第3話 私達、ちょー仲良し姉妹ですぅ!

 学校を脱走後、普段とは違う風景を楽しみながら走っている。


「道路突き破って木が伸びてるよお姉ちゃん!」


「そだねー」


 私は知っているので棒読みで返事をしてしまった。

 目をキラキラ輝かせているスズちゃんを見ていると自分の興奮は冷めて行く。

 行先はとりあえずで物資調達としてコンビニに向かっている。

 本当は大きなショッピングモールに行きたいのだが、詮索さんがそう言う大きな所にはネームドが滞在している危険性があるからオススメ出来ないって言うので止めた。


 コンクリートブロックとか、使えそうな物でアイテムボックスに入る物は入れて行く。


 元気モリモリのネームドは今の私では逆立ちしても勝てないらしいので。

 と、目の前に小学生くらいの緑色の肌を持ったモンスター発見。

 とりまアイテムボックスからナイフを取り出す事にする。

 私が普段装備しているナイフは普通に殺傷能力が高いですよはい。


「うっしゃ行くべ!」


「ちょい待ってお姉ちゃん!」


「なんですかい!」


「お姉ちゃんの話的にステータス必要でしょ? だから倒さないと。なのでアタシに任せてちょうだいな」


 そう言ってスズちゃんはポッケから改造ハンドガンを取り出す。

 彼女は昔から手先が器用でこのようなヤバめのをやっている。

 あ、冗談抜きでガチでやばい。空き缶なら簡単に貫通する。

 警察にバレたら退学案件だねっ! 私もだけど。


「それじゃ、撃ちます!」


 停止して下半身の重心をしっかり持ち、エイムを合わせて引き金を引いた。

 躊躇いなんてモノは当然存在しない無慈悲な弾丸。

 モンスターは人間を襲うと知っているからである。殺られ前に殺れ、常識の中の常識だ。

 自分の身は自分で守るべし。

 バンっと言う乾いた音が響いて詮索さん曰くゴブリンと言うモンスターの頭を貫通した。

 そして三発入れて、ゴブリンは小石サイズの魔石へと変わる。


「ヘッドショット!」


「いやー流石は毎日練習しているだけはあるね〜」


「⋯⋯きちんとこれってモンスターにも通用するんだね。メリケンサック借りて殴る必要があるかと思ってたよ」


「流石に文明の力は通用しないとね」


 私は浅く広く武芸を習っていたけど、彼女は武術だけだ。

 その点だけを見れば私よりも上だし、銃の扱いも上手い。

 CQC──近接戦闘──が彼女の長所だ。

 実際本性を知っている極道の皆さんから『危険人物』と言われる程の腕前である。


「私達の生活って冷静に考えるとやばいかもね」


 嬉々として極道の人達と関わりあいを持って、そのような腕を磨いた。

 だけど彼らは私達をその道には決して入れようとはせず、ただの身を守る術として教えてくれた。

 お世話になった人達なので、本当に心配だ。


「お、これが脳内アナウンスか。スキルパックってのを貰ったよ」


「なんそれ」


《回答、スキルパックと言うのは⋯⋯》


「なんか初めてカオス・ヴェルトで自分で造った銃で倒したって言う条件達成で、スキルパック『銃関連』ってのを貰ったよ」


《⋯⋯》


 な、なんだろうか。

 背後から、と言うか脳内から凄い圧を感じる。

 これは詮索さんがキレているのではないのだろうか。


《スキルに感情は存在しません。故に貴女が感じているそれは気のせいです》


「あ、そうなの?」


 なら気にする事はないな。

 そう言えば、アオさんはステータスを持っているのだろうか?

 そんな事を考えて太ももの方を見下げるが、アオさんは止まっているだけだった。

 まぁ問題ないだろう。アオさんに戦わせたいとは思えないし。


「そらじゃ、移動続けよっか」


「ステ確認するからおんぶ」


「はいはい」


 私の背中にジャンピングダイブをして、私は支える。

 ステータスのお陰か、いつもなら前方に力が来て倒れそうになるのだが、今回はそう言うのもなかった。

 マッスルマッスル。

 柔らかい胸の感触がしっかりと残っているので問題ないね。


《それは変⋯⋯》


「女性の嗜みだよ詮索さん。よーく覚えておいて」


「お姉ちゃん変な事考えてないよね?」


「ナイデスヨ」


 と、冗談さておき移動を再開する。

 アスファルトがボロボロなので走りにくいよ。

 これは戦闘中にも足を取られそうだな。


「結構スキルあるね」


 そして彼女は職業を軍人にしたらしい。

 銃士もあったようだが、詮索さんの意見を聞いて軍人にした。

 銃士は本当に銃だけで戦うが軍人は格闘技も使う。

 つまり、本来彼女が伸ばしていた力をさらに上げるには銃士よりも軍人の方が良いからだ。


 そしてステータスはこうなった。


 名前:水川鈴菜

 レベル:1

 職P:0

 能P:0

 HP5/5

 MP1/1

 筋力:8

 敏捷:13

 防御:7

 知力:2

 器用:3

 職業:軍人Lv1

 技能スキル:【CQCLv6】【銃術Lv5】【格闘技Lv5】【銃生成Lv2】【爆弾生成Lv1】【弾丸生成Lv2】【銃改造Lv2】【危機感知Lv1】

 耐性スキル:【精神苦痛耐性Lv6】【反動耐性Lv2】

 魔法スキル:無し

 強化スキル:【思考加速Lv1】【敏捷強化Lv1】


 スキルの関係上、スキル量もレベルも私の方が上である。

 初期の職Pは1、能Pは2だからだ。

 姉としての威厳を最高の形で守れて良かったよ。

 威厳は耐性スキルにも現れている。


「【銃生成】はレベル上げればスナイパーとかも作れるらしいよ。改造の方は能力を付け足したりできるみたい」


「そうだね。魔石とかが必要だってさ。アタシの相棒をこのまま使えるって最高だよ」


 蕩けた表情をしてらっしゃる。

 確かに、ずっと同じハンドガンを使っているような気がする。

 改造すれば最前線でも使えるだろう。

 それに彼女は二刀流としても使える。そう、普段装備で銃を二つ装備している。

 こんなJK世界を探しても数えられる程しか存在しないだろう。


「マジパネェ」


「あ、これ」


「およ?」


 投げ渡された物を受け取る。

 黒色のグローブである。ゴツゴツが着いている。

 フルネームは分からないが、スズちゃんはこう言うの大好物だ。


「素手で戦うよりかは良いでしょ」


「学生でここまで用意周到な人は居ないだろうね〜」


 一緒に隣を走っているが、敏捷の関係上私は手加減している。

 目指すはコンビニだが、きちんと順番は決めている。


「スズちゃん最終確認ね」


「うん。分かってるよ」


「まずは資材調達と情報収集」


「詮索使えば良いじゃん」


「詮索さんは本当に細かく言って来て面倒なんだよ。逆に簡潔に聞いたら情報収集にならないじゃん?」


「お姉ちゃん⋯⋯宝の持ち腐れって言葉知ってる?」


《水川鈴菜に激しく賛同します。自分を使えば望む情報を簡単に最速で得られると言うのにわざわざ小言が面倒だからと言う⋯⋯》


「あーあー!」


 そう言うところが面倒臭いんだよ!

 近くに【気配感知】でゴブリンの気配を感知出来たので向かう事にした。


「そして強くなりながら」


「アタシ達の家に行って残ってる武器を回収した後。おじちゃん達の所に行って安否の確認」


 おじちゃんは極道の組長だ。

 私達の家もこの人達が用意してくれたマンションの一部屋だ。

 そこには様々な武器がある。私達が普段持ち運び出来ない物だ。

 中には当然、スズちゃんお手製の極道の人達に回収されてしまいそうな銃の数々。

 私が趣味で集めた刀とか。


「⋯⋯」


「お姉ちゃん?」


 そこで気づいた。

 私は自分で鍛治をした事がある。

 刀やナイフ⋯⋯私が持っているナイフも自分で造ったのだ。

 なぜにスキルになってない?


《ある程度の練度に達してないからだと思われます》


「こんちくしょう!」


「お姉ちゃん!」


 地面に殴った。

 悔しかった。

 この音で近くにいたゴブリンの三匹がこちらに迫って来てしまう。


「最後に覚えているよね?」


「うん。刑務所に行く。当然、レベルを上げて」


「あぁ。あの野郎も強くなってるだろうからね」


 近さ的に私達の家、そして極道組織、最後に目的地の刑務所だ。

 私達の最終目標。

 この無法地帯だからこそできる行為。


「「あの父親クズをぶっ殺す!」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る