人魚伝説

花道は仕事中。

長屋で未来はイズナと遊んでいた。

そこに花道は帰宅する。

「ただいま……って何してるんですか?」

花道は驚く。

「何って遊んでいるのよ」

(花道。彼女は良い香りをしてるぞ)

「女だから身だしなみはしっかりしてるわ」

「そうじゃなくてイズナは人に見られたらマズいだろうっ!」

「夫婦なんだから隠し事なしよ」

(気にするな)

「あなただって旗本の娘を隠してましたよね?」

「それよりも傘は売れたのっ!」

「サッパリです」

(花道は陰陽師を表に出た方がいいんじゃないか?)

「これだと今月……1週間をどうやって生きていくか?」

「何とかなりますよ」

花道は楽感的である。

「いるか?」

そこに剛が現れる。

「剛!」

「お前に仕事だ」

「いや、僕は……」

花道を押して未来は手を上げる。

「やりますっ!」

「ちょ、未来さん!」

「公家の松浦家が依頼主だ」

剛はメモを渡すと長屋を出て行く。

「とゆうか、扉を直してください!」

花道は溜息をつく。

(花道。これで陰陽師としてさらに成長するぞ)

「別に成長しなくたって陰陽師にはならないよ」

花道は長屋を出て行く。

未来は花道の後ろ姿を見つめる。

「ねぇ、花道の過去を知ってるの?」

(知らない方が良い)

「夫婦に隠し事はなしよ」

松浦邸。

「それで何でついてきてんの?」

「妻として夫を守るのは当然よっ!」

(彼女は何かと役に立つ)

「それは僕が役に立たないと……?」

花道はイズナを睨む。

松浦大蔵は老舗織物屋の亭主だ。

「この度はお越しくださいましてありがとうございます」

大蔵は丁寧に礼を申し上げる。

「それで御用件は何でしょう?」

大蔵は使用人に木箱を持って来させる。

「こちらは南蛮の商人から取り寄せたものです」

花道とイズナはその異様さから木箱から遠ざかりたくなる。

「すみませんが、蓋を開けて貰えませんか?」

「はい?」

「そのための助手ですよね?」

「妻よっ!」

(怖がらずに開けろ)

花道は木箱の蓋に手をやり、持ち上げると綺麗に丁重された一枚の鱗が置かれていた。

「魚の鱗?」

「いえ、人魚の鱗です」

「人魚⁈」

未来は驚く。

「人魚ですか?これを入手した経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「えぇ、半年程前に息子が商人から引き取ったものでして……しかし、これを手にしてから息子がまるで鬼のように豹変してしまって手に負えなくなりました」

花道は異様な気配を感じ取る。

「あなたはその商人はご存知ですか?」

「さぁ、息子は私には何もおっしゃらないので知りません」

「……そうですか。では息子さんの様子を伺いに参ります」

大蔵は何故か引き止める。

「息子に会わずに除霊なり出来るでしょう?」

「そんなことが出来たら世は陰陽師で溢れかえってます」

「やはり偽物か?」

大蔵は合図を送ると既に準備をしていたのか?

何十人の兵たちが取り囲んでいた。

「あなたには死んで頂きたい」

「おかしいとは思ってたんですよね。申し訳ございませんが、一旦荷物を置いてから出迎えます」

花道と未来の周りが大量の木の葉で舞い、おさまると2人の姿がない。

「大蔵殿っ!」

「奴らは妖の類か?」

「折角女が手に入ると思ったが仕方ない」

2人は邸から離れた裏道にいつの間にかいる。

「な、何⁈」

未来は驚く。

「妻なら驚かないでください」

「普通は驚くわよ!」

(陰陽師の古典的な術だ)

「とりあえず未来さんはイズナと家に帰ってください」

未来はぷくっと膨れる。

(女を悲しませるな)

「いい?無事に帰ってきなさいよ」

再び、松浦邸。

大蔵は人魚の鱗と思しきものを床に放り投げる。

「やはり小細工では通用せぬか!」

この大蔵は不男で女にモテない。

そんな時に手に入れたのが人魚の鱗である。

「やはり話は嘘か?」

花道は戻っていた。

「き、貴様!」

「お前の罪状は承知している。罪のない夫を殺し、妻を娶ろうとする行為を何度も行った。決して許すまじ」

「うっせぃ、美形のお前らに何が分かる」

大蔵の背後に巨大な人魚姫が現れると彼を包み込む。

「な、何だ⁈」

「人魚の姫に好かれて良かったじゃねぇか?」

花道は般若の面を被り、短刀を抜くと2人まとめて斬る。

「ぎゃぁぁぁ!」

騒ぎに駆けつけた兵たちは辺りの残状を目にする。

「こ、これは一体……⁈」

花道は邸を離れていた。

花道は長屋に帰ると未来が飛びつく。

「もうっ、心配してたんだからねっ!」

(片付いたか?)

「しばし平凡な日常になる」

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