葛城さんと・・・ *カクテル11
誰にも引き止められることなく会場を出ることが出来た。
「スペイン料理で美味しいとこあるんだけどそこでいいかな。」
「はい。楽しみです。」
二人はタクシーに乗って店に向かった。
「あー緊張した。スピーチなんかしたことないから、昨日から物が喉通らなかったんだよ。」
葛城はタクシーの中でそう言って、メガネを外し、襟元を緩めた。
「メガネ外しちゃうんですか? 」
真奈美は思わず葛城にそう言った。
「伊達メガネだよ。少しでもきちっとした人に見せる為、髪型も変えてメガネ掛けて。バカでしょ。何も変わらないのにね。」
「ジョニー君にあそこに葛城さんが居るよって言われて見た時、ホントビックリしました。違う人みたいでした。でも、もう少しメガネ掛けててください。」
「そう? ではお言葉に甘えて・・・メガネしてた方がいい? 」
葛城はメガネを掛けて真奈美を覗き見て聞いた。
「今日はメガネです。フフフ」
スペイン料理はアヒージョやパエリアなどみんな美味しかった。サングリアも甘すぎず美味しくておしゃべりをしながら二人で結構飲んだ。
まだ知り合って間もないのに、とにかく楽しく話をした。
— 真柴さんとも違うやさしさ。包み込むような、そして一人の人間として尊重してくれるような、包容力っていうのか、心地よい・・・
— なんだか、このままずっと一緒にいたい・・・
「真奈美さん。まだ知り合って間もないけど、初めて会った日から君のこと気になっていた。いわゆる一目ぼれだな。会いたくてしょうがなかった。でも今回の仕事でどうしても時間できなくてなかなか会えなかった。こういう仕事だから、少し寂しい思いをさせてしまうこともあるかもしれないけど、これから少しづつお互いのこと知っていけたらと思っている。僕と付き合ってもらえませんか? どうかな? 」
葛城は落ち着いた声で真奈美に語り掛けた。
真奈美は嬉しくて、目がうるんだ。
「あの・・・まだお互いのこと殆ど知らないし、ゆっくりお付き合い始められたらうれしいです。よろしくお願いします。」
ゆっくりとそう伝えた。
「ありがとう。あーよかった。今日は、仕事もプライベートも最高の日だ! 」
葛城は満面の笑みで真奈美を見つめた。
それからもいろんな話をした。この数時間でお互いのことをとにかく話をした。充実した楽しい時間だった。
彼には弟さんがいることもわかった。音楽関係の仕事をしていてロスに行ってしまい、日本には殆ど戻ってこないらしい。
御両親共に亡くなっていて、親戚もお付き合いが無いとのこと。
— 私と境遇も似ている。でもお父様が実業家で成功されたのである程度の遺産があり、葛城さんがビルを建てられたのも、弟さんがロスに行くことが出来たのもそのおかげだと語った。感謝していると言った葛城さんの微笑・・・素敵・・・
食事の後、葛城は家まで送ってくれた。
別れ際、さっとメガネを外して優しいキスをしてくれた。真奈美はその優しいキスがとても自然に感じた。それ以上求めてこない葛城の心遣いもうれしかった。
— 幸せ・・・
葛城は、毎日夜に電話をくれた。声が聴けるのがうれしいと言って電話だった。時間が合うときは夕飯を一緒に食べた。レストランだけでなく屋台のラーメン屋にも行った。気取らず楽しかった。それに何といっても食の好みが合った。自分が美味しいと思うものを隣で美味しいと言ってくれることがこんなにうれしいとは思わなかった。
いつも必ず家まで送ってくれて、優しいキス・・・
— まだ葛城さんとはキスどまり・・・
— この先はいつ・・・
🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸
〖カクテル11〗
少し年上の男性は、彼女を大切に思っているのが垣間見れる。
彼女を想う気持ちは強いけど、少し我慢をしているみたい。
男性は彼女の前で『ライラ』を頼むが、彼女はそのカクテル言葉を知らない。
『ライラ』
今まさに君に恋をしているというスチュエーションにピッタリな一杯。
結構きついお酒なので気を付けて。
カクテル言葉は、“今君を想う”。
ウォッカ
コアントロー
ライムジュース
※アルコール度数 高
🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸🍸
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます