第5話 本格的戦闘、始動する

 新たに【狂気】【熱耐性】【ウイルス耐性】を獲得出来るようになっていた。

 私達は一旦物陰に隠れてステータスの整理を行っている。


「やっぱり一レベルの上がり幅の違いが」


「亢進パナイねっ!」


 スズちゃんにドヤ顔したら睨まれた。


《狂戦士のレベルが一定に達しました。スキル【恐怖耐性】を生成します》


《スキル【恐怖耐性】がスキル【精神苦痛耐性】に統合されました》


 精神苦痛耐性は恐怖以外にもストレスなどにも適応されるらしい。

 かなり優秀なスキルのようだ。


 名前:水川百合

 レベル:2

 職P:1

 能P:0

 HP75/75

 MP9/9

 筋力:78

 敏捷:78

 防御:10

 知力:11

 器用:10

 職業:狂戦士Lv6

 固有スキル:【詮索】【亢進】

 技能スキル:【武芸Lv4】【隠密Lv1】【遠見Lv1】【暗視Lv1】【自己再生Lv4】【気配感知Lv1】【熱源感知Lv1】【アイテムボックスLv5】

 耐性スキル:【打撃耐性Lv3】【斬撃耐性Lv1】【精神苦痛耐性Lv4】【精神攻撃耐性Lv3】【熱耐性Lv1】【ウイルス耐性Lv1】【痛覚耐性Lv2】【火耐性Lv1】【水耐性Lv1】【毒耐性Lv1】【電気耐性Lv1】【落下耐性Lv1】

 魔法スキル:無し

 強化スキル:【怒りLv3】【狂化Lv4】【HP強化Lv1】【MP強化Lv1】【筋力強化Lv2】【敏捷強化Lv2】【防御強化Lv1】【知力強化Lv1】【器用強化Lv1】


 これでアイテムボックスの出し入れの範囲は5メートル、そして五秒で取り出せるようになった。


「お姉ちゃん耐性寄り過ぎない? なんのための隠密?」


「初期スキルはなるべく手に入れておこうかと思って。現状獲得は1ポイントだけで良いしさ。それに精神攻撃耐性は狂化のデメリットを相殺出来るらしいからね」


 確かに感知スキルは上げておく方が良いかもしれない。

 ま、今はこれで良いだろう。

 そろそろ職業レベルが10に行きそうである。


「お姉ちゃん、多分ポイントの使い方下手な部類だと思うよ」


「そうかな?」


「もっと技能系上げるでしょ。お姉ちゃんガンガン行こぜなんだから。それにさ、ガンガン飛ばしてインフレして行くといずれ足元すくわれる可能性があるよ」


 スズちゃんの心優しい忠告が胸に染みる。

 確かに、弱相手を数人倒して天狗になっていると痛い目を見る。

 その事は昔ながらに知っている。


「詮索さん。精神苦痛耐性を最初から持っている私達って結構凄い?」


 そもそもそのスキルの下位互換が幾つからあるなら相当なスキルだと思う。

 ちょっと気になったので聞いてみた。


《その認識で正しいかと思います》


 そうらしい。

 そろそろコンビニも近いので向かう事にした。

 スズちゃんの弾丸はMPを使って生成する事が出来る。

 魔石の数的に銃を生成する事も改造も出来ない。


「レベル2だとアタシの相棒よりも素の性能が低い物しか造れないから、主に改造かな。マガジン拡張とかやりたいな。へへ」


「⋯⋯」


 新たな性癖に目覚めそうな妹を無視して私はゆっくりとコンビニを覗く。

 私には【遠見】と言うスキルがあるので、それを発動する。

 MPが1消費された感覚が体を襲う。


「中にはゴブリンが四体。一体だけ体が赤い。それと大きなゴブリンが一体。詮索さん」


《回答。赤いゴブリンはレッドゴブリンと言うゴブリンの亜種です。素のステータスが高いのは勿論、知性が高いです》


《回答。大きなゴブリンと称されたモンスターはボブゴブリン。ゴブリンの進化系で群れのボスだと思われます》


 もしも暗殺者とかだとゆっくりと近づいたりして一体一体減らすのだろう。

 私も【隠密】のレベルを上げていたら出来たのかもしれない。


《最初の職業で密偵者を選べば可能な戦闘方法です》


「悪いね。元々それは選ぶつもりは無いよ」


「どうするお姉ちゃん?」


 食料は欲しい。

 お菓子とか飲み物とかもある。

 物資を潤うあのコンビニはどうしても攻めたいのが本音だ。

 しかし、大きめのゴブリンが居るのが危険な気がする。

 戦ってみたいけどそれで死にそうになるのはまた違うのだ。


「危機感知はどう?」


「レベルが低いからかかなり薄いよ」


 つまりは感じてるって事だよね。

 さて、正直攻撃は受けたくないので何かないものか⋯⋯あれならどうだろうか?


 私達は行動が速くて普通の人達よりも多分この世界を先行して攻略している。

 だけど、あの地震が起きてから既に数時間は経過しているために少しの人が行動をしているだろう。

 避難する者、引きこもる者、それぞれ生き残るために行動を起こす筈だ。

 そして私達は戦ってレベルを上げ、最大の目標を達成するために行動をする。


 この世は無法地帯となる。

 モンスターが蔓延る世界で誰が法を遵守すると言うのか。

 だからこそ、私はこのような事をしてもなんのも思わない。いや、ちょっとワクワクしている。


「廃車⋯⋯ね」


 アイテムボックスに入れた内容を確認する。ステータスから【アイテムボックス】をクリックすると確認画面が開く。

 モンスターなどによって壊れた物は収納出来たが、まだ綺麗な車は出来なかった。

 使用者が明確に決まっているかららしい。


「車なんてどうするの?」


「勿論これを使うんだよ。その前に武装は完璧にしようか」


 警棒は使いにくいかな。

 もっと殺傷能力の高いバールとナイフをメインに使う。

 バールを片手に持って、予備として左太ももに装備。

 ナイフは右太ももだ。

 スズちゃんは二丁拳銃のスタイルを取り出した。


「アオさんのスキルも概ね把握している。準備は良い筈だ」


「シャー!」


 元々が二メートルくらいのアオさんは三メートルくらいに伸びる。

 勿論元のサイズにもなれる。

 任意で牙に毒を宿したり、毒を吐いたり出来る。魔石を食らった影響だと断定。

 詮索さん曰く、ゴブリンとの戦いで【締め付け】と言うスキルを得ている可能性が高いとの事。


 締め付ける行動に補正がかかるらしい。

 アオさんは基本的に私の体に巻き付いている。

 グローブはかなりの高級品で刀の攻撃を弾けるくらいの性能はある。


「なんか楽しくなって来た」


「お姉ちゃんやばいね」


「顔が笑ってるスズちゃんに言われたくないぞー」


 バールを回転させて構え直し、私は手頃なコンクリートブロックを手に持った。

 重さは全く感じない。


「これが私の先制攻撃だ!」


 左手で本気のストレートを放った。


《熟練度が一定に達しました。スキル【投擲】が獲得可能になりました》


 それは綺麗な直線を描いてゴブリン一体の頭にクリーンヒットした。

 その衝撃は簡単にゴブリンを破壊したようで、魔石が転がり脳内アナウンスが流れる。

 レベルが上がった。


「これでステータスアップだね! スズちゃん」


「分かってるよ!」


 そのまま外れる事の無い弾丸でレッドゴブリンとボブゴブリン以外の通常ゴブリンを殲滅した。

 その二体は知性が高いようでレジの物陰に隠れた。

 スズちゃんはリロードしているので、銃撃は収まる。


「わざわざ球残ってるのに入れる必要あるの?」


「念の為にね。二刀流だとマガジンの交換がしにくいし。出てこないでしょ?」


「確かに」


 既に私達の存在を認識した二体はスズちゃんの攻撃に警戒を示していた。

 だが、攻撃が来ないと分かったらコンビニに停めてあった廃車の陰へと移動する。


「そういや。あの赤い液体って店員とか客の血かな」


「それ今更言う? 私は見えないから別に良いけどさ。ちょっと吐き気がするな〜」


「それなー」


「嘘つき」


「お互い様」


 まだこちらを警戒している二体。

 そして、同時に廃車から飛び出てこちらに迫って来る。


「さて、全力の戦闘じゃ!」


「行くよお姉ちゃん!」


 私達も正々堂々と正面から走って二体に向かって進む。

 ただ、ホブゴブリン相手でタイマンは出来ないのできちんと工夫はする。

 狂戦士として私は戦うよ。

 不意打ち? 暗殺? クソ喰らえだ!


「楽しくなって来たなぁ!」







◆◆◆◆

注意

彼女達は人間の死体に慣れている訳ではありません。

血に慣れているだけです。小さい頃に野生動物の死骸を見ていたからです!

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