バーの名前はPorta

お客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」


マスターはすかさず声をかけた。

真奈美は帰ることにした。


「そろそろ失礼します、今日は本当にありがとうございました。御馳走にもなってしまって、誕生日の良い記念になりました。そして素敵な提案をありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。」


真奈美は丁寧にお辞儀をした。

真面目な真奈美に対してマスターは嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ、パソコンは用意しておくからね。真奈美ちゃんこれからよろしくね。」


「わかりました。近いうちにまた来ます。」



毎週金曜日、真奈美は店に通うことに決めた。

バーの名前はPorta (ポルタ)、 イタリア語で “扉” のこと。

マスター曰く、“人にはいろんな扉があって、それを開ければ新しい世界を見られる。新しい出会いがある。そんな扉の一つになりたい・・・” との想いから命名したとのこと。


— ロマンチストなマスター、そんなところ素敵・・・



 マスターの名前は岡崎おかざき とおるさん、偶然母の旧姓と同じだったから母の従弟ということにしてもらった。年齢は50歳と言っているが、本当かどうかわからない。


— もう少し上?? かも・・・

— あの素敵なバーに相応しいように、マスターに恥をかかさないように、金曜日はいつもよりおしゃれをして、お化粧も念入りにする。

— 金曜日は朝からウキウキ、こんな気分初めて。楽しい。

— 少し洋服買おうかな~ 



 カウンターの一番端の席が真奈美の指定席。そこでパソコン広げて作業をする。

基本的に毎日この席は空けておくとマスターは言ってくれた。でも今は金曜日だけにしようと真奈美は決めた。


 お店に付くとチャッチャと経理の仕事を終わらせて、今日のカクテルを作ってもらう。逸話や使用しているリキュール等を聞きパソコンにメモをしながら、カクテルが出来上がるのを見る。そのあと出来上がったカクテルの写真をスマホで撮る。今日のカクテルを飲みながら妄想のショートストーリーを考えて、楽しい時間を過ごす。


— 至福の時・・・



 マスターの作るおつまみは美味しい。他のお客さんが頼んだものをいつも少し多く作って真奈美に出してくれた。だから、毎回おなか一杯になる。


— ショートストーリー少し貯めてから、ホームページをオープンしよう。

— 目標は年明けにしようかな・・・



— もうこの店に通うようになって3ヶ月・・・

— 日々の生活は変わった。とにかく金曜日が待ち遠しい。

— 楽しくてしかたがない。

— バーなんか縁が無かったのに今では生活の一部・・・

— いえ、もう生活の中心・・・

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