マスターは真奈美に恋してる?

真柴は真奈美からひとつ空けた席に座っていた。そして真奈美に話し始めた。


「僕ね、ずっとマスターに助けられていたの。」


真奈美は真柴の顔を見た。


「僕、田舎は札幌でこっちでは一人暮らし。シンガポールに行く前は前の店の近くに住んでいたのね。商社勤務なんだけど、海外事業部で海外とのやり取り多いから時間めちゃくちゃだし、外人我儘だからいつも気疲れしてて、ヘロヘロでマスターの店に来て胃袋満たしてもらって、心もいやしてもらって。ホントにマスターには感謝しているんだ。それからシンガポールに転勤になっちゃって、やっと帰ってきたらお店無いから焦った。必死に探したんだ。有ってよかったよ。これからもマスターには助けてもらうつもり。ハハハ。ほんと有ってよかった。」


「そうだったんですね。マスターいい人ですよね。私もマスターに拾われたようなもんです。」


「そうなんだ。良ければ詳しく教えて~」


真奈美はいきさつを真柴に話した。真柴は興味津々といった感じで真奈美の話を聞いた。


— この人もマスターみたいに話しやすい・・・


「ケーキの取り持つ縁ね、甘い話だね。経理は仕事柄お得意かもしれないけど、ホームページって作るの難しいんじゃないの?  センスも必要だし・・・」


「私好きなんですこうゆうの。マスター好きなようにやらしてくれるし・・・会社では数字ばっかり見ているだけだから、楽しくて。」


真柴は席を詰めてきてパソコンをのぞき込もうとした。


「どれどれ、見せて~」


— えー 近いよー、ドキドキ。

— 真柴さん・・・少しいいにおいする・・・ドキドキ。

— 真柴はパソコンを操作して、ホームページを見た。


「このカクテルのショートストーリーも真奈美ちゃんが書いているの? 面白いよ。カクテルのこといろいろ知りたくなる。」


「もともとカクテルにはカクテル言葉というのがあるっていうことをマスターに聞いて興味を持ちました。それで、そのカクテル言葉をマスターから聞いたり調べたりしています。ネット上にもカクテル言葉の解説はあるんですけど、それにショートストーリー付けたら女の人にもなじみやすいかと思って、こんな感じにしてみました。」


「へー、そうなんだ。他も出来ていたら読ませて~」


「まだ発表前だから、特別ですよ~。不定期で新しいのをアップしていくつもりなんです。」


「ハーイ。どれどれ・・・(いくつか読んで)いいねー。ひとつずつ確認しながらカクテル飲んでみたくなるよ。」


真奈美は一安心した。



マスターが戻ってきた。


「あー、真柴君もう真奈美ちゃんと仲良くなってる~。」


真奈美はドキドキした。


「ちょっと、化粧室に・・・」


真奈美は慌てて化粧室に逃げ込んだ。


「へへへ、彼女なんかいいよね。なんかギャップがある。いろんな事聞くと、いちいちビクッとして、でも一生懸命答えてくれる。」


「そう、見た目と違うんだよね。ガチガチの堅物かと初めは思ったけどそうでもない。何にでも一生懸命で、すっごくしっかりしていて頭のいい子、でも反応がものすごくかわいい、そしてとにかく素直。なんかアンバランスな感じがいいんだよね。それとね。メガネ外したとこ一度見たけど、なかなかの美人さんだよ。誰がメガネ外すんだろーねー」


「マスター、恋してません? 大丈夫? 」


「何言ってるんだよ~。でも若ければわからなかったかな~」


「ホー ホホホ」


真柴はマスターをからかって遊んだ。



真奈美が化粧室から戻ってきた。

「マスター、私今日はもう帰りますね。」


「そう。じぁあ気を付けてね~。」


真柴も手を振った。


「またねー。」


真奈美が店を出てから真柴がマスターに聞いた。


「彼女家近いの? 一人暮らし? 」


「歩いて7分て言ってたよ、彼女らしい正確なお答えでしょ。後は自分で聞きなさ~い。」


真柴はマスターにニコッと笑った。

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