第38話 お風呂場ハプニングタイム

 そして週末になった。Vの放送自体は夜からなので、少し早めに夕ご飯を準備して観月と早織ちゃんに振る舞う。折角なので手をかけて自作したソースのパスタを出したが、2人にも好評でよかった。料理って食べた人に美味しいと言ってもらえるとやっぱりうれしいよねー。


 2人は先に2階で準備をすませるとのことだったので先に二階に上がっていった。

俺は洗い物や後片付けを済ませてからちょっとだけサウナに入るかと洗面所に向かう。

 途中、1階から2階にサウナ使うぞー、と声はかけておいた…返事はなかったが。

 我が家の風呂は風呂場の奥にサウナも併設されている。これは身体を鍛えるのが趣味の父さんの希望が大きかったが、自称永遠の18歳!な母さんの美容を保つのにもお役立ちという事で両親の希望で作られたものである。お風呂の奥にドアがあり、そこのサウナ室を遣えば自宅でいつでもサウナができるのである。…いやぁ、凄いよね。

 そんなわけで風呂場のストッカーから下着の替えやタオルを出し、服を脱いで風呂場に入った。

 さっき夕食を作る前に湯船はいれはじめておいたので湯船もばっちりだ。

 ざっと身体を流してから、サウナへ入る。ふぅ…熱い。だが身体中の血流が良くなっているように感じるし、疲れがとれていくようだ…個人の感想かも知れないけどね。

 はー、生きかえるわぁ~…と優雅にサウナで汗をかき、なんだかんだで10分ほどたったのでサウナ室のドアを開けたのだが―――


「はわわ…九郎お兄ちゃん?!」


 そこにいたのは身体を洗っている最中の早織ちゃんだった。

 普段は結んでいる髪の毛をおろしていて、既に髪の毛は洗い終わったのかしっとりと濡れている。今は椅子に座って、泡立てたスポンジで身体を洗っている最中のようだった。


 ―――Oh…九郎サン早織ちゃんの裸watch…エッチエッチね


「ご、ごめんなさい!九郎お兄ちゃんが入ってるって気づかなくて―――!!」


 そう言いながら立ち上がりつつ椅子から飛び退いて驚く早織ちゃん。

 いや、それ大事なところを両手で隠しているので、それじゃ受け身が取れないし、身体を石鹸であわあわにしている最中にそんな風に動いたら――――!!


「はわっ!!」


 言わんこっちゃない、それを先読みして駆け出していたので滑り込みで間に合った。

 つるっと後ろに転倒した早織ちゃんの後頭部を右手でかかえつつ、左手を地面に着いて支える。おかげで頭を風呂場の壁や床にぶつけることは防ぐことが出来た。お尻は床についてしまっているが、怪我は無いようだった。


「は、はわわ…九郎、お兄ちゃん…ありがとう…」


「間に合ってよかった…危なかったね…」


 ほっと胸をなでおろすが…これ、今最高にまずい状態なんじゃないか俺達。

 かたや全裸の俺。さっき駆け出すときに腰に巻いていたタオルは腰から解けておちたのでまさにフルフロンタル。

 早織ちゃんも、身体を洗っている…が、洗い始めたところなので、しっとりかけ湯で濡れていて、石鹸の泡も身体を隠すほどもなく、恥ずかしいところが隠しきれていない。


「あ、あの、九郎、お兄ちゃん、その…み、みないでぇ…」


「すまん、そんなつもりじゃ…!」


 怪我がないかを確認していただけでそんな下心は無かったんだ!本当だよ!!


 慌てて顔をそむける。早織ちゃんが尻もちをついたまま身体を起こしたので、手を離しても大丈夫と判断して俺も大事なところを隠す。いやんまいっちんぐ…ってね。


「お兄ちゃんに見られるの、は…い、いやじゃないけど…でも、恥ずかしくて、その」


 早織ちゃんも頭がパニックになっているのか、目をぐるぐる巻きにしながら言葉の要領を得ない。いかん、これこのままでいてもお互いマズい。

 とりあえず俺が先に出た方がいいな、あとで風呂には入りなおせばいい。ということで


「ごめん、俺出るよ」


と、そう言ったところで―――


「おまたせー早織ちゃーん!それじゃ背中流しっことかしようよー!」


 最悪にややこしいタイミングで―――裸になった観月が風呂場に入ってきて、俺と早織ちゃんを視てフリーズした。


「ま、待て観月!!…誤解だ!!」


「あ、その観月ちゃん?!これは違うの!」


「お兄ちゃんと早織ちゃんが裸で抱き合ってるぅぅぅぅー!!わたしもするー!!」


 観月は何を勘違いしたのかとんでもないことを言っている…いや混ざろうとするんじゃない!!こら!!

 

 何故か喜々としてぴょいーんと飛んでくる観月をキャッチ&リリースして俺は風呂場を後にした。願わくばセクハラで早織ちゃんに訴えられない事を祈るばかりだ、観月は妹だからいいけど。


 いやぁ…早織ちゃんはつるつるでしたね…ツルツルにしといて、ツルツルは確定、じゃないんだよなぁ。ハッ、なんでもない。俺は雑念を振り払い、バスタオルを腰に巻くと騒がしい風呂場を後にするのであった。あとでゆっくり風呂に入ろうっと。

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