第18話 レアドロ目指して、鈴菜編
「だあああ! 結局魔石四個分しか倒せなかったあああ!」
ちなみにレアドロ無かった。
その事を嘆きながらスズちゃん達に近づいたら、ポテチを食べながらトランプをしているスズちゃん達が居る。食べているのは子供達だけ。
どこでトランプを手に入れたか不明だけど、こんな道路で良くやるモノだ。
周囲に少しだけ魔石が転がっている。
「あ、お姉ちゃん」
「うぅ。お姉ちゃん頑張ったけど、敵が全然来なかったよ」
「そっか、残念残念」
スズちゃんに抱き着いて胸に顔を埋める。うーん息苦しい。
頭をなでなでしてくれる。珍しいな。
柔らかい手で包まれるとなんか子供になった気分だ。
スズちゃんが母性に目覚めたかな?
「さて、交代だね」
「うん。行って来る」
スズちゃんはビルへと入って行くので、私は子供達に近寄る。
「何してたの?」
「ババ抜き!」
「百合お姉ちゃんも入れてくれる?」
「うん!」
「もちろん!」
あらヤダ可愛い。
良いよね子供って。こんな純粋な笑みが本当に可愛いんだから。
もしかしたらこの子達の両親が死んでいる可能性があるけど、言えないね。
さーて、ババ抜きするぞー!
ステ管理? そんなの後回しだよ。
子供達の好感度を上げる事が最優先。
ちなみにその後のババ抜きは私が全敗だ。当然わざと負けている。
接戦を演じているのでそれがバレる事がない。
ギリギリの勝負で勝った時の表情とか、もう堪らん。
ちなみにそれを実現する方法は相手の瞳に反射するカードを見ているからだ。
これらの技術は賭け事でイカサマする時の対策とかに使えたりする。
賭け事とかはスズちゃんの方が強くて、毎回負けてたんだよなぁ。
あの子イカサマが上手いんだよ。
◆
アタシがビルの中を歩いていると少しだけ違和感に気づく。
壁とかが少しだけ凹んでいるのだ。
モンスターって言うよりも人間の拳だ。
そう言えば、お姉ちゃんのグローブが少しだけ汚れていたような?
「イライラして壁に八つ当たりしたなこりゃあ」
そんな事を思いながら散策していると、【危機感知】がうっすらと反応した。
それに従い跳躍すると、地面からアリアントが顔を出して来た。
強靭なハサミがしっかりと開いている。
なんだろうか。とても欲しい。
アリアントの体は鉄らしいからあのハサミも鉄なのだろう。
欲しいけど⋯⋯入手手段が分からない。ドロップアイテムにも無いらしいし。
とりあえず倒す事にする。その為に来たのだ。
離れた場所に着地してハンドガンを抜いて放つ。
銃声の後に響くのはカンっと言う金属音である。
予想通りハンドガンでは相手の外骨格を貫く事は出来ずに弾かれている。
火力が低い様子。
「やっぱ意味ないよね」
走って離れながら弾丸を放つ。
片手で放っているけど、スキルのお陰で反動を全く感じない。
反動すら楽しむのがアタシであり、それが感じないので少しだけ寂しい感じがする。
ま、アタシはそれでも相棒を使い続けるけどね。
「と、リロード」
マガジンを切り替えて振り返ると、アリアントの数が三体になっていた。
それに背後には二体のアリアントが道を塞いでいた。
あーあれだ。お姉ちゃんの話的に数が少ないと思っていたけど、そうじゃないっぽい。
知性が高いのか、勝てない相手には挑まないスタンスなのだろう。
アタシだから勝てると踏んでここまでの数が出て来たと。
「舐められたモンだね。少なくとも、ボブゴブリンクラスじゃないと、アタシには勝てないよ! 【爆弾生成】手榴弾!」
MPを消費して手榴弾が手に握られる。使う度、興奮感がアタシを包み込む。
最高すぎる。
完全に火薬が入っている手榴弾が回復するMPだけで作れるスキル⋯⋯まじで最高。
この最高な気持ちを理解してくれる人は極道の一人でアタシに銃を教えてくれた人だけだ。
まぁ、銃握るならそれ相応の覚悟はないとダメって、良く怒られたけど。
「あの人達強いから、無事だよ、ね!」
口で栓を引っこ抜いて正面に向かって投げた。
当然警戒するアリアントだが、狙いはアリアントではなく天井だ。
刹那、爆音と共に爆裂して天井が崩れ⋯⋯無かった。
「嘘だろ! 日本は耐震性だけではなく爆破耐性にも力を入れていたのか!」
そんな訳ないよね! アリアントの改造のせいか。
厄介だな。
五匹の鉄の蟻に囲まれた。
「ひひ。お姉ちゃんならこう言うよ? 面白いってね!」
こんな世界でステータス的に超格上が来ない限り、アタシ達は全力で楽しむさ。
高く跳んで天井に足を乗せて銃口を一体のアリアントに向ける。
首目掛けて弾丸を三発放つ。
外骨格がなくて柔らかい部分であり、三つの風穴を開けて切断する。
《経験値を獲得しました》
「あまりアタシ達、水川姉妹を侮るなよ? アタシ達はどんな時だって二人で乗り切っていたんだ。お姉ちゃんに出来る事は大抵アタシも出来る!」
そのまま落下するが、壁を蹴って反対の壁に足を着けて走る。
壁を横向きに走っていると忍者の気分になる。
《一定の熟練度に達しました。【壁面移動】を獲得可能になりました》
「よいっしょ」
上に再び跳んで一体のアリアントの脚を全て貫いて行動不能にする。
床に着地するとすぐに目の前に迫っていたアリアントが人を軽くちぎるであろうハサミを開く。
きっと鉄が主食で顎も相当なモノだろう。それはワニすら平然と超える。
つまり、アタシが受けたら確実に死ぬ。
「力比べしようぜ、モンスター!」
そう言えば、お姉ちゃんが言ってた人間の山があふ場所はもうちょっと奥かな?
見てないや。そう考えると、かなり警戒している?
ちなみに攻撃はグローブの性質を利用して、手と足でハサミが閉じるを防いだ。
「なかなか強いな」
そしてアタシを喰らおうと開いている口に向かって鉛玉をプレゼントする。
すると数秒後には魔石へと変わっており、背後から二体のアリアントが迫っていた。
《経験値を獲得しました》
「はは! 楽しいね。本当は【気配感知】のレベルを上げたいけど仕方ないよね! さぁ、来い!」
《一定の熟練度に達しました。スキル【狂化】を獲得可能になりました》
《一定の熟練度に達しました。スキル【狂気】を獲得可能になりました》
一体の懐にスライディングで潜り込んですれ違いざまに首に弾丸を放つ。
大きいとこうやって潜られるから困ったもんだよね。
そのまま全身を使って跳躍し、空中で体を捻り体勢を立て直す。
経験値は獲得成らず⋯⋯ギリギリ生きてるのか。
ならば、アタシは再び跳躍して天井に足を乗せて強く蹴り回転する。
踵を先程攻撃したアリアントの頭に叩き落とす。
それが決め手となり、首が引きちぎれてアナウンスを脳内に響かせる。
残り動けるのは一体、倒していないのが一体。
しかし、回収されそうなのでトドメを刺しておく事にする。
ホルダーにハンドガンをしまって、走って脚を全て落としたアリアントに肉薄した。
その行動に動けないアリアントが悲鳴を上げる。
「ひひゃ!」
狙うは脳天。
アタシの全力の拳、受けてみろよ。
「しゃっらあ!」
全体重を乗せた拳がアリアントのアイアンヘルメットに落ちる。
金属音が鳴り響き頭が凹むのを感じた。
それだけではなく、他に骨が砕けるような音も聞こえる。奇妙だ。
口から紫色の血を吐き出し、首の方からゴキリと音が鳴る。
そして魔石へと姿を変えた。
残り一匹も対して強くはなく、倒した。
魔石は合計六個手に入ったが、レアドロは無かった。
おいこれ、結構確率低いぞ。
【あとがき】
確率、アリアントは1%、エリートアリアント10%です。
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