第二話 渦巻く思惑
無事、空の国、通称『テラ』と呼ばれる王国にたどり着いた三人は、女王陛下との謁見を果たす。
そして、城内を案内された。
遊戯室、鍛錬所、舞踏会会場、テラス等、どれも豪華絢爛なものだった。
しかし、アリアだけは気付いていた。
舞踏会会場の右端に、小さな鉄の扉があることを。
「ねぇ、あの扉には何があるの?」
案内人にアリアが問うと、案内人はニタッと一瞬笑い、扉の中へ案内してくれた。
そこは、何とも恐ろしい世界だった。
小さな鉄格子の扉の中に、何人かの女の子が収容されている。
まるでそれは、“刑務所”のようだった。
皆、目が死んでいるのが解る。
それはきっと、自分の宿命を知っているからだろう。
案内人が言った。
「彼女達は、所謂闘技場(コロッセオ)で戦うんです。」
案内人が指差す先に、一筋の光が見えた。
そこには、チェスの台座のようなものがあった。
「この台座の上で、彼女達は“駒”となり、審判者の言うとおりに戦うのです」
この身の毛もよだつ話に、アリアは声をあげた。
「そんな!それじゃあこの子達の命は…」
「ええ、審判者の御心のままに…」
「そんなのおかしい!解放してあげて!」
「それはクレマチス王国の姫君の頼みでも受け入れられませぬなぁ…」
そう言うと、案内人はそうだ、とばかりに指を鳴らした。
「アリア姫、貴方が闘技場へ入ってくださるなら、一人くらいは考えましょうか」
「てめぇ、何言ってやが―」
「落ち着いてください、アイヴィー。
僕達がこの場所を詳しく見ることは出来ますか?」
もう熱が冷めやらないアイヴィーを律し、クローバーが案内人に言葉をかける。
すると、案内人はやれやれ、といった表情で首を横に振った。
「困った方々だ、特別に案内したにも関わらず…。」
クローバーは顎に手を当てて、何か考えているようだった。
アリアは、密かに目を凝らしてその部屋の中を見ていた。
そして、見つけてしまった。
自分と、瓜二つの存在を。
アリアは、二人と目を合わせる。
アイヴィーは全く解らないような顔をしていたが、クローバーは静かに少し頷いた。
アリアは、諦めたように言った。
「…ありがとう、案内人さん。もう十分です。」
そう言われると、案内人はわざと畏まったようにお辞儀をする。
「では、寝室を用意しましたので、そちらへ案内します」
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