突然のプロポーズ

それから10日後・・・

真柴から昼間にラインが来た。


㋶今日(水曜日)急だけどPorta来れる? 7時くらい。大事な話がある。


㋶わかりました。待っています。


真奈美はドキドキした。同時に不安がよぎった。



Portaに行った。


「あれ、真奈美ちゃん今日水曜日だよ。珍しいね。」


「真柴さんから呼び出されて。なんだか急いでいるみたいで・・・」


マスターはニコニコして言った。


「ふーん。きっといい話だよ。」


「そ そうですか? 何だか不安なんですけど・・・」



7:30 真柴はいつものように駆け込んできた。


「ごめん待たせた。」


でもいつもと違って硬い表情だった。

その顔を見て真奈美は緊張した。


「いいえ大丈夫です。」


マスターが真柴に聞いた。


「なんか飲む? ビール? 」


「いえ! 」


真柴は手でストップをかけた。

マスターはただならぬ気配を感じた。


「ちょっと向こうへ行ってるね・・・」


真柴がすかさず言った。


「マスターも居てください。」


いつになく真剣な真柴の声にマスターも驚いた。



「実は、今日辞令があった。来月からブラジルに行かなくてはならない。」


真奈美はあまりのことに驚いて固まった。


「本来ならこんなに早く海外勤務は無いんだけど、ブラジルの支店長が倒れた。それで独身の僕に白羽の矢が立った。会社にとって大切な長期プロジェクトの計画中で、だからその席に僕が付くというのは、僕にとってもチャンスなんだ。断ることは考えられないし、僕もこの仕事をしてみたい。真奈美、俺と一緒にブラジルへ来てくれないか。結婚してくれ。」


真奈美はあまりにも急な話で、考えることが出来なかった。

何も言えなかった・・・・・・


「真柴君、真奈美ちゃんに考える時間あげないと・・・フリーズしているよ。」


「そうですね。でも、行くなら準備あるから・・・あまり待っていられない。結婚しないと連れていけないし、少し後から来るとしても決めておかなければいけないことはたくさんある。ブラジルは遠いからすぐに戻って来られないし。真奈美、悪いけど今度の金曜日に返事くれるかな。ここで。今日僕はまたこれから会社に戻る。引継ぎが死ぬほどある。悪い。」


そう言って、真柴は店を出ていってしまった。

マスターは真奈美の様子を見てちょっと予想外の様子に戸惑った。


「真奈美ちゃん大丈夫? お水飲む? 大変だけどいい話だと思うよ。真柴君を支えてあげたら? 何か不安があるの? 」


真奈美はやっとのことで答えた。


「・・・今日は帰ります。」


「・・・そ そうだね。気を付けて・・・」


マスターは心配だった。


真奈美は、どうやって家まで帰ったかもわからなかった。


— 真柴さんのことは好き、大好き。でも、それはPortaがあってからこそ。Portaのないブラジルで、昼間独りぼっちで、言葉もわからない私が暮らせるの?

— どうしよう・・・

— でも、今後真柴さん以上の人に出会える保証はない・・・

— きっとない・・・


その日も次の日も真柴からのラインは来なかった・・・真奈美もしてはいけない気がしてしなかった。

四六時中考えた。仕事中も、家でも・・・ずっと・・・

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