葛城さん  *カクテル9

「僕、葛城かつらぎといいます。この先に事務所兼自宅を構えて引っ越してきたばかりなので、今日は、このあたり散策していて、良く歩いたから喉乾いたし、おなかも少し減ってきて・・・」


「もしかして、コンクリート打ちっぱなしのおしゃれな建物? 」


「あっ、そうです。良くわかりましたね。」


「KATSURAGI BILD.って書いてあったから。気になっていたんですよ、素敵なビルだったから。何の仕事していらっしゃるの? 」


「映像関係です。商品紹介や、CMや、プロジェクトマッピングとか、いろいろ。4人でやっている会社です。」


「面白そうですね。」


「楽しいですね。でも、仕事重なっちゃったときとか、みんなで事務所にごろ寝して、グダグダになって仕事しています。結構体力勝負で、機材も多いし・・・前のとこが手狭になったので、思い切って引っ越しました。」


「へー、すごいね。まだ若いのにすごい。自社ビルだよね・・・」


「はい。」


「あっ、ゴメンナサイ。話過ぎちゃった。何飲む? 」


「まず、ビールください。」


「はい。」


マスターは答えながら真奈美をちらっと見た。


— 真柴君と同じフレーズ・・・思い出さないといいけど・・・



「今日は、初来店なのでサービスするね。」


と言って、マスターはチーズとコッパなどのつまみの一皿を出した。


「うれしい、ありがとうございます。僕コッパ大好物で、あとこのエメンタールチーズも。」


「このあと、何飲む? よかったらワインはどう? 味見で仕入れたのがあって、3人で試し飲み。どう? まだ早いからお客来ないし・・・」


「はい、いいんですか? うれしいです。是非・・・」



マスターは真奈美を見て言った。


「赤ワインとこのコッパとチーズのつまみはこの真奈美ちゃんの大好物セットなんだ。彼女はね、毎週金曜日に来て、この店の経理とホームページを見てくれているの。全部作ってくれたんだ。僕はまったくそっちの方ダメだから。」


「ヘー。」


葛城は、真奈美を見て微笑んでから、スマホでホームページを見ている。


「このホームページ真奈美さんが一から作ったの? 」


真奈美はすこし照れて答えた。


「はい。葛城さんみたいにプロではないので、恥ずかしいのですが・・・」


「そんなことないよ。必要なことはしっかりわかるように、見やすく作られている。それに、このカクテルのショートストーリーが良いね。このお店らしい。」


「ありがとうございます。楽しんで作っています。」


「その気持ちが伝わって来るよ。いろんな仕事するけどクライアントと良い関係が気築けて、僕たちも楽しく作れた時はいいものが出来るんだ。あっ、偉そうなこと言ってゴメンネ。」


「いえ、ホームページ是非アドバイスして下さい。」


「僕で良かったら・・・」


葛城は微笑んだ。



この後、マスターと3人で試飲のワインを3本開けた。いいのか悪いのかこの日はお客さんが少なくて、カウンターで3時間くらい飲んだり食べたりおしゃべりした。

3人とも好みが似ていて、ワインやつまみの話に花が咲いた。真奈美は久しぶりに楽しかった。




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〖カクテル9〗


見るからに爽やかなその男性は、ある日突然店に現れた。

私は初めて一目ぼれというものをした。

見た目だけでなく、話をしていても誠実さが伝わってくる人だった。

また会えないかな? と私は毎日のように『ブルーラグーン』を片手に待ち続けた。


『ブルーラグーン』

ラグーン(湖)の名の通り、見た目も美しい、夏にぴったりのカクテル。

盲目になれそうな相手に出会ったときに最適。

カクテル言葉は “誠実な恋”。


 ウォッカ

 ブルーキューラソー

 レモンジュース

 ※アルコール度数 中


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