真奈美の誕生日
10月
— もうこの店に来るようになって2年になる。
— いろいろあったけど、あの時マスターの誘いを受けてカクテルをごちそうになり、この店にお世話になって良かったとしみじみ思う。
— 2年前の誕生日にマスターが誘ってくれなかったら、私がその誘いに乗っていなかったら、私はきっと今でも地味なOLのままだったろう。やはり扉は開けなければいけない・・・
と改めて真奈美は思うのだった。
10月5日は真奈美の誕生日。
葛城とチーム葛城、そしてマスターが真奈美の誕生日をお祝いしようと準備をしていた。真奈美には内緒で。
そして当日、葛城は真奈美をPortaに呼んだ。
「真奈美ちゃんお誕生日おめでとう!! 」
マスターが大きな花束をくれた。大きな拍手が起こった。するとざわざわとして、みんなが葛城を見ている。
そしてジョニー君がいきなり「ガンバレー」と叫んだ。
「真奈美、お誕生日おめでとう。そして、もうひとつ・・・(指輪の箱を開けて)僕と結婚してください。」
葛城は真奈美にプロポーズをした。
真奈美はうれしかった。とにかくうれしかった。ぐっと目が潤んだ。でも間髪入れずに答えた。
「はい。喜んでお受けします。よろしくお願いします。」
葛城は真奈美に指輪をはめてくれた。
「やったー!」
ジョニー君が叫んだ。
みんなも叫んで拍手したり、ハイタッチもしている。葛城はみんなから手荒い祝福を受けている。そしてマスターは横を向いて涙をぬぐっていた。
「それともうひとつ真奈美にお願いがあります。これは僕はもちろんのこと、ここにいるみんなの意向なんだけど、うちの会社に入り経理やってもらえませんか? 」
真奈美は考えてもいなかったことだった。でも、こんな素敵な人たちと毎日居られるのはうれしいと思った。
「うれしいです。私でよろしければ、お受けします。」
「イェーイ! 」
珍しく加納が叫んだ。みんなが笑った。
後から聞いた話だけど、ジョニー君と榊さんの関係を聞いた後も彼らに対して真奈美は態度が変わらなかったし、何よりみんな真奈美のことが好きで、チームを感じてくれたのだという。
楽しい誕生日&婚約会? となった。
11月22日いい夫婦の日に入籍をした。華さんのアドバイスで。
入籍の報告と共に会社に辞表を出した。12月12日まで行けば後は有休消化となる。課の人たちも、いきなりの真奈美の寿退社でびっくりしていたけど、笑顔で送り出してくれた。その中でおっとりyesマン係長だけが思いがけず涙を流して送り出してくれたのには驚いた。そして最終日には多くの人から今までのお礼の言葉といっぱいのお花を頂いた。
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