第6話 THUNDER・クモノツヅミ・黒衣の武人
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未知の敵との再戦―――
実力差をまざまざと見せつけられる戦いでも―――
君は柔道が楽しいか?
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「やぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「一本ぉ"ぉ"ぉ"ん!!」
場内に響く荒々しい雄叫びと共に、黒い
既に試合の出番が終わっている周囲の選手達は、一礼し場外に向かう彼らを横目に、先ほどの試合内容について語り合い始めた。
「……なあ、
「……ああ、そうだな」
「そんで試合時間の合計が……何秒だ?」
「……10秒切ってる」
「おいおいおい……!?
驚愕と諦めに包まれる周囲の選手達。
その視線をよそに、
「順調、コノママ、決勝モ勝ツ」
「当然ですよ。この程度の相手に負けてしまっては、帰った時に何て言われるか
「ソレナラ、心配イラナイ。次ハ蒼海ノ人間。青桐ガ居ル高校、
「なるほど……それは朗報を聞きましたよ。では決勝の会場に行きましょうか……
「……」
「西村君?」
「……ッ!!
「西村君、反省会は決勝が終わってからにしましょう。変に目立っちゃいますよ……いや、嫌いではないですよ? 嫌ではないのですがねぇ……」
「オッスッ!!
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『さぁ~始まりました決勝戦っ!! 実況はこの私、
太陽が頂点に輝く午後。
柔道タワーでの戦いは、ついにクライマックスを迎えようとしている。
先鋒は
試合前、青桐はマネージャーから伝えられた情報を頭に巡らせつつ、白いテープの前まで進んでいく。
肌寒い10月にもかかわらず、会場の空気は熱気に包まれ、実況アナウンサーの熱のこもった声が
「……ん?」
「…………」
『おぉ~っと!? どうした西村選手っ!? その場から動こうとしないぞっ!?』
青桐の対戦相手、西村が場内へ入って来ようとしない。
彼の髪は芝生めいた金髪で、鼻にテーピングを施し、閉じた瞳は微動だにしない。
周囲は次第にざわめき、審判も痺れを切らして注意を促そうとしたその瞬間だった。
突如、西村は猛獣めいた雄叫びを上げ、
「オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!! 力戦奮闘、オッスッ!! 一意専心、オッスッ!!
「……
「青桐っ!! 相手のペースに飲まれるなよっ!!」
「……
ただならぬ殺気を放つ相手だが、それは青桐も同じだった。
1か月前、黒衣の集団に屈辱的な敗北を喫した青桐にとって、この試合は予想外のリベンジマッチとなる。
身体を冷やさないよう着ていたシャツを脱ぎ、両者は
両者の体から一瞬覗いたのは、青痣だらけの鍛え抜かれた肉体。
臨戦態勢に入った二人は、光のない、まるで刺すような眼差しを敵へと向けている。
「青桐龍夜ッ!!
「あ"ぁ"? ……あの天パ赤髪野郎が勝ったからって
水を打ったように静まり返る会場。
小さな物音一つでも立てれば、まるで濃霧の中にいる猛獣を刺激するかのように、全ての殺意が自分に向かってくる気配を、
天才猛獣使いとしてアフリカで崇められている、ムハマド・ピレもそう感じている。
張り詰めた空気が肌を深々と突き刺す中、審判の声が静寂を切り裂いた。
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We have poured years into these fleeting moments,
for we are those who live within the blink of an eye.
「この数分に数年を費やした。我らは刹那を生きし者」
柔英書房発刊「武の道を生きる者」
著者:エルル・ジェルネイル
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「
「しゃぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「オォ"ォ"ォ"ォ"スッ!!」
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蒼海大学付属高等学院柔道部団体戦先鋒
高校生ランク21位 青龍 「
VS
高校生ランク14位 黒衣の武人 「
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ついに幕が上がった決勝戦、先鋒同士の激突。
両者は己の形に持ち込むべく、息を呑む組手争いを展開する。
横襟を掴んでは払い、奥袖を取られては瞬時に振り解き、互いの意図が畳の上で激しくぶつかり合う。
その中で、西村がわずかに後方へ跳躍。
瞬間、両足に迸る雷光。
稲妻めいた速度で青桐との間合いを詰めていく。
「先手ッ……必勝ォ"ォ"ォ"ッ!!」
「……ちっ!!」
(ちょろちょろしやがって……!! こいつ、カナちゃんが言っていた通り雷属性みたいだな……さっきのはNo.6の
「あ"ぁ"……!?」
横襟と前袖を掴み、がっぷり四つに組み合う両者。
青桐は体勢を崩そうと、一瞬の隙を狙い足技を繰り出そうとする。
しかし、それを見抜いた西村が剛腕を活かし、体全体を使った緩急のある動きで青桐を激しく揺さぶっていく。
畳の上で生じる音、そして会場を包む緊張感――
勝敗の行方を占うには、まだ早い。
「ぬぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ッ!!」
「……!!」
(この野郎、
「
場内を縦横無尽に駆け回る西村。
そのスピードに引きずられながらも、青桐は冷静に先を読んでいく。
西村の進行方向を見極め、足首を覆うほどの水球を畳の上に出現させる青桐。
罠は見事にハマり、西村の両足が水球に捕らわれていった。
その瞬間、青桐の目が鋭く光る。
揃った足を見逃すはずもなく、彼は左足で畳を撫でるように動かし、敵の両足を払い取る送足払の強化版を繰り出す。
No.23―――
「
推進力の流れに逆らうことなく、鋭く足払いを繰り出す青桐。
その一撃で西村の体勢は崩れかける。
咄嗟に右足で踏ん張ろうとする西村だったが、青桐は追撃の手を止めない。
彼の周囲に厚く立ち込める白雲――入道雲めいた雄大で圧迫感のあるそれが現れる。
雲間に潜む青き龍が形を成し、その右足が西村の右足を正確に狙う。
平衡を取り戻そうとする動きを見逃すことなく、青桐の技が刈り取るように放たれる。
No.14―――
「
猛攻を振り切ろうと、西村は一瞬両手を離そうとする。
しかし、その瞬間、青桐の技によって彼の周囲に巨大な水の塊が出現。
西村の身体はその中へと沈められていった。
拘束された彼の膝元に、圧縮された水牢が弾け飛ぶ勢いで襲いかかる青桐の左足。
刹那、青桐の両手がハンドルを切るように反時計回りに回転し、車輪めいた軌道を描く。
流れるような動作で足を刈り取る膝車の強化技。
No.32―――
「
柔皇の技を3連発で食らい、西村は堪らず大きく体勢を崩す。
ガードが完全にがら空きとなった瞬間を、青桐が見逃すはずがなかった。
水の流れめいた足さばきで、決め技である内股を狙う青桐。
西村の左足内側を捉えるように右足を天へと払い上げる。
しかし、技に何の手応えも感じない彼。
その理由はすぐに明らかになった。
西村は青桐の内股を
払われた右足を追うように、西村の左足が軌道を重ねる。
落ちた
内股返しの強化技。
No.15―――
「
なんたる光景、
2人の両足が畳から離れていく。
宙を舞う両者は技の勢いそのままに、畳へと背を叩きつけていったのだった。
審判が下した判定は―――
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