裏技

考え事をしながら歩いていたら今まで来たこともない場所に迷い込んでしまった。

そういう経験は誰にでもあるだろう。今の軍平がそうだった。


ただコンビニに行くつもりだけだったのだが気が付けば知らない街に半ば呆然と立ちすくんでいたのだ。


一体ここはどこだ?

周りをキョロキョロ見渡す軍平の意思とは裏腹に勝手に足が動きだす。

どうやらどこかに向かうようだが、、、、面倒なので軍平は体のなすがままに身を任せる事にした。


10分ほど歩いただろうか。軍平は小汚い4階建ての雑居ビルの前にいた。

隣のビルとの間には人ひとりがやっと通れる程度の隙間がある。


軍平はなぜかその隙間に入り込みだした。

するといきなり意識が消失する。専門用語でいうブラックアウトってやつだった。


再び意識を取り戻した軍平は小ぎれいな部屋の一室にいた。

室内には樫で出来た大きなデスクがどっしりと鎮座し存在感を放っている。それ以外に何もない。


しかし、、、こんな部屋には全く覚えがなかった。


それにしても生活感のない部屋である。軍平の住処とは大違いだった。

「、、、、、よくわかんねえがとりあえず”調べる”か、、、、アドベンチャーゲームの基本コマンドでもあるしな」


いたたまれなくなった軍平は独り言をいうやいなやデスクの引き出しを次々と開けていく。


横長のデスクには合計4つの引き出しが備え付けられていたが、そのうち3つの引き出しには何も入ってはいなかった。


最後である4つ目の引き出しを勢いよく開ける。するとそこには紙束が無造作に放り込まれていた。

軍平はその紙束を手に取り中に目をやった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る