バレンタインデー

真柴は必ず毎週金曜日にお店に来た。他の日も来ているようだが・・・

真柴の席も私の隣が指定席になった。真柴は毎回一人で来たので、自然といろんな話をした。海外のことをいっぱい教えてくれて、くだらない話もいっぱいしてくれた。いつも笑えた。楽しかった。


— 真柴さんって・・・イケメンではないかもしれないけど清潔感もあるし、笑った顔がとても素敵・・・

— 今までで一番・・・好きかも・・・

— 彼にとって私は友達なのかな~・・・

— きっとモテるよね・・・



2月の初め・・・

マスターがお店がOPENする前に唐突に真奈美に聞いた。


「真奈美ちゃん。真柴君はどう? 」


真奈美はいきなり聞かれたのでビクッとして赤くなった。


「どうって・・・楽しいです。話しやすいし・・・」


「真柴君は35歳。独身。商社勤めで仕事も出来るみたいだし人柄もいい。僕のおすすめ。海外赴任終わったから、もう当分は日本にいると思うよ。多分賭け事もしない。聞いたことないから。」


「そ そうですか。でも彼はどうだか・・・」


「真奈美ちゃんはOKなのかな? フフフ。ではお任せあれ~。」


真奈美はまたまた真っ赤になった。



その日、真柴は珍しく来なかった。いつもいる人が隣にいないとその場が寒く感じた。


— どうしたんだろう・・・仕事忙しいのかな・・・



次の週の金曜日。ちょうどバレンタインだった。

どうしようかと思ったけど、こっそりカバンにチョコを2つ忍ばせて店に行った。


— ひとつはマスターに・・・、そしてもうひとつは真柴さんに・・・



真奈美は店に着くと、お客さんが来る前にマスターにチョコを差し出した。


「バレンタインです。いつもありがとうございます。」


「ギリだってわかっていてもうれしいなー。真奈美ちゃんありがとう。そーいえば真柴君今日少し遅くなるけど来るってさっき連絡あったよ。待ってれば? 」


「あっ ハイ。」


真奈美は真柴が来るのを今か今かとドキドキしながら待った。



10時を過ぎたころ、真柴は息を切らして店に入ってきた。


「あー良かった、真奈美ちゃんいた。僕ね、今日真奈美ちゃんに話あるんだ。」


真奈美はキョトンとしていた。


マスターは真柴があまりにも息を切らしているので笑って言った。


「まあまあ、まずは落ち着いて席にドーゾ。ビールかな?」


「良くお分かりで。ビールくださーい。」


真柴はマスターからビールを受け取ると一気飲みした。


マスターはそれを楽しそうに見てから、「では、ごゆっくり!! 」と言って真柴の肩を叩き、他のお客さんのところに行ってしまった。

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