セロリとソーセージ

車で1時間弱位のところにその美術館はあった。美術館は大きい建物なのに自然に溶け込んでいてとにかく素敵だった。展示は地元の作家さんを中心のようだった。そして庭園は、派手さはないけれどこの地方の樹木で構成されており、自然の風が流れていてとにかく最高だった。

葛城は手をつないだり、肩を抱き寄せたり、たまにキスをしたり、今までの時間を取り戻すかのように真奈美を愛でながら庭園を歩いた。真奈美は幸せをめいっぱい感じた。既に真柴のことは忘れていた。



けっこう遅いブランチを食べた。サラダにスープ、ソーセージにパン、そしてデザート。お料理はそんなに凝っているわけではないけど、地元の素材を生かし、そしてここの空気がさらにおいしさにプラスされていた。とにかく全てが美味しかった。そしてその中でもソーセージが絶品だった。

お店の人に聞いたら、近くのお肉屋さんの手作りだという。葛城とマスターへのお土産にしようと決めてランチの後 お肉屋さんに向かった。


ソーセージはランチで食べた他に2種類あった。全部買った。お肉屋の隣に野菜の卸をやっている店があった。欲しいものを言うと奥の冷蔵室から出してくれる。その冷蔵室を覗き込むとセロリが株で置いてあった。二人共セロリを株で見るのは初めてだったので驚いて笑った。面白いからと、株のまま買ってマスターにお土産にした。


帰りの車の中はセロリの臭いでいっぱいだった。

おかしくて二人でずっと笑っていた。


真奈美は車からマスターに電話を入れた。


「マスター、今どこですか? もうお店ですか? 」


「あれ? 真奈美ちゃん。もう帰ってきたの? あと10歩でお店着くよ。」


「今車の中です。お土産お届けに行っていいですか? あと30分くらいです。」


「ほんと? ありがとう。待ってるねー。」


葛城が運転しながら叫んだ。


「楽しみにしててくださいね~」


二人の楽しそうな声にマスターは自然と頬が緩んだ。



葛城のビル駐車場に車を止めて、歩いてPortaに向かう。

セロリは事務所で大きな紙に包んで持っていくことにした。葛城は倉庫から大きな紙を何枚か出して、真奈美にどれがいいか選ばせた。

「マスター、ただいま~お土産です。」

葛城が大きな包みをマスターに渡した。真奈美はソーセージの入った保冷バックを。

「えーこんなに。なにこれ? 」

そう言ってマスターは大きな包みを開けた。

「えーセロリ? セロリってこんななの? 知らなかった。」

「そうですよね。僕らも初めて見て、なんだかおかしくなっちゃって思わず買ってきてしまいました。」

「へー、ちょっと驚くね。写真撮っちゃお。」

マスターも嬉しそうにセロリの株の写真を撮った。

「セロリでつまみ作りましょ。炒め物も良いし、ピクルスも美味しいしもつから。」

真奈美はマスターに提案した。

「真奈美ピクルス作れるの? 」

マスターは、ピーンと来た。

— 今葛城君、真奈美って呼んだ? ムフッ、そういう仲になったのかな~

「ピクルス結構簡単です。いろんな野菜で作ると楽しいですよ。黒いニンジンなんか、茹でると紫色なんですけどそれにお酢を入れるとゆで汁が綺麗なピンク色になるので、カリフラワーをそれで漬けるとピンクのカリフラワーになります。」

「へー楽しそう。今度食べてみたい。作ってください。」

葛城は子供のように興味津々だった。真奈美はそんな葛城も可愛いと思った。

「了解です!! フフフ。科学的なことはマスターに聞いてくださいね。」

「ハハハ、お得意分野ですね~。今度ゆっくり教えるね~」


「ソーセージもめちゃくちゃ美味しいの。食べてみてマスター。ちょっと焼いて、マイユの粒マスタード冷蔵庫にありましたよね。それ付けて食べてみてください。葛城さんと話していたんですけど、これ仕入れてお店で出したらどうかと。お肉屋の人に聞いたら、取り寄せ可能だって言っていました。勝手にすみません聞いちゃいました。」

マスターは早速さっと焼いて食べた。

「これうまいよ。すっごくいい。ちょっと全種類食べていい? 」

「是非是非。」

「みんなうまい。ちょっと全部食べられないから君らもつまんでよ。」

 マスターはソーセージをとにかく気に入った。さっそく肉屋に電話をして商談した。

 そしてマスターは何よりも真奈美が楽しそうなのを見てうれしかった。

— 今度こそうまくいきそうな気がする・・・もう、幸せになってくれ・・・ 


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