ボム

「暑い、、、暑すぎるぜ」

寝ころびたい欲求に耐えながらゴミ一つ落とす事を許されないような奇麗に整備された公園のベンチに座り額に汗する俺。脱力しながらスマホを操作する。


ホームレス対策なのか公園内事務所に常駐している警備員が常に巡回していた。寝転がっていればすぐに声を掛けられるのだ。


スマホゲーの隆盛にノー!を突き付ける俺だが皮肉にもそのスマホが命綱になっていた。SNSや動画の作成やそのアップロードもとりあえずはこれでなんとか出来るからだ。

念願のテレビも手に入れた。4KでこそないがフルHDの32インチ。とりあえず据え置きゲームをプレイするには十分なスペックだろう。


メシ、寝る、バイト、風呂、ゲーム、委員会活動。

俺はこの6つのタスクに集中して日々行動している。

いわゆる無駄な時間、暇な時間を出来るだけ作らないように心がけているのさ。

余った時間?あるけど全て委員会活動に捧げている。


ブログ、ツイッターなどを駆使して据え置きゲーム関連についての投稿を辛抱強く続けているんだ

。するとその理念に共感したのか、何人かの据え置きゲーム好きたちが俺にコメントを返してくるようになった。


少しずつ、少しずつではあるがブログの閲覧者、動画チャンネルの登録者、ツイッターのフォロワーが伸び始めていた。

遂にこちらの熱意が通じたのか?テンションが徐々に上がっていくのを感じる委員会総帥。


ネットサーフィンは中毒性が高い。わかっちゃいるけどやめられない。

今日も今日とてインターネットという魔界を徘徊し続けている俺。勿論エロ関係が多いのだが、、、、


これではいかん!と気を取り直し家庭用ゲーム機について詳しく調べる事にした。現状持っている知識量は十分とは言えない。

仮にも据え置きゲーム推進委員会を率いる(一人だが)者としてゲーム情弱者ではあってならないのだ。


色々なゲーム関連のサイトを尋ねあるき、記載されているリンクをたどりまくっていると、しばらくしてとある怪しげなサイトに辿り着いた。


"電脳系解放教団"

いわゆる電脳宗教団体の一種だろうか?オンラインサロンではなさそうだ。

掲示板など他者とコミュニケーションを取る機能は一切実装されていなかった。

ゲームと宗教?かみ合わせが良くなさそうだが、、、何か関係があるのか?

訝しんだ俺は早速トップページにある文言を読んでみる。


”脳ガ

人の肉たいを支配し手いる

魂でハない

真に人間としTE

 活きる為 には脳から肉体ヲ切り離

さなければならNAI

  その為にはあるモ が必要だ

ランドライン


急遽くの。げー

ム魔シン”


意味ありげで非常に謎めいた文章はそこで終わっていた。

おかしな文体は意図的なものだろうか?それともただの誤植か?

もしかすると日本人ではないアジア人が書いたのかもしれないな。


宗教団体のホームページは怪しさを排除する為か白を基調としたものが多い。

この電脳系解放教団と名乗る教団?も御多分に漏れず同じであった。

だが他の宗教系サイトとは違う、なにかしら異様なものを感じる。

アングラなサイトとは一線を画しているような気がしたのだ。


ランドラインとは何だ?究極のゲームマシン?

その割には今まで聞いた事がない。

確かに彼ら?の言っている事はわからなくもない。

俺自身も脳の欲求と肉体の欲求に相違がある事は日々感じていたからだ。


例えば甘い物。お腹が一杯でも甘い物は食べたくなる。

特に女子が好む格言”甘いものは別腹”。これは真実だ。

脳は糖分をエネルギー源としている。その機能に着目したお菓子メーカーは脳が喜ぶ仕様でスイーツを提供する。


そうなると腸が

「もう結構です!」

と言っているにも関わらず脳が

「いいやもっとくれ!だって美味しいもん!」

とせがむのだ。相反する感情が沸き上がるが勝つのはいつも脳。そう、脳は腸の上位組織にあたるからだ。


そこまではいい、だがおかしいのはそこから先の話である。

なぜ据え置き用ゲーム機が脳から肉体を解き放つのに必要なのか。

しかも謎?のゲーム機が宗教団体に取り上げられている事も意味不明だった。

わからない事だらけだ。


だが一旦ムクムクと湧いてしまった厄介な感情、”好奇心”はまるでメトロイドのように俺の心にピッタリと取りつくやその精神をざわつかせ始めた。

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