扉 その3
彼女を今振ってきた男 *カクテル4
— いつのまにか、もうすく私の誕生日。Portaに来るようになって1年が経つ・・・
— 誕生日の日、マスターは私の好きなチーズやコッパなどと、お酒のきいたデザートを作ってお祝いをしてくれた。
— 気持ちがうれしかった。
— でも相変わらず私の心は晴れない。
— 作り笑いの日々が続いた。
「こんばんは! カウンターいいですか? 」
男性は少し高揚したような顔でやってきた。私からは遠いカウンター席に彼は座った。
話し声はなんとか聞こえる距離。私はパソコンを見ながら、なんとなく聞き耳を立てた。
「岸君、今日はひとり~? 待ち合わせ? 」
「実は、今彼女を振ってきました。」
「・・・けっこう長かったよね。」
マスターはグラスを拭きながら話している。
「でも1年半かな。女性にとっては長いのかな? 段々と先のこと要求されるでしょこれから。だからいろいろ僕も考えて、ずっと一緒にいるのが彼女でいいのかって・・・結論は、違うって思った。彼女とは初めは楽しかったんだけど、徐々に楽しくなくなった。一緒にいる意味を感じない。殆ど僕の言いなり、主張しないんだよね彼女。それに食べ物の好みが違いすぎる。だから、僕から別れを告げた。彼女は初めて僕の前で声を荒立てたよ。他に好きな人が出来たのかって・・・そうじゃないと言ったけど、信じていないだろうな。ホントにそうじゃないんだけど。でももう別れなければいけないと思ったから、別れを告げたんだ。」
「そっかー、つらいけど、別れるなら早い方が良いよね。」
「はー、なんかどっと疲れた。」
岸はカウンターに突っ伏した。
「何にする? 少し甘い物にする? 」
「そうですね・・・元気出すために『マタドール』で。」
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〖カクテル4〗
体格の良い男性は、少し顔を高揚させて店に入ってきた。
バーテンダーに “『マタドール』お願い”、と耳障りの良い低めの声で頼んだ。
彼はバーテンダーに今彼女と別れてきたと告げた。
眼差しのしっかりした彼は、自分から別れを告げたようだ。
そんな自分に対しての励ましの一杯。
『マタドール』
闘牛の最後に牛にとどめを刺す闘牛士『マタドール』の名を持つ。その闘牛士に向けて“負けないで”という思いから名付けられた。
その味は、パイナップルジュースとライムジュースのフルーティさが特徴だが、ベースはテキーラと鋭い。口当たりは良く、メキシコの太陽を思わせる雰囲気もあるが、ちょっと怖い一杯。
テキーラ
パイナップルジュース
ライムジュース
※アルコール度数 高
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