第18話 テストが終わってかんぱーい!

「いやぁ、晴れたなぁ」

週末からの雨はカラっと止んだ週明け。

―――あの後俺は病院に運ばれて医者に診断された。

抗生物やなんやを注射されてそのまま病室へGO!して両親が慌てて病院に来たり、リナの両親やリナがきたりして病室はわやくちゃして賑やかだった。正直しんどかったので夢現だが、リナの両親にはお礼と、元気になったらまた遊びに来てくれと言われた気がする…ちょっとよく覚えてないけど。

―――ちなみに両親からはこってりと怒られたが、「でもあそこで何もしなかったら?」と聞くと「今よりもっと怒ってた」との事、じゃあどうしろと言うんだが「危なげなく助けれるお父さんのようになりなさい」と言われてしまったのでそれはそうねという感じ。そもそも父さんなら川の中を危なげなく渡ってあめりちゃん背負って戻ってきただろうからね…!後は退院まで毎日リナが顔を出して傍から離れなかった。その時に観月とリナも挨拶をかわしたようで仲良くなっていたのでお兄ちゃんとしては嬉しい限り。

「おっぱい…でっかい…ほっかいどうは…でっかいどう…」観月がそういって自分の十勝平野を見て凹んでいたがまだまだこれから成長する可能性も十分にあるので観月はあきらめないでほしい。がんばれお兄ちゃんは応援している。

…などと騒がしい週末だったが、ただの風邪だったので翌日には熱も下がっていて週明けからは問題なく通学できるとの事で日曜日には退院した。そして今、月曜日の朝と言うわけ、本日は快晴なり~ってね。つまりは―――絶好調である!


「九郎!おはよーっ」

学校への通学路でリナに声をかけられた。待っててくれたのか?

おはよう、と返すとリナはごく自然に腕を組んでくる。ぎゅむ、という擬音の聞こえそうな感触。…俺だってお年頃の男の子なんだからその刺激は毒だぜ…。

「んふふっ…テスト、頑張ろうね」

リナの距離感が近い。んむむ…。

教室に入って皆におはようと挨拶をしたところで腕を組んだままの事を指摘されて、「ひゃん!」と可愛い声を上げて離れるリナ。そんなリナを福田が擦りまくり、藤堂はなんか羨ましそうに見ていた。別に女子同士だし腕組むくらい言えばいいのにね。


そして始まる中間テスト。

…おっ、これ仁奈さんに教えてもらったところだ。

…これは復習したところだ

…これは福田がにゃあにゃあ言ってたところだ

―――肩透かしを食らう位スムーズに進んだ。

時間余って回答が終わってゆっくり見直しが出来るほどに。

…テストってこんなに楽だったっけ?

我ながらギャップに驚く。高校のレベルとしてはそんなに低くないはずなのに、中学の頃のテストよりも簡単にすら思える位だ。

テスト1日目が終わり、話しかけてくる皆とテストの出来を話し合う。

「難しいけどそこそこ行けたと思う」

そう言うのは藤堂。

「私は…教科によって得意不得意はありそうだけど、そんなに悪い感じはしなかったな」

「多分満点にゃあ」

福田だけなんか言ってることがおかしい…んだけど妙な説得力がある。

「俺は…結構いいところまでは行くと思う。なんだかんだで皆と勉強できてよかったよ」

そう言うと、「おー」と言う福田。

「病み上がりでそれを言えるところがQちゃんのいいところだにゃあ。あ、そこでにいるマフティ…稲架上君はどうなのにゃ?」

「俺か?…平均よりは取れてると思う。やってみて感じたけど中学に比べたらずっと勉強のレベル上がってるな」

成程、稲架上がそういうのならそうなんだろう。

「かおりーん!かおりんはどうだった?」

「え?そ、そそそ、そんなの楽勝に決まってるじゃん!!」

クラスの男子に声をかけられて答えている佳織の声も聞こえた。そういえば今回のテストから佳織の勉強を見てないが、自分でもきちんと頑張ってたのなら問題ないだろう。…もう俺が教える必要もないしな。

「この後どうする?」

そう言うリナに、うーむと考える。テスト期間はバイトもないんだよな。

「それじゃあウチに来るといいにゃあ。テスト中はうちで勉強すると言いにぃ。稲架上君もくるといいにぃ」

「…俺は予定があるから遠慮しておく」

「それは残念だにぃ」

それからなんだかんだで4人でテスト勉強をしては翌日テストを繰り返した。

一度、帰り道にケーキを買って行こうという話になったのでケーキ屋に行ったら稲架上を見かけた。金髪ストレートでおしゃれな美少女と道を歩いていたのをみかけた。「なんだ稲架上彼女いるじゃん」とデート中に声をかけるのも無粋だなと思って声をかけずに居たが、一緒にその様子を見た女子陣…リナと藤堂曰く「あれは女の子の方から強めの矢印が出てるけど稲架上くんはあの女の子に誰かを重ねてる…様な気がする」と絶妙な意見だった。福田は「早くケーキ食べたいにゃあ」とにゃあにゃあ言ってた…ぶれない。

一度家の前で眞知田のおばさんとあった事があって、今まで俺に勉強を見てもらってばかりだった佳織だけど今は部屋で一人でまじめに勉強してるみたいよ、なんて声をかけられた。そっか、まぁ頑張ってるなら良かったよ。


「無事テストも終わりましたなぁー」

学校帰り、ケーキ屋に行ってお疲れ様会しようと藤堂の提案でカフェに来た。

ハゲでオネエで元傭兵…とのプロフィールのパティシエさんがやってるケーキ屋だ。気のいい店長さんで俺達みたいな学生にはオマケしてくれるので、常連としてよく買い物させてもらってるところだ。ちなみに店長曰くドリアンが推しらしくて店内の装飾にはドリアンをモチーフにした置物が良く飾ってある。ドングリとマツボックリもあるよ。お弟子さんが2人いた筈なんだけど最近1人姿をみなくなっちゃった。どうしたんだろうね…やっぱりスイーツショップとかは朝早いみたいだし仕事が辛くてやめちゃったのかなぁ。


「あらぁ~いらっしゃい九郎君。今日もいい男ねぇ。女の子3人も連れて、両手に溢れる花ってところかしら?瑠璃ちゃん、リナちゃん、トラちゃんもいらっしゃい」

「こんにちは、店長さん。今日はイートイン4人です」

「てんちょーだにゃあ。私はいつものブドウのケーキにするにぃ」

「こんにちはー。私は何にしよっかなー、どれもおいしそー。オレンジいいなぁ、バナナのも迷うなぁ」

「私はこの『白く麗しいメロンの君スペシャル』にしようかな」

流石女子、スイーツを前にすると目を輝かせている。

「ウフフッ、どれも腕によりをかけたおすすめの逸品よ!じっくり選んで頂戴」

そんな店長さんの言葉にうんうん唸っていたが、リナはオレンジかバナナか迷っていたので俺がオレンジのものを、リナはバナナのものにした。皆で切ってわけあえばいいよねって。


「それじゃ中間テストおつかれさー」

「かんぱーい「ぱーい」「リナちんのおっぱいでかーいにぃ」

音頭を任されたので乾杯をする。…福田だけなんか変な事いってなかったか?

そんな店内はテスト明けもあってか、今日は他にも何組か学校の生徒が来ていた。

「いやー、今回は判官のおかげで助かったー。赤点はまずなさそう」

「同じく。九郎って勉強教えるの上手だよね」

「むぐむぐブドウのケーキ美味しいにぃ」

三者三様、それぞれに感想を言っている。

「いや、俺の方こそ皆で勉強できて再確認しながらできたし福田にも教えてもらって助かったよ。皆ありがと、お疲れ様だ」

そう言ってお互いを労い合う。いやぁ、テストが終わると気が楽でいいね。

「でも中間が終わってひと段落だな。」

「でも女子はまだイベントが待ってるよ」

そう言うのは藤堂。何だろう?

「この学校、中間が終わった後に代表女子コンテストってのをやるらしいよ。ストレートに言うとミスコンみたいなものみたいだけど」

「へぇ、高校でそう言うのがあるのは珍しいな」

ちなみに男子は秋に異種格闘武道大会があるとかなんとか。…はへぇ、この学校ぶっとんでるとこあるなぁ。俺はそういう界隈には無縁だからいいけど。

「そんなのあるんだなぁ、…ミスコンってことは3人は出るのか?」

ふっと思って行った。リナも、藤堂も、福田も、一緒にいる事が多くて当たり前になってしまっているがかなり可愛い。三人とも違った魅力のある女の子だ、と思う。

「私はめんどいのはパスだにゃあ」

そういって手を振るのは福田。

「私は…私もパスかな。私なんかより可愛い子いっぱいいるしね」

そう溜息をつくのは藤堂。

「いや、お前も大分かなり可愛いと思うけど…」

というと、「はひゃっ!?」と赤くなってる。お、俺変な事言ったかぁ?!

「…っておいなんだよリナそのジト目」

「べっつにぃ?べ~~~っつにぃ~~~~?」

む、むむ。ご機嫌斜めになってしまった。藤堂もどうしたものかとわちゃわちゃしてる。

「にゃあ。そんな事よりブドウケーキをくらえだにゃー」

そう言ってリナの口にブドウケーキのスプーンをねじ込む福田。

「むぐっ?!むぐむg…あっこれ美味しい~~~~、なにこれ口の中がどんどんブドウの香りでいっぱいになる感じ!えっなにこれ美味しすぎる!」

途端に上機嫌になるリナ。スイーツのちからってすげー!

「ぬふーん、私のいちおしだにゃあ。トラちゃんとQちゃんも食べるにゃあ」

そう言う福田の声を皮切りに、お互いのケーキを切って分け合う。どれも美味しいよなぁ。

「そうだ、リナはミスコンでるのか?」

「…私、私は…うーん。九郎は、私に出てほしい?」

そう言ってじーっと俺を視てくるリナ。うーん、そう言われると悩むな。出てほしいかどうか、か。

「やっぱりリナの気持ち次第だと思うけど…もしでるなら俺は応援する、かな」

そんな俺の言葉に「そっかー。…そっか」と静かにうなずいているリナ。

「そうねー。大垣が出るなら私も手伝ったり応援する」

「メイクは私に任されるにぃ」

「えっ?!いや出るって言ったわけじゃないよ?!」

そう言ってきゃいきゃいと盛り上がる女子3人。

「ウフッ。青春て…若いってい~わね!私も当てられちゃうわ」

近くに来ていた店長さんが俺たちの様子を見て笑っていた。

「でも九郎君、いいかしら。男の子なら、いつまでもハーフボイルドのままでいないで、いざってときにはしっかりと男をみせなきゃだめよ?」

そう言ってウインクし、歩いていく店長さん。

えー、ハーフボイルドだめなの?俺半熟者もいいと思うんだけどなぁ。それにいざって時?いざって時かぁ…なんだろう、いつかそんな時が来るのかな。

賑やかに話を咲かせる3人をみながら、なんとなくそう思うのであった。

「ところで藤堂、福田ってメイク上手なの?」

「…この子こんなノリだけどメイクもプロと変わらないレベルで凄いよ。」

そんな話が聞こえたけど。本当人は見た目によらないね!!

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