第一話 旅の始まり

「アリア、お前に話がある」


「何ですか、お父様」


「空の国は解るか?

 あの国の国王に、この手紙を渡して欲しい」


「内容は…?」


「それは聞くでない」


「…解りました。行って参ります、お父様」


「しかし、一人では心細かろうて…

 クローバーと、アイヴィーを連れて行くのはどうじゃ?」


「私は構いませんが、あの二人の返答は…」


「もう承諾はとってある。」


「…もう計算済み、という訳ですか」


「無論」


「では、私は空の国に向かいます」


「うむ、いい結果を期待しておる」


「…解りました。」




『Heavenly tradition』




「という訳で!」

私は、かしづく二人に声をかける。


「クローバー、アイヴィー、この旅ではお世話になるわ、よろしくね!」

私の呼びかけに、二人は声を上げる。


「仰せのままに…」

「ってもう面倒だ、やってられっかこんな辛気臭い空気!」

クローバーがお辞儀をしようとした瞬間、切り出したようにアイヴィーが言った。


「ちょ…アイヴィー!

 これは公的な責務であって貴方は私の従者…」

「んなことどうだっていいんだよ!

 何で日頃一緒に鍛錬してる奴に敬語使わなきゃなんねぇんだ!?」


確かに。

私は一理ある、と一瞬思った。

すると、背後からおずおずと、口を閉ざしていたクローバーが話し始めた。


「あの…すみません、僕だけあまり接点がなくて…」

「そんなことないじゃない、最低限の魔法を教えてくれたのは貴方よ、クローバー」


そう、わたしは剣士でもあり、魔術師でもある。

…といっても、魔術の腕は断然クローバーには劣るが。

わたしが覚えたのは、軽い回復魔法だけ。

何でも、自分が傷ついた時に誰もいなかった場合のことを考えて、というお父様の計らいだった。

その魔法を伝授してくれたクローバーに、改めて声をかける。


「あの時も、貴方は優しかったわよね。

 本当にあの魔法を教えてくれてありがとう。」

「い、いえ、僕は国王様の命じるがままにお教えしただけで…」

「でも、お前が回復魔法使うのって俺に負けた時だよなー」


アイヴィーはそう言うと、そっぽを向いた。

全く、この男は…。


とにかく、空の国まではそんなに遠くない。

そこを目指せば、もう私達の役目は終わり、国に戻るだけだ。

それまで、まぁ仲良くやっていけたらいいな。

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