第四話裏 邂逅

「こ、こうでいいの?」


そうそう、上手上手!

お前、素質あるじゃねぇか!


「じゃあ、こうしてっ―こうは?」


おお、新しい構成の斬り方だな!

アリア、お前本当に武術の飲み込みいいな!


「ありがとう!でもアイヴィーには負けるよ」


へへっ、俺を越えようなんてまだまだ早いぜ!

さ、剣をこう構えて…こうだ!


「わぁ、アイヴィー、すごい…!

 貴方に武術を習えてよかった!」


ア、アリア、そんな褒めても何も出ねぇからな…!





「…今は喋らないで、アイヴィー。」


そう静かに言うと、アリアは残った5人に目を向けた。

その眼光は鋭く、まるで獲物を喰らおうとしている肉食動物のようだ。

そして、一度下を向き、身体を震わせた。


「…許さない…アイヴィーをこんな風にして…」


一瞬、その場の空気が変わった。

そして、アリアは叫ぶ。


「このおおおおおおおおおおおおおおおお!」


アリアは、まるで舞うかのような動きで、次々と相手を踏襲していく。

その様はまるで“舞姫”。

しかし、その迫力は鬼神にも負けてはいなかった。

全員を葬ったアリアは、アイヴィーの元へ駆け寄った。

アイヴィーは、コヒュー、コヒュー、とか細い息を漏らしている。

アリアは、アイヴィーの傷の辺りに手を翳し、その手から淡く柔らかい光が溢れ出た。

…しかし、何の変化も起こらない。


「え、どうして、私今治癒魔法を…」


アリアは、その瞬間、クローバーから教わった時の注意点を思い出した。

“この魔法は軽い怪我なら治せます。ですが、命に関わる怪我、それを治すことは出来ない”


淡い光はやがて消え失せ、アイヴィーの呼吸もなくなった。


「アイヴィー?ねぇ、起きてよ、アイヴィー!?」


アリアは、必死に彼の身体を揺らす。


「ねぇ、どうして!?クローバーも、アイヴィーも、先に行ってしま」


背後から、鈍い痛みがアリアを襲った。

恐る恐る、アリアが振り返ると、そこには赤く染まった刃物を握った、自らと瓜二つの少女が立っていた。

その少女が、少しずつ話し始める。


「私はアリエ。貴方の双子の妹よ」


「…え…?」


痛みに耐えながら、その“アリエ”とやらの話を聞く。


「思えば最低だったわ。双子は要らないと言われ、貴方がクレマチスでのうのうと育っていたとき、私は檻の中で監禁生活よ。」


そう言いながら、アリエはアリアの髪を掴み、顔を近づけた。

そして、醜い笑顔を見せる。


「何、この汚い顔。貴方が私の運命を担えばよかったのに」


そして、髪を手放すと、アリアは自然に道に、ドサ、と倒れ込んだ。

その様子を見て、アリエは大きく笑った。


「今から、私がクレマチスの姫になるのよ!そしてアリア、貴方はここで野垂れ死に、ハイエナにでも喰われればいいわ!」


その言葉を聞いていく内に、アリアの意識は次第に薄れていった―。

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