それに、詮索さんがいないとアイツに勝てるかわかんないし。
「もしも詮索さんをもっと使いこなせていたらさ、あの子達は死ぬ事なかったのかな」
《回答不能》
「⋯⋯ふぅ。あの子達が笑顔で居られるように、頑張んないと」
《理解不能》
「そうかい。やっぱり詮索さんは成長してるよ。今後も期待してるぞ」
◆
お姉ちゃんが刀の試し斬りに出掛けてから数分後、ある程度休まった玲奈さんに近寄った。
あれ程の刀を短時間で造れる腕前。
「玲奈さん。まだ動けますか」
「んー動けるけど、どうしたの?」
「酷な事を言うと思うんですが、手伝って欲しいんです」
「ん?」
アタシは自分の思っている事を言った。
そして普段使っているハンドガンを二つ取り出して机に並べる。
この二つはアタシが改造に手を出して完成した初作品と二作品目だ。
一番使ってるし愛着もある。
今ではスキルによって本物以上の火力が出せる。
「⋯⋯確かにアタイのスキルは刀鍛冶じゃなくて【名工鍛治術】だけど、試した事ないよ?」
「それは同じです。改造ならともかく、一から作り替えた事はした事がありません。パーツ一つ一つを造る事も」
「ぶっつけ本番⋯⋯知識だけあってもそれを出来る確証は無いよ」
「確かにそうです。素材を無駄にするだけかもしれません。でも、やらないとダメなんです」
そうだ。
これは重要な事なんだ。
お姉ちゃんみたいに加速スキルがあるなら問題ないかもしれない。
でも、アタシには特別なスキルや力なんてない。
お姉ちゃんとの実力差は開くし、いずれ足でまといとなる。
「アタシの戦い方はこの子達に依存している部分が強いんです。この子達の火力を上げないと、今後の戦いについて行く事が出来ない」
スキルレベルを上げるにしても、普通の場合はそれも難しいのだ。
レベルが上がれば当然、上に上げる分の請求も多くなる。
熟練度の上がりにくい生成や改造に全振りしたら今度はステータスが足りない。だから出来ない。
今のままじゃ火力不足過ぎる。
「この子達を生まれ変わらせる必要があるんです。お姉ちゃんやアオさん、蘭奈ちゃん、優希くん、何よりも自分自身の為に。無理は承知の上で頼みます。無理なら断ってくれても構いません。お願いします」
アタシは深々と頭を下げた。
この提案が断られたら残された道は限りなく少なくなる。
彼女の力でこの世にはないファンタージの素材で相棒達を完全に作り替える。
改造、スキルでの改造ではなく物理的な改造。
今の限界を一気に超えるにはこの方法しか存在しない。
精密な事を鍛造で出来るかは分からない。もしかしたら出来ないかもしれない。
でも、やらないと。やらなくてはいけないんだ。
アタシがお姉ちゃんの妹である為に。今後の為に。
「試してみる価値はあるよね。君の決意受け取った。さすがに無知のアタイだけじゃ無理だからな」
「⋯⋯ッ! ありがとう、ございます。本当に、ありがとう、感謝します!」
「それはお互い様だよ。さっさと動こう」
「はい!」
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