第24話 新春

 電車の警鐘が響く中、その少女はこの東京の地を踏んだ。

 胸元まで伸びた真っ黒な髪を前後で分けて下ろしたロングストレート。

 切れ長の目の目尻が凛々しく携わり、長いまつ毛は淑やかに天へと反り返る。

 今では冷却された真紅の瞳は、鮮血を思わせるほどに不気味だ。

 整った目鼻立ちに、唇は紅を引かずとも瑞々しい。

 精緻な肌は雪のように白く、丘陵のように曲線的な身体は、その隅々に至るまでが鮮麗。

 均整のとれた抜群の風采は実に婉麗だ。

 特に、大きく実った二つの巨峰は、殿方達の目を惹くには充分すぎるほど立派だった。

 スリーサイズは上から、九十三・六十・九十一と言ったところか——。

 ——おっと、詳細な人物紹介をしている間に、もう目的地へと着いてしまったようだ。

「……福寿荘ふくじゅそう?」

 外観は立派な日本家屋だ。

 二階建てのようで、此処に複数人もの学生が暮らしているらしい。

 呼び鈴を鳴らすと、何やら快活な声を上げて差し迫る少女の気配が——。

「はいは〜いっ! いま開けま〜すっ!」

 開かれる横開きの扉。

 立ちはだかったのは、甚だしいまでに濃淡鮮やかな真紅を宿した女の子だった。

「——わぁ〜っ! 貴女が立花陽依たちばなひよりちゃん……⁈ 写真で見るよりずっと綺麗だねっ!」

 初対面早々、明依の手を握って顔を寄せてくる少女。

 何故だか、その極めて真っ赤な彼女の美髪からは、不思議と彼岸花を連想した。

 架空の大輪が脳裏を過ぎり、思わず呆気に取られていると、目前の少女は切り替え良く立ち直る。

「あたし、花宮はなみや 友和ゆうな! これからよろしくねっ! 陽依ちゃん!」





                                    おしまい。

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太極の神子 ~最強だった三貴子~ 無銘 @yakuma1129

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