第三話 宵闇の作戦

「…ねぇ、どうする?」


小声でアリアが言った。


「何が“どうする”だよ」


同じくアイヴィーが小声で言う。


「…彼女達のことでしょう?」


クローバーが言うと、アリアは頷いた。


「私は彼女達を助けたい。でも、鍵がなければ開けられない。どうしたら…」


「んなもん、俺の剣でぶった斬って…」


「あんた馬鹿なの!?そんなことしたら音で誰かに気付かれ…」


「落ち着いてください…!」


クローバーが二人のやり取りを止め、話を戻した。


「…彼女達を出す鍵が欲しい。

 しかし、どこにあるのか解らない。

 恐らく、女王陛下に直訴しても教えてはくれないでしょうし、そのまま処刑でしょうね」


そう言われると、アリアとアイヴィーは小さく頷いた。


「なら、鍵を精整しましょう」


アリアとアイヴィーは、驚いたような表情を見せた。


「クローバー…お前…そんなこと出来るのか…?」


「はい、ただ、この魔術を使えば、大量の精神力を消費します。貴方達とは帰れないかもしれない」


「そんな…!それって…」


アリアは、クローバーの思っていることに気付いた。

彼は、彼女達を助けるために、この城で大人しく処刑されようとしていることに。

アリアの言葉に構わず、クローバーは碧い光を放つ球体を両手の内に作る。


「駄目、クローバー!貴方、ここで死んでは…」


「大丈夫です、鍵はしっかり観察して来ました、全て同じものです」


そう言うと、アリアの方を見て、ニコ、と笑いかけた。


「そして、僕は覚悟は出来ています」


そして、その球体の中に、青銅の鍵が浮かび上がると、床にカラン、と落ちた。

それとともに、クローバーも力尽きたかのように、地に伏せた。


「クローバー!?ねぇ、大丈夫なの!?」


アリアが声をかけると、クローバーは苦しそうに言った。


「大声を出すと…危険ですから…。あと、僕は置いていってください、足でまといになるだけだ…」


アリアは涙を流しながら、彼の元で手を握っている。

それを見ていたアイヴィーも、申し訳なさそうにクローバーを見下ろしていた。

そして、アリアの肩を掴んだ。


「アリア、行くぞ」


「だって、だって、クローバーが…」


「お前、クローバーの気持ちを無駄にする気か!?」


小さな怒号が、響き渡った。

アリアは我に返り、クローバーの手を離した。

そうして、涙を腕で拭い、彼に最期の言葉をかけた。


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