第19話 喧嘩がしたかった
スズちゃんの戦闘音が外まで聞こえて来るなぁ。
「スズちゃん暴れてるなぁ」
今は神経衰弱を行って遊んでいる最中だ。
記憶能力で子供達に負ける私ではないので、余裕で勝てる。
だけど当然勝つ事はしないで、時々取りながら困った様子を見せた時にそれとなく教えてあげる。
優希くんは元気に笑い、蘭奈ちゃんは優しく笑う特徴がある。
うーん可愛い。
「やっぱ子供って良いよね」
小学生の時はウザってずっと思っていた。
だけど、中学に上がった所から裏しかない大人よりも純粋な子供が良いって考えになって、そこから好きになったんだよなぁ。
近寄って来る大人は大抵体目当てかなんかであり、格好が悪かったから金で釣れると何回も思われていた。
時々押せば行けるとかバカも居たりして、本当に辛かった。
⋯⋯まぁ、その時は正当防衛って叫んで殴ったけどね。
私もスズちゃんも発育が良かったから、男達に好かれたんだよね。
それもあって子供がさらに好きになって、あまり大人の男に興味が無いんだよね。
極道の皆さんには感謝してもしきれない力を貰った。
そう言えば、【武芸術】となったスキルがあれば武術家の先生越えられるんじゃね?
⋯⋯いや、武術だけで考えると勝てないな。
私は飽き性だったから、浅く幅広く学んだからなぁ。だからこんなスキルなんだけど。
スキルが進化してナイフのキレとか上がっているのは確かなんだけどさ。ようやくスキル補正を感じられている。
「おい姉ちゃんら、大丈夫か?」
そうすると、どこかの生徒か分からないけど、ヤンキー風の男が三人寄って来た。
全員金属バットを所持している⋯⋯血痕が着いているのでモンスターは殺しているようだ。
「またか」
子供達が私の背中にしがみついて隠れるので、守るように前に出る。
こんな奴らには絶対に負けないので、余裕で前に出れる。
「なーにボクちゃん達」
「おいおい姉ちゃん、俺達の事を知らねぇーって事はねぇよなぁ?」
「はて? 全くご存知じゃありませんが?」
こいつらは自惚れているようだ。
この辺の事なんてあんまり知らないんだよこっちはね。
「俺らはここらを占める、武闘派、
ありゃ? 風貌的に年下だと思っていたけど年上だったか。半グレかな?
この辺で有名なヤンキー高の制服を電車内で一度見た事あるけど、こいつらは違うな。
そもそも半グレなら制服じゃないか。
「半グレ?」
「元な。姉ちゃん、俺達が守ってやるよ。⋯⋯その代わり、きちんとお礼はして貰うがな」
あーキモイキモイ。
スズちゃんが居たら一瞬で銃を抜くレベルでキモイ笑みを浮かべている。
半グレなら容赦なく攻撃出来るな。
後方二人も下卑た笑みを浮かべている。
「ただし、そのガキは置いていって貰うぞ」
「あのさー。なんでついて行く前提なの? 私はね、君らに頼る程落ちぶれてないんだよ。ガキ共、お前らはどんな風に今までシノギやってんだ?」
私の纏う気配が変わったからか、半グレ三人が後退りする。
私はグルーブを外してポッケにしまう。ポキポキ手を鳴らしながら、相手に近づく。
「私はね、自分よりも弱い相手がイキがる事に無性に腹が立つんだ⋯⋯だからさ、喧嘩しようよ。私に一回でも明確な攻撃を出来たら⋯⋯なんでもしたげる」
胸元に指を掛けて、服をパタパタする。
すると相手の鼻の下が伸びるのが分かった⋯⋯そして、戦闘者の顔になってバットを構える。
「手加減出来ねぇぜ?」
「しなくて良いよ?」
私も色々と試したい事あるし、こいつらなら問題ないだろう。
それに、この子達に悪影響だろうからね。さっさと終わらせる。
「行くゼオラ! 辞めてって言っても辞めねぇからなぁ!」
「あー、それは同じ意見」
振り下ろされるバットに向かって回転蹴りを放って、吹き飛ばした。
強く握っていたが、私の蹴りが強くて衝撃に耐えられず離したようだ。
この程度で離すとは、これが自称武闘派か。
私達の先生達は、死んでも自分の武器を絶対に離さない。
「やっぱ君ら半グレだな」
私は流れるように正拳突きを放つ。
やはりキレが上がっているようで、蹴りからの殴りの流れがスマートで素早く行えた。
鈍い衝撃音と衝撃が相手を襲い、遠くに吹き飛ばした。
その光景に残り二人の顔が青ざめて行く。
実際手加減してるけど、ステータスのお陰かすぐに終わりそうである。
暴力に罪悪感は感じない。寧ろ高揚感すら感じる。
あぁ、やっぱり私は奴の娘なんだなって、自覚してしまう。
「根性がない。性根が腐ってる。武器の持ち方、構え方が甘い。相手の動き全体に目を向けていない。⋯⋯女だからって侮っていると、すぐに殺されるぞ?」
そして私が右側の男に近づいて爪先を鋭く突き上げる。
急所にぶち当てて永遠に生殖機能を失わそうと思ったけど、このままやると殺してしまいそうなので辞める。
特別性の靴だから仕方ないね。
「ぐふ」
手加減キックを顎に放って少しだけ相手を浮かべ、そのまま蹴りを突き出す。気絶はしてないと思う。
寧ろこの程度の蹴りで気絶してたら喧嘩にもならない。
同じ距離まで吹き飛んで行く男を見て、残った一人が懐のホルダーから銃を引き抜く。
遅いな。スズちゃんなら今の一瞬で六人は撃ててる。
「な、なんで!」
「ステータスの差だね。ステータスなくてもお前の攻撃は躱せるよ。元々銃を持っている事は気づいていたしね」
ワンステップで躱すと相手が戦意喪失した。
流石に弱すぎる⋯⋯と言うか、バット捨てて銃抜くなら最初から銃使えよ。
スキルとかそこら辺の関係かな? こいつらバット使ってた方が強い気がする。
あくまでも勘だけどね。私の勘は当たると信じている。
と言うか、剣士とかそこら辺選んで刀を持っていてくれた方が嬉しかったな。
剣を使いたいよ!
「詮索さんに後で聞こうかな」
「く、クソ! 来るな! 来るな!」
別に殺さないのに、銃を乱射して来る。
悲しい事に、スズちゃんの銃の方が速い。⋯⋯あの子、一体どんな風に作ったんだろうか。
子供達に銃口が向けられないうちに終わらせないと。
そう思って近づくと、先程正拳突きで飛ばした男が苦しみながら銃を向けていた。
確実に動けないと油断していた私はすぐには反応出来なかった。
「女に、やられっぱなしでいられるか」
放たれた方向は⋯⋯優希くんの方だった。
「クソッタレが!」
ナイフを抜くのも間に合わない、アイテムボックスからの壁も間に合わない。
グローブを出すのも間に合わない。
一気に加速して射線上に入り、腕を広げる。
「クソっ!」
制服はただ血を滲ませた血なので簡単に貫かれ、脇腹を貫かれる。
鮮血が舞う⋯⋯防御パラメータ仕事しろよ。本当に。
痛みはないけど、スピードを完全に落とす事が出来なかった。
少しだけ軌道はズラせたけど、優希くんの頬を掠めた。
「⋯⋯ッ!」
私の体なら簡単にスキルで再生出来るけど、優希くんは別だ。
そして私がキレてから、気がついたら男達は三人とも地面に倒れていた。
生きている様だけど、多分モンスターに襲われたら死ぬ程に痛めつけられていた。
「喧嘩だって言ったろうに。これだから」
適当な場所に運んで捨てて、優希くんに近寄った。
痛そうに頬を抑えていた⋯⋯急いでハンカチを取り出して教えてた。
ドラッグストアで手に入れた物で消毒して、絆創膏を貼った。
はぁ、私のミスだな。本当にごめんなさい。
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