第23話 エリートアリアント討伐
うーん。最悪のケースになって来た。
卵を犠牲にして私達を確実に仕留める作戦⋯⋯多分次の階層に今回のボスがいる。
気配がぽっかり存在しないので逆に分かってしまう。
さて、流石にこのまま進むのはダメだな。
「スズちゃん。一旦ステ振りとっても作戦会議しよっか」
「おけまる」
私のレベルは8でポイントもあまり溜まってない⋯⋯さて、何に振り分けるべきか。
ステータスを上げたいところだし、二つとも一個ずつ上げればピッタリ11無くなる。
【糸操作】を上げるのは諦めるか。
【物理攻撃耐性】も上げたいけど今回はパス。次に感知スキルも無しだ。
【熱源感知】もそろそろ上げたいけど、今回は純粋なステータスアップをしよう。
名前:水川百合
レベル:8
職P:0
能P:0
HP248/248
MP59/42
筋力:246
敏捷:231
防御:105
知力:29
器用:50
職業:重狂戦士Lv5
第二:糸使いLv4
固有スキル:【詮索】【亢進】
技能スキル:【武芸術Lv5】【糸操作Lv7】【隠密Lv1】【遠見Lv1】【暗視Lv1】【自己修繕Lv3】【気配感知Lv6】【熱源感知Lv1】【アイテムボックスLv6】【悪食Lv2】【立体移動Lv3】
耐性スキル:【物理攻撃耐性Lv2】【精神苦痛耐性Lv4】【精神攻撃耐性Lv6】【熱耐性Lv1】【ウイルス耐性Lv1】【痛覚耐性Lv3】【火耐性Lv1】【水耐性Lv1】【毒耐性Lv1】【電気耐性Lv1】【落下耐性Lv1】【反動耐性Lv1】【衝撃耐性Lv1】
魔法スキル:無し
強化スキル:【怒りLv3】【バーサークLv5】【斬攻撃強化Lv3】【攻撃力強化Lv3】【HP強化Lv2】【MP強化Lv3】【筋力強化Lv7】【敏捷強化Lv5】【防御強化Lv1】【知力強化Lv1】【器用強化Lv1】【胃酸強化Lv2】
「お姉ちゃんが脳筋になりつつあるよ」
「失敬な。戦闘スタイルを活かすステ振りだと褒めて欲しいね」
「いや。力とスピード上げて敵を倒すってそれは脳筋とさほど違いがない」
そんなツッコミを受けながら私はナイフを抜いた。
マフラーのように首にはアオさんが絡まり、スズちゃんはハンドガンを構える。
子供達はこの階に置いておく。多分、アリアントは全力で私達を狙って来ると思うから。
「そんじゃ」
「カチコミ行きましょう!」
私達は同時に鉄の壁を蹴り飛ばした。
中には数えるのも面倒な程のアリアントが存在しており、目の前の中心には一際大きなアリアントが立っていた。
体が鉄ではなく鋼である。
「あれがボスか。さて、全力で行きますよ。【バーサーク】!」
《大幅にステータスが上昇します》
《理性が失われます》
《【精神攻撃耐性】により抵抗します》
《僅かに理性が残ります》
あぁ。なんだこれ。
凄く殺したい。これがスキルの副作用って事だろう。
前のスキルよりも模様が濃くなっている気がする。
ステータス上昇効果は全ステータス20%×Lv分上がる。
二倍近くのステータス上昇が得られるのだ。
今の私はあのホブゴブリンすら余裕で超えるステータスを出せる。
後の反動なんて気にする事なんて、ない。
私とスズちゃんは同時に駆け出し、置き去りにして先に先行する。
目の前にいる蟻の顔面を蹴飛ばす⋯⋯刹那、頭が吹き飛んで魔石へと変わる。
吹き飛ばした頭は残るようだ。死ぬ前に切り飛ばしたからだろう。
ナイフなんて要らなかった。
にしてもこれがステータスの力か。
これでもまだまだ成長すると言うのだから驚きしかないね。
人外の力に興奮しながら蟻を蹂躙する。ナイフを振るえば蟻の硬い外骨格ごと切断する。
『ギヤアアアア!』
ボスが叫び、蟻が私に群がって来る。
「お姉ちゃん!」
「そらっ!」
そんな蟻よりも早く私に迫っていたスズちゃんを天井目掛けて投げ飛ばした。
回転しながら狙いを定めてアリアントを二体屠った。少し火力が上がっている。
アオさんは腕に絡みながらも蟻三体の足を掴んだ。
床に着したスズちゃんの上をアオさんが絡まった蟻三体が飛ぶ。
私の投げた蟻共はそれだけで絶命し、レベルが上昇する。
床から出て来て蟻がハサミを広げるので蹴り折る。
口にスズちゃんが銃口を突っ込んで弾丸を放って倒す。
その隙を狙って飛び着いている蟻を私が蹴りで顎を砕き、漏れ出る口内部にアオさんが噛み付いてトドメを刺す。
「と、これでアオさんが9レベルだね」
スズちゃんは私をカバーする。私がスズちゃんをカバーする。
これが私達姉妹の戦い方である。
蹂躙、そう呼ぶに相応しい光景だと私は思う。
ナイフを振るうだけでリンゴのように蟻、つまりは鉄が切断出来る。
それだけの力がステータスによって生み出され、それでも刃こぼれをさせない程の技術がスキルで身についている。
スキルのない私だったら少しだけ刃こぼれをさせている事だろう。
スズちゃんの弾丸は蟻の装甲を破るには至らないが、技術で正確に弱点を撃ち抜いている。
互いに背中を守っているので死角、つまりは隙がない。
あったとしてもそれをアオさんが埋めている。
あの半グレと違って子供達を囮にする作戦はないようだ。それともそんな事を考える余裕すらないのか。
まぁそんな事はどうでも良くて、10分後にはボスを残して蟻は全滅していた。
スズちゃんはリロードし、私はボスを眺める。レベルは2上がっている。
今はレベル10だ。
「さて、長引くと【バーサーク】の反動が辛いんで、さっさと行くよ」
「おっけ」
ボスが咆哮を上げる。
その叫びにはホブゴブリンと同じ、仲間を殺された怒りが含まれている。
今まで私達に攻撃して来なかったのは実力や戦い方を見ていたのだろう。
その考えは分かる。
相手の戦い方が分かっていると分かっていないのでは全然違う。
だけど、今の私達にそれらは意味が無い。
ステータスの力とかではなく、蟻一体に私達二人で挑んだら、対応出来ないからだ。
「せいや!」
気迫と共にスズちゃんを投げ飛ばした。スズちゃんの腕にはアオさんが巻きついている。
天井を貫いてスズちゃんを固定して天井を走りながら弾丸を放つ。
当然弱点を守る様に体を強ばらせるエリートアリアントに瞬時に肉薄する。
「遅いよ」
正面から来た私にハサミを閉じたが、今の私にはあくびが出る程に遅かった。
ナイフを横薙ぎに一閃させて体を斬り裂いた。
『ギヤアア!』
「おや?」
こいつ、ギリギリで自ら体を後ろに動かして刃を躱したな。
予想よりもナイフから感じる感触が浅かった。
私ばかりに警戒しているけど⋯⋯それはダメじゃないかな?
「はっ!」
遠心力を乗せた全力の叩きがスズちゃんから放たれる。
ちなみにその手に持っているのはアオさんであり、アオさんを振り回していた。
目が少し回っていそうだが、きちんとダメージを与えている。頑張れアオさん!
さらにバックステップで離れる際に弾丸を数発放って牽制する。
スズちゃんのバックステップに合わせて前に突き進む。
拳を固めてアッパーを放ち顔を上に向けさせ、首をスズちゃんが貫く。
糸を工夫して強度を上げた物で一本の足を捕まえ、壁に向かって進み蹴り、ボスの上を取る。
背中を利用して一気に引っ張り、その力によって相手の体が少しだけ上がる。
「これで、終わり!」
そこを狙ってスズちゃんが両手でバットのようにアオさんを持ち、薙ぎ払う。
アオさんごめんね、頑張って!
その打撃は強烈であり、バランスの崩れたボスの刃を付け根から粉砕した。鋼ゲット。
だけどトドメまでには至らない。蟻がスズちゃんに向かって進む。
「終わりはこの一撃だね!」
しかし、その攻撃を私は許さない。
相手の頭に向かって天井を蹴って加速して突き刺した。
グルンと掻き回してナイフを離すと、血が噴水のように飛び出る。
小さな魔石とそれ以外の物が転がってエリートアリアントの討伐を完了した。
《経験値を獲得しました》
《レベルが10から11に上がりました》
《一定の熟練度に達しました。スキル【以心伝心】を獲得しました》
「もう、夜か」
「だね」
ホブゴブリンに続いて上位種のモンスターを倒した私達。
場所などの大きな違いはあるが、それでも確かなる成長を感じた。
まぁ、ただ。今回は相性が良かった気もする。
だけど、勝ちは勝ちだ。大いに喜ぼう。
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