私はチャーリー・チャップリン?

「どうぞ どうぞ。」


お店の入口には重厚な扉があり、それを開けて店に入った。


「素敵・・・大人の隠れ家みたい。私には似合わないけど。」


「そんなことないですよ。十分素敵な女性ですよ。」


真奈美は目を丸くして、照れて赤くなった。


「お世辞でもうれしいです。言われたことないから・・・」


店内を見まわすと、カウンターはコの字型になっていて10席ほど、あとは丸テーブルが5つあった。


— えーっと、全部埋まっても30人くらい・・・


「カウンターにどうぞ。」


その中央の席を勧めてくれた。


「カクテルいかがですか。もしよければイメージで作らせていただきますが・・・ 」


「はい。カクテル詳しくないので楽しみです。お任せします。」


マスターは真奈美を再度見て微笑み、棚からお酒を下ろしてカクテルを作りだした。

ステンレスのカクテルメジャーにお酒を入れて、それをカクテルシェイカーに入れた。同じようにレモンジュースと氷もたっぷり入れ、蓋をして、シェーカーを振った。


— これ、テレビで見たことある。カッコイイ・・・


真奈美は見とれた。




「チャーリー・チャップリンです。どうぞ。」


マスターは真奈美の前にグラスをスッと置いた。

真奈美は、ちょっと驚いた顔をした。


— イメージって言っていたけど・・・私・・・チャップリン???


マスターは真奈美の驚いた顔を見て笑った。


「ハハハ! チャーリー・チャップリンが貴女のイメージではありませんよ。このカクテルに何故この名前が付いたのかは定かではないとのことですが、ジンベースにアプリコットブランデーの甘味とレモンジュースの酸味が混ざり合いフルーティで爽やかなカクテルです。見た目も綺麗でしょ。甘そうに見えるけどそんなでもないし、いろんな魅力が見え隠れしている。貴女のイメージとピッタリだと思いました。」


真奈美は顔を赤らめ、恥ずかしそうに言った。


「綺麗な色・・・好きな色です。・・・いただきます。・・・あー美味しい!! 飲みやすいですね。これって危ない酔わせるやつですか? 」


「ハハハ! かわいい。素直で。そんなにアルコール強くないから大丈夫。」


真奈美は恥ずかしくて、さらに真っ赤になった。


「カクテル初めてだったので、うれしかったです。ありがとうございます。・・・あの、カクテルってカクテルグラスだけかと思っていたのですが、違うんですね。これはロックグラス? 」


「そう、ロックグラス。いろんなグラス使うよ。それにカクテルはアレンジも自由。作っている方も楽しいんだ、そこに僕ははまってしまって・・・」


「へー、奥深い。面白い・・・」


マスターは真奈美のコロコロ変わる表情を楽しんでいた。

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