気になる人・・・  *カクテル5

「岸君ははっきりしているよね。そういうとこ僕はいいと思うな~」


「そうですかね、どうもうまく立ち回れない。損することも多いですよ。」


「自分をだまして生きていてもしょうがないでしょ。そのままでいいよ。」


「そうですね。マスターのような人生もあるし・・・」


「ハハハ。あんまりマネしないでね~。」


岸さんはマタドールを1杯飲んで帰っていった。



「真奈美ちゃん。聞こえてた? みんないろんな別れを経験しているんだよ。自分だけが不幸だと思ってはいけないよ。次に向かって扉開けて。」


真奈美は黙ってマスターの言葉を聞いていた。



毎週金曜日、あの岸さんが来ていることに真奈美は気が付いた。

いつも真奈美とは遠いカウンターの席に座っていた。


— 聞こえてくる岸さんの声、なんか気になる・・・

— 落ち着く・・・というか・・・声・・・聞いていたい・・・




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〖カクテル5〗


常連の女性は、いつも本を片手にカウンターの端に座る。

ブランデーをロックで飲み、本をちいさなライトの下で読み、また一人帰っていく。

ある日の彼女はいつもと違っていた。

彼女はバーテンダーに『メリーウィドウ』を頼んだ。今日は本も持っていない。

少しして 高級そうなスーツを着た紳士がやってきた。

彼は彼女の隣に座り、飲んでいるカクテルを見て微笑んだ。

そしてバーテンダーに、“僕にも同じものを”・・・と伝えた。


『メリーウィドゥ』

陽気な未亡人と言われるこのカクテルには “もう一度素敵な恋を” というカクテルワードがある。

ワインにキナ樹皮をブレンドして樽で熟成させたアペリティフ・ワインのデュポネが魅力。


 ドライジン

 デュポネ

 オレンジビター

 ※アルコール度数 中~高


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