結婚式
真奈美はカツラギビルの5階に引越した。
カツラギビルは5階建て。エレベーターも付いている。
1階は駐車場と倉庫。
2階は保々機材など撮影に必要な物で埋っている。
3階がいつもみんなで仕事をする事務所。
4階には3階から螺旋階段で上がることも出来て、会議室兼簡単な撮影ができるスペースがある。廊下から入れる小さな部屋は夫婦の物置にもらった。
そして5階は葛城と真奈美の新居。今までは葛城が一人で住んでいた。そんなに広くはないけど、シンプルで使いやすい間取り。キッチンが結構大きいのと窓が大きく明るいのが気に入っている。ベッドは買い替えたけど、それ以外は特に買わなかった。作り付けのクローゼットがたっぷりあったので、それを二人で使っても十分足りた。あとは食事をする食卓とソファと映画を大画面で見るための大きなテレビというかモニターがすでにあった。お互いにシンプルなのが好きだし、たいして物も持っていないので十分な広さだった。
12月15日、結婚式
近くの教会で式を挙げた。チーム葛城と華さん、そしてマスターが来てくれた。
またもや華さんがドレスやブーケなど、全てをお膳立てしてくれた。真奈美一人では決められないのでありがたかった。
「真奈美、最高に綺麗だよ。」
葛城は真奈美にデレデレだった。
「葛城さんもそのタキシード素敵です。この前の周年記念の時みたい。でも今日はメガネは無しですね。」
「そうだよ。伊達メガネは自分でないように見せたいからで、今日は自分自身でないとダメだからね。」
「そうですね。今日の方がさらに素敵です。」
その言葉に葛城は真奈美を抱きしめた。
榊さんは結婚式中写真を撮ってくれた。
ジョニー君は我々の結婚式を見て涙を流しながらビデオを回してくれた。
加納さんと華さんは結婚式全体をプロデュースしてくれた。
マスターは私の父親役をやってくれてバージンロードを一緒に歩いてくれた。その時から涙を流し、式が終わるまでずっとずっと泣き笑いをしていた。
みんなの気持ちが溢れた最高の結婚式だった。
その夜Portaで披露宴をした。
チーム葛城はもちろんのこと、葛城さんのお仕事をたまに手伝っている会社の人や、先日の社史イベントの会社の人も来てくれた。そして、ロスの弟さんからは大きなシャンパンとビデオレターが届いた。弟さんはおひげがすごくてワイルドで驚いた。でも優しそうな目が葛城さんと同じだった。
私は特に誰も呼ばなかった。マスターが居てくれれば十分だった。
葛城さんの会社での私の仕事は、朝10時から6時まで。経理と事務、電話番、そして忙しい時には原稿の文字校や、HPの入れ替えを担当した。思った以上に仕事はあって忙しかった。
そして予想通り、あの周年行事以降仕事が激増していた。でも葛城さんは人を増やさなかった。私以外は。
一時的に仕事が増えているのかもしれないし、大所帯にしてその後小さくするのは従業員を切らなくてはいけないので人員は増やさないと葛城さんはきっぱり言った。どうしても忙しい時はアルバイトや協力会社で補った。そういう葛城さんがみんな好きだった。たまにみんなで喧嘩みたいにやりあうこともあるけど、思っていることをその場でみんな言うから、後鎖が無いというか、とりあえずみんなの意見を聞いてから葛城さんが納めていた。とにかく事務所は毎日賑やかだった。
忙しい時は、夜食におにぎりを作ってみんなに差し入れた。みんなはそれを喜んでくれて、おにぎりをくわえながら仕事を続けた。忙しくてもみんなといるのがとにかく楽しかった。
そうそう、葛城さんにお願いしたことが一つあります。
「葛城さん、お願いがあります。」
「何? 改まって、怖いな~」
「Portaのことなんですけど、いままでどおり通わせてもらえますか? 」
葛城は真奈美を見てやさしく微笑んだ。
「そんなのOKに決まっている。Portaが無ければ僕らは出会っていないんだから。でも、僕も一つお願いがある。」
「えっ? 何ですか?」
「真奈美、そろそろ二人の時は僕のこと翔って呼んで。」
「えっ? し、翔さん・・・」
真奈美は照れながらもうれしそうに言った。
「ありがと、真奈美。」
そう言って、翔は真奈美をぎゅっと抱きしめた。
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