葛城さんに会いたい・・・ *カクテル10
5月の連休も明け、中旬になった。
葛城は不定期にPortaに来ているようだ。真奈美はあれ以来会っていない。
真奈美は思い切ってマスターに聞いてみた。
「葛城さんは最近来ているんですか? 」
「あー、来ていない。4月中旬まで結構来ていたんだけど、大きな仕事があって忙しいと言っていたよ。たしか5月末ごろまでって言ってたかな。大変な仕事なんだね~」
「そうなんですね。どんなお仕事なんだろう? 」
「興味あるの? 仕事? 葛城さん? 」
真奈美は真っ赤になった。
マスターは真奈美の気持ちがわかっていた。
— そろそろ新しい恋をしてほしいなー
1時間後、扉が開いた。
「ご無沙汰です。」
「あー葛城さん、いらっしゃい。仕事落ち着いたの? 」
「はい、殆ど。あとは、クライアントと微修正するだけです。」
「それはお疲れ様。」
「長年お仕事している会社の周年行事で社史を映像化する大きなお仕事を頂いて、6月10日に周年パーティでお披露目をするんです。」
「他の会社の人も見るんでしょ。ますます仕事増えちゃうかもね~。」
「そうなればうれしいですけどね。でもそれだと身体持たないかも・・・」
「葛城さん、真奈美ちゃん葛城さんが来るの待ってたよ~。」
— マスターったら、何言ってるんですか・・・
— 恥ずかしい (真っ赤)
葛城は真奈美の顔を見て微笑んだ。
「ありがとう。この前は楽しかったよね、ワインも美味しかった。今日はこの後僕の会社の仲間が来ます。だから4人です。マスター、今日はテーブル席いいですか。」
「こんばんわー」と言って直ぐに3名の男の人が入ってきた。
ハーフっぽい美形の若い男の子、ジョニー君。人当たりが良く目がくりくり動く。(プログラマー)
あまり笑顔のない黒縁眼鏡のメガネ男子、榊さん。(カメラマン兼写真加工)
皆より少し年上に見える頼りになりそうな人、加納さん。(営業兼プロデューサー)
ちなみに葛城さんは社長で、何でもできる人らしい。初めはひとりで仕事していたみたい。加納さんとは大学で同期だというけど加納さんの方が上に見える。
葛城さんはみんなといると社長らしくない。結構いじられている。みんな仲が良くていい感じ。
葛城はみんなにマスターと、真奈美を紹介した。
「こちらがオーナーでマスターの岡崎さん。一人で切り盛りしていらっしゃいます。そして、こちらが真奈美さん。経理とホームページを担当していて、金曜日に来ると会えます。」
ジョニー君がはしゃいでいる。彼女のこと? 彼女のこと? って葛城に小声で聞いている。
葛城はジョニー君に「コラ うるさい」と言ってあわてている。そんな葛城を見て、みんなはニヤニヤしている。
「マスターさん。お店素敵です!! 僕大好き!! 今度なんかの撮影に使わせてくださいね~」
ジョニーが人懐っこく言った。
「ありがとう。是非お願い!! 今日はひと仕事終わっての打ち上げってとこかな? 」
「そうです。だから今日は僕のおごり。ワインとつまみとか、テキトーにお願いできますか。こいつら結構飲んで食べます。」
葛城は楽しそうに言った。
「了解!! この前試飲したイタリアワイン入ったからそれにする? 」
「あっ、いいですね。軽くてうまい。」
彼らは2時間くらい飲んで食べてワイワイと楽しんだ。
「マスター、今日はありがとうございました。みんな美味しかったです。いろいろサービスしてもらっちゃってすみません。これからはもっと来ますからよろしく。」
マスターはニコニコしていた。
「真奈美さん、またね。」
葛城はそう言って帰っていった。
— 今日はお話しできなかった・・・今度はいつ会えるのかな~
と、真奈美は少し寂しく思うのだった。
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〖カクテル10〗
女性はいつも彼を探すような目線で店に入って来る。
でもお目当ての彼は居ない。
そしてカウンターに座り『カカオフィズ』を飲みながら来るかわからない彼を待つ。
『カカオフィズ』
コーヒー系カクテル。苦くて甘酸っぱい飲み口は、相手を想うと胸がキュンとする。
甘酸っぱい恋いする胸の痛みを連想させる。
カクテル言葉は、“恋する胸の痛み”。
カカオリキュール
レモン
砂糖
ソーダ
※アルコール度数 中~高
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