第14話 side:生徒会長【利用出来るならなんでも利用する】
世界が変わってしまったのはいつからだったか、少なくとも数時間前なのは確かだ。
大きな地震が起こり、クラス内は騒ぎたった。
それ以外には特になかったのだが、徐々に学内から悲鳴混じりの声が響き渡った。
最初は慌てたけど、私は何かと冷静を保つ。
生徒会長だからとかそんな理由ではないと思う。
多分、既に私は絶望と言うのを深く知っているからだと、思う。
モンスターを椅子と言う鈍器で殺した時に私の人生は変わったと思う。いや、もしかしたらこんな運命が決まっていたのかもしれない。
世界が変わってモンスターが蔓延る世界となって数時間が経過した。
現在は午後の5時だと断定される。スマホの時計はきちんと動いているのなら。
圏外だけど使える機能も存在する。そして学校には凶器が沢山ある。
先生と協力して一度生徒を全員体育館に集めた。
この世界が変わってモンスターを本能的に殺した人はきっと理解しているだろう。
このよく分からない現象⋯⋯二次元好きの人曰くステータスプレートと言う奴を。
だけど、それにはモンスターを殺す必要があり、それが出来てない人は普通の人間。
その事に気づく前に生徒や先生は数人死んでいる。
マイクは動かない。ならば私の声を聞かせるしかない。
今この世界を生き残るなら私だけの力では無理だ。
ここにいる体力の生徒と教師、こいつら全員利用しないといけない。
「皆さん! 既にご存知の通り今、日本には化け物達が蔓延っています」
最大限の声で体育館に響き渡る声を出す。
しかし、私の声に耳を傾ける事無く友達同士で雑談したり、今後の事を考える者もいる。
中には現実を見れておらず「チート能力は〜」とか言っている人も居る。
「ーーふぅ。聞けぇぇえええ!」
そうやって叫んだ。
私は普段冷静沈着の生徒会長としてやって来た。
両親が殺人鬼に目の前で殺された日から成る可く感情は殺して来た。
そうじゃないと生きれないから。だからあの水川姉妹が嫌いだった。
「みなの知っての通り、現在世界にはモンスターのような化け物が蔓延っている! 奴らはなんの躊躇いもなく我ら人間も殺す! それでモンスターを殺した人達もこの中にいるだろう。私もその一人です! 同類は分かる筈だ。モンスターを殺したらこの世界で生き残れる力が手に入ると。脳内に聞こえた筈だ。ステータスと!」
私は右手を掲げてスキルを唱える。
「【召喚】」
右手に光が収束して、雀の形を形成する。
私の職業は召喚魔法士である。レベルが低いせいか雀しかまだ召喚出来ないけど。
「見ての通り、私は今ありえない現象を発動させた! それが今の力だ! これはモンスターを殺す事によって手に入る! 奴らは我々を殺す! ならば我々も奴らを殺す! 生き残りたいなら戦え! 戦えない者は死あるのみだ! ⋯⋯無理強いするつもりはない。協力してくれとは頼む。この場で皆で生きて戦ってくれる者は、手を挙げてくれ!」
最初に手を挙げたのは校長先生である。その次に教師陣。
大人が手を挙げた事によって賛同を示す我の低い低俗な生徒達。
そして人間の集団意識は徐々に刺激されて挙がる手は増える。
何よりもステータスを獲得した者は私の意見に賛同している。
目立つあの銀髪姉妹が居ない事に違和感を感じる。
あの子達は既にこの事を知って学校を抜け出した可能性が高い。
あの家族は狂人だらけだからな。
「ありがとう。まずはステータスを持たない者に優先的にモンスターと戦って貰う! ステータスを獲得した者はその手伝いをして貰いたい! 皆でこの世界を生きようではないか!」
『おおおおおおおお!』
現在はその日の夜10時である。
さすがに劇的に変わった世界のせいで眠れる者なんていなかった。
私は現在三匹同時に召喚出来、雀とハムスター、そして子猫が召喚出来る。
ステータスによってどんな人でもある程度の動きが出来るが、流石に素の力が違う。
なので運動部は戦闘職、文化部は生産職に就かせている。
教師の一人がバカで勝手に教官と言う職業に就いた。
だけどそれは案外使える職業であり、その人のスキルで『教育』を受けると、教育内容でパラメータが上昇するのだ。
さらにスキルの熟練度の上がるスピードも変わる。
これらの情報は学校でもオタクと卑下された人達が頑張って紙に書いた情報と照らし合わせている。
二次元のような世界になってしまった事を受け入れるみたいで良い気分はしない。
生産職はその職業にあった事をしたらレベルが上がるのでずっと学内だ。
いずれ食料も自給自足が可能になる。
スキルで生み出された肥料などは特別な効果で成長がとても速いのだ。
武器や道具もいずれ生産出来る。
そして戦闘職の方は訓練班、物資調達班、レベリング班に別れてる。
私は召喚した動物が少しだけ戦えばレベルが上がるのでずっと学内に居る。
裏方で仕事をしているせいか【速筆】【状況分析】【状況判断】【リーダーシップ】と言うスキルが手に入っている。
不良などの唯我独尊の強い人達が一番厄介だった。
言う事を聞かない利用出来ないクズ共。だけど、ステータスを獲得していなかったので、ステータスを獲得した人達にボコして貰った。
死ぬギリギリまでボコして吊し上げ、見せしめに使ってプライドをズタボロにする。
すると大人しくなったので文句はない。
今は全生徒がステータスを獲得して、一致団結をしている。
だが、食料不足などの観点でいずれ暴動が起こるだろう。
力で抑える事だけを視野に入れているといずれ寝首を狙われる。
水川姉妹の居場所は判明したのが唯一の救いか。
あの子達は一応借りは返してくれると思うので、ピンチになったら呼ぶ事にする。
まずはレベルを上げながら物資を潤わせて学校を要塞化する。
その為の罠師や建築家と言った職業も用意しているのだ。
「不良がもっと反抗してくれたら良いのに」
その方が集団意識に働きやすい。
誰も嫌いな奴らが壊されても文句は言わない。むしろああは成りたくないと思わせる事が出来る。
私は死にたくない。復讐はあの二人がやってくれる。
「なんだって利用してやる。生きるためなら」
明日からもきちんとサイクルを考えて、そしてどこをどのくらい探索するかも考える。
情報は逐一まとめる。
そんな事を考えているとドアがノックされた。
「はい」
「へへ。来たよ」
来たのは校長先生だ。
教師を動かすには彼の力がかなり重要だったりする。
こんな世界に成る前から関係は持っていた。いずれ利用出来ると思っていたから。
脅しに使うのも良いし金を得るにも良い。
まぁ、今はそれ以外での利用方法が出来たのだが。
それから一時間、私はジジイの相手をした。
こんな世界になる前から続けていたせいか【避妊】と言うスキルがあり、レベルが6にもなっていた。
嬉しいような悲しいような。
まぁ良い。利用出来るモノは利用するまで。たとえ自分の体でも。
「これからもよろしくお願いしますね」
「勿論だよ。君が裏切らない限りね」
そして最後に口にキスをしてえろ猿は去って行く。
吐きたくなるのを必死に我慢して下着を着る。
普段なら10分で終わるのに⋯⋯ステータスの影響かとても長かった。
お陰様で気持ち悪さがいつもよりも増している。
「会長」
「奈々」
奈々は私の彼女だ。
職業は暗殺者と言う凄そうなモノで気配を遮断する力がある。
なので学内の情報を密かに集めて貰っている。
「来て」
「はい」
私の言葉に奈々は静かに従って近寄って来る。
そのまま抱き寄せて唇を重ねて舌を絡ませる。
口直しである。
「奈々、あの猿、どんな風に殺したら絶望すると思う?」
「分かりません。でも、会長が望むなら奈々はなんだってします」
「嬉しいわ。二人きりの時は会長じゃなくて名前で呼んでね。寂しいから」
「ッ! はい!」
問題は沢山ある。
一つ一つ解決して行く必要があるけど、まずは私がこの学校のトップだと認識させる必要がある。
利用されるのではなく、利用する立場になる為に。
奈々、あなたもせいぜい頑張ってね。利用価値を私に示し続けてね。
大好きよ。今はね。
【あとがき】
次回は不良グループの話です。
応援よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます