扉 その1

ケーキ屋はどこ?

— 少し秋風が吹くようになってきた10月5日、この日は私の誕生日。いつの間にか30歳。誕生日ではあるけどうれしいわけでもない。でも何となく節目の日・・・


— 今日は、いつもより少し高めの美味しいワインと大好きなブルーチーズとエメンタールチーズ、コッパでも買って、ゆっくりお家で飲もう。優しい彼氏がいれば、おしゃれなレストランでごちそうしてくれて、素敵なプレゼントをもらって、あんなことやそんなこと・・・・


— イャイャ ないない! どうするこれからの私・・・


— たまにはケーキも買おうかな。たしかこの辺りにケーキ屋があったはず・・・・無いナァ~ —




 お店の看板を設置していた男性が、キョロキョロしている真奈美を見て声をかけた。


「何かお探しですか? 」


「あっ、あの・・・この辺りにケーキ屋があったかと思って・・・」


「あ~すみません。ケーキ屋さんやめられて・・・バーになってしまいました。」


マスターらしき男性は気まずそうに頭を押さえてペコッと頭を下げた。


「そうだったのですね。このあたりにはあまり来ないもので失礼しました。」


おもわず真奈美も頭を下げた。


「お友達の誕生日かなにかですか? この辺り、他にケーキ屋ないですよね。」


「いえ・・・実は私の誕生日で・・・たまにはケーキでも食べようかなって・・・」


「あ~・・・ケーキは無いのですが・・・よかったら、一杯ごちそうさせてくれませんか。(ワインを見て) 結構飲めるんでしょ。お祝い!! 」


「そんな・・・悪いです。」


「まだこの時間だと混まないし、だいいちお店移転したばかりだからお客少ないんですよ。ハハハ・・・」


— 悪い人ではなさそうだし、とっても素敵なお店・・・一人でなかなか入れないし・・・折角だし・・・ 


「では、お言葉に甘えます。」

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