第30話 羽目田①

俺の名前は羽目田闘利王(はめたとりお)、テニス部の部長を務め、文武両道成績優秀で女の扱いも一流のイケメンだ。勿論、学校では女子達に羨望の眼差しと黄色い声をあげられている。

高校に入ってから身長が伸びてモテ出した俺は、とっかえひっかえ女とヤリまくることで鍛えられたテクニックでさらに次の女を落としていきモテ男になっていった。勿論正攻法で落ちればよし、そうでない場合は色々な手を使って、俺は抱くと決めた女は必ず抱いてきた。なんとかなるなる!ってやつだぜ。勿論アフターケアもきっちりしたし、別れる時は後腐れなく上手に別れた。黙らせる必要がある場合はきちんと口を噤ませることも忘れない。俺は手抜かりはしないのだ。俺の名声は万に一つも曇る事は許されないからな。

そんな俺の今の彼女は眞知田佳織。一年生の中ではトップクラスに可愛い子で、身体つきも俺好みだったのでチェックしていたが、向こうも俺に気が合るそぶりを見せたので据え善喰わぬは息子の恥とばかりにいただかせてもらった。初めてだったので、めっちゃ☆ラッキー!

…女なんてのはそいつが欲しい言葉をかけてやればコロッと靡く。話の端々から佳織が欲しがっている言葉と、心の隙を見つけた俺は言葉巧みに佳織の心に入り込んでやった。チョロい女だ、顔は可愛いが他人にちやほやされたことがない心の弱さと、抱えている負の感情があった。だから佳織を落とすこと自体は簡単だった。


そこから見た目も俺の好みだったし俺が侍らすのにもいいと恋人として付き合い始めることになった…まぁ成り行きもあるけどな。何より良かったのが、佳織には幼馴染の恋人がいたということだ。人の女を寝取るのは最高に気分がいい。それが初めての女なら尚ベネッ!!ディ・モールト…ディモールトに…ベネッ!!

惚れた女が既に他の男に身体を許しているという事実を知らないままバカみてえに女を想う彼氏を想像すると、それだけで俺という存在の優越感を感じて絶頂できる。やっぱ寝取りは最高っしょ!!そして佳織をすっかり俺好みに仕込み終わった後、幼馴染の彼氏をこっぴどく振ったことを聞いたときは興奮しすぎて朝までコースになってしまった。ごめんね~彼氏君彼女いただいちゃってさぁ!と。どうせならNTRビデオレターとか送って脳破壊とかしてやればよかったと後悔したのは秘密。

そこから俺は順風満帆な高校生活が続くと思っていたのだが―――あろうことか、勝利確実だと豪語していた代表女子コンテストで佳織は負けた。それも4位。優勝は去年から二連覇になる須笠だから仕方がないとはいえ、まさかの4位、何という体たらくだ。俺の女でいるならせめて須笠のすぐ下、2位にはなってもらわないと俺の立場がない。3位は一年生のこころちゃんだったので、こころちゃんなら仕方ない…校内を跋扈していた不良を掃除してくれたし優しいからこころちゃんに負けるのは許す。しかしそれでも4位はねーだろ佳織、貝殻ビキニまで引っ張り出して…。

しかもそれだけでなく聞けば赤点で補習確定。…おいおいおいふざけんなよ佳織ィ?俺の女がそんな馬鹿だなんて俺の格が落ちるだろうが、と佳織に勉強を教え始めたのだが…こいつバカだ。マジでバカだ。一応懇切丁寧に根気よく説明をすれば理解できるが、そこに至るまでがとにかく遅い。こんなバカに勉強教えてたらみるみる自分の成績が落ちる。冗談じゃないぞ佳織…。そんな風に佳織への興味は高速で失われつつあった。

それよりも今、俺が興味あるのは代表女子コンテストで2位をとった―――大垣リナちゃんだ。あの身体をめちゃくちゃにしてやりてえ、という気持ちの方が大きい。金髪ギャルだと思ったら純情というそのギャップがたまらねぇ…どうにかして俺の物にしてえ。机の上にある断面が青い錠剤…アレを使うのもいいかもしれない。誰かに恋する女を汚い手段で踏みにじるのは、人の女を寝取るのと同じくらい興奮する。

「…先輩、できた!」

「違う、ここ。この数式を使え」

半泣きになりながらも一生懸命に問題を解く佳織。…こいつはこいつで抱き心地は良いし折角俺が仕込んだんだのでこのまま手放すのも勿体無い気持ちもある。…佳織をキープしながら、あのリナちゃんを俺の物にするために動いていくのが良さそうだ。

「今度こそ出来ました!!」

「…おい、さっきできてたことが出来なくなってるじゃねーか!!お前俺をナメてんのか佳織ィ!!」

うええええん、と泣く佳織に頭痛を覚えながら、俺はまた1から説明を繰り返すのだった。…いや、こいつの元カレの幼馴染君さぁ、どうやってこのアホをこの学校に入学できるまで学力身に着けさせたんだよ…?!

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