来た~  *カクテル7 , 8

真奈美はこの週は水曜日にもお店に来ていた。なんとなくマスターが心配だったから。

何事もなく1週間が経った。もう何も起こらないと思っていた。



そしていつものように金曜日もPortaに来た。

いつものように経理処理をして、定位置のカウンターでくつろいでいた。あんなことがあったから何となく今日は閉店までいようとおもってゆっくり飲んでいた。マスターは常連さんと楽しそうに話しをするものの、あとは静かにカウンターの中てグラスを磨いている。少し元気が無い。


10時が過ぎ、お客さんがいなくなったその時だった。


「いらっしゃい・・・ませ。」


マスターの手が止まった。


「こんばんは。一杯いいかしら。」


「・・・何飲む? 」


「そうね・・・何がいいかな・・・ホーセズネックでも作ってもらおうかな。」


「フッ、僕は君にそれを作れない。今の君に作れるのはデニッシュメアリーくらいかな。」


「そう・・・仕方ないわね・・・それでいいわ。」


マスターはデニッシュメアリーを作り出した。

真奈美はその会話を下を向いて聞いていた。そして、携帯でホーセズネックとデニッシュメアリーを検索した。




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〖カクテル7〗


お気に入りのバーにその女性はいた。

いつも一人仕事帰りに一杯飲みに来る。

ある日、男性が店に入ってきて開いている席を探していた。

彼は驚いた顔をして、彼女の席の側に行った。

女性も彼の顔を見て驚いている。

男性はマスターに『ホーセズネック』を頼んだ。

女性はそれを聞いて口元に笑みを浮かべ彼の顔をあらためて見た。


『ホーセズネック』

“運命” というカクテルワード。

レモンの皮をらせん状に切ってその一端をグラスに掛ける。それが馬の首に見えることからこの名が付いたようだ。

馬の首輪から束縛やくびったけなども連想させるが、愛するものとの運命を・・・。


 ブランデー又はウイスキー

 レモンの皮1個分

 ジンジャエール

 ※アルコール度数 中


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〖カクテル8〗


女性が静かに男性の隣に座った。

彼は彼女に何も聞かずにバーテンダーに “『デニッシュメアリー』を彼女に”、と頼んだ。

女性はじっとカクテルが来るのを待っている。

バーテンダーが彼女の前に『デニッシュメアリー』を置いた。

彼は彼女にこのカクテル言葉を説明した。

彼女の表情がこわばった。

そしてまもなくして彼は店を後にした。


『デニッシュメアリー』

このカクテルを口にするとまずレモンの香りで始まり、トマトの風味が来て、最後にアクアビッドの香りが来る。“あなたの心が見えない” というカクテルワード。

別れのカクテル。


 アクアビット

 トマトジュース

 カットレモン

 ※アルコール度数 低


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