第四話 逃亡者

「大変だ!コロッセオに入れる餓鬼が一人盗まれた!」


「しかもクレマチスの姫君と従者の男も行方不明だ!」


「…連れて帰っている可能性が高いな。お前達、必ずアリア姫だけを連れ戻しなさい」


「「承知しました!」」


その命令が下ったまさにその時、彼女達三人はクレマチス王国へと道を急いでいた。

すると、背後から恐らく「テラの追手」であろう男達が12人、剣を片手に追いかけてくる。

その追手は羽根を有しており、所謂天使のような外見をしていた。

アリアとアイヴィー、そして名前も解らない囚われた少女は、あっという間に囲まれてしまう。


「さぁ…誰から殺してやろうか…」


見た目は完全なる天使だ。

しかし、その中身は、まるで悪魔のように腐っていた。

彼らは舌なめずりをしながら、まるで品定めをするかのように三人を見ていた。

そして、アイヴィーへと剣を向け、空を斬った。


「お前がいなくなったらあとは女二人…どうにでもなる…!」


するとアイヴィーは、剣を驚く程の速さで横に振り風を作り、あえて彼等の翼の動きを奪う。

その上で、風によろめいた天使を一人、上空で斬りつけた。


「なッ…!」


驚いたように追手の天使達が言うと、アイヴィーは一度剣をしまう。

すると今度は、アリアの方に攻撃が向く。


「あの男は強い…!なら今度は…!」


一人の天使が、剣をアリアに向かって振りかざした。


「アイヴィー、この子をお願い!」


アリアはそう言うと、その天使の攻撃を軽く躱し、飛び上がり背後から斬りつけた。


「安心した?大丈夫、私達は強い」


アリアが少女にそう言うと、今度は残りの10人が一斉にアリアの元へ斬りかかってきた。

さすがに、アリアの剣術の腕でもその数の相手は捌けない。


―私、死んでしまう―!


アリアがそう思い、目を瞑った瞬間、何か大きな影のような存在に気付いた。

…アイヴィーが、その内の5人を葬り、5人の攻撃を直に受け、その内の1人の攻撃が心臓部に達していた。

ポタ、ポタ、と、赤い雫が落ちる。

アイヴィーの血液で、道が赤く染まっていく。


「…ッへへ、お前、いつもやり過ぎだっつってんだろ…」


そう言葉を発すると共に、アイヴィーは口から大量の血液を吐き出した。

そして、よろめくと、その場に倒れ込んだ。



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